サバイバルゲームには、他のメジャーなスポーツみたいに全国規模でルールなどを統括する団体というものがない。そのため、様々な地域でいろいろなルールでの「サバイバルゲーム」が行われている。勝敗はどうやって決めるのかとか、敵味方の識別はどうするのかといった細かいルールはけっこう千差万別だ。
それもあって、普段ゲームしているのとは違うフィールドまで遠征したときや、気心の知れたメンバーではない初対面の人たちとゲームをするときには、ちょっとしつこいくらいにルールの確認をしておかないと、運が悪いと大きなトラブルになってしまうことがある。「え、まさか、そんな!?」と驚いてしまうところで、全く違うルールを「常識」だと思っていることがあるからだ。
過去にあったよくある例としては、デッドマーカー(ヒットされた人が、自分はもう死体ですってことをアピールするために白い布を掲げるといったもの)が義務付けになっているかいないかとか、弾を撃たないで相手をやっつけるフリーズコールの扱いについてとか、至近距離で撃つことを禁止するかしないかとかいったもの。見逃しがちだが、けっこうトラブルの元になりやすいので注意が必要だ。
変わったところでは、「腕や足に弾が当たったのはセーフ、胴体だけがヒット、頭を狙うのはルール違反」なんてところもあった。耳を疑ったのは、「まず塹壕を掘ったりバリケードを作ったりという陣地構築を行い、メンバー全員がしっかりと布陣しおわったところでゲーム開始」なんていうローカルルールだ。
そういう、一風変わったルールでゲームをしているところと、一般的なルールのゲームが当然だと思っているところが事前の十分なルール確認なしにゲームをしたりすると悲惨なことになる。「そのルールは一般的ではない」と言っても無駄だ。彼らはそれが当然なのだから、「自分たちはいつもそういうルールでやってる。手足に当たったくらいでヒットになるのはおかしい」「ゲーム開始前は陣地構築をやるのが当たり前。開始と同時に無防備に突っ込んでくるのがバカなだけだ」とか言われるだけ。
そんなバラバラなルールの「サバイバルゲーム」だが、これを守らなかったらサバゲじゃないという不文律みたいなものはある。「使うのはエアガンだけ」ということと、「BB弾に当たったらヒットになる」ということ、そして「ゴーグルを着ける」ということ、この3つのルールだ。
戦争映画や報道で見るような迷彩服を着込んでリアルな銃を持って撃ち合いをするサバイバルゲームだけれど、実際の戦争と最も違い、そして最も重要なのが、それはあくまでも「エアガンでの撃ち合い」だということ。それ以外の方法で相手をやっつける、例えば殴るとか蹴るとか地面に組み伏せるとか、そういうのはたとえホンモノの戦争では行われていたとしても、サバイバルゲームでは「ナシ」だ。
そしてもう一つの重要なルールが、BB弾にあたったら自己申告で「ヒット」、つまりルール上は「死亡した」という扱いになったということを自分で宣言することだ。ホンモノの戦争で撃たれるのとは全然違うヘロヘロの弾であっても、身体のどこかにそれが「ポツン」と当たれば、「致命傷を負って死んでしまった」ということになる。ゲームに参加する人間が全員、このルールをきっちり守っているということを前提にすることが、見た目はけっこう物騒なサバイバルゲームを楽しい遊びとしてくれる最も重要な要素と言えるだろう。
エアガンは、所詮はオモチャの銃であり、至近距離で撃たれても「痛い!」って程度で済む。大きな怪我をすることも、当然のことだけれど死んじゃったりすることなんか万に一つもありえない。だが、ここだけは当たったらシャレにならない場所というのがある。言わずと知れた、「目」だ。他の場所ならちょっとくらい怪我してもゴメンで済むかもしれないが、目だけはそうはいかない。失明してしまったり、そこまでいかなくても視力に影響が残ってしまったりしたら一生の問題になってしまう。
だから、どんなサバイバルゲームでも、「ゴーグルを着用」というルールだけは絶対のものとして守らなければならない。「ゴーグルなんて着けなくてもいいよ、その代わり顔を狙うのはナシね」なんてことを言い出すサバイバルゲームがあったら、それはもうサバイバルゲームではない。エアガンを使うという共通点があるだけの、全く別の悪質で危険な遊びだ。
広く行われているのは、「フラッグ戦」と「殲滅(せんめつ)戦」の2種類だろう。フラッグ戦は、制限時間内に相手のフラッグまで辿り着いたらゲーム終了でフラッグを取った方の勝ち、というもの。殲滅戦は、片方が全滅したらゲーム終了で生き残ってる人がいる方の勝ち、というものだ。
もちろん、この2つ以外にも様々なルールの「サバイバルゲーム」がある。フィールドの両端ではなく中央近くにフラッグ(に相当するもの)を設置し、それを手にとって自分の陣地内に運ぶことで勝利するものや、逆に相手陣地に押し込んでいくことで勝利とするもの。その場合、フラッグが5~6個と複数になり、運んだ/押し込んだ数によってスコアが決まったりするタイプのものもある。簡単に運べないようにフラッグを「水を満タンにしたタンク」のように重いものにすることがあるので、「ポリタンク戦」と呼ばれることが多い。
他には、人数を半々に分けるのではなく、大人数vs少人数に分けた上で、少人数側は強固な砦や丘の頂上などに立てこもり、大人数で攻めてくる相手から砦を守りきれば勝ち(逆に大人数側は砦を攻め落とせば勝ち)というゲームなんかも良く行われるものの一つ。1987年のアメリカ映画の題名から「ハンバーガーヒル戦」なんて呼ばれることもある。
こんな具合に、映画でもマンガでもアニメでも、あるいはTVゲームやドラマでも、それどころか史実ですらも題材にして、いろいろなシチュエーションやルールを作り出して楽しむことができるのがサバイバルゲームの面白さの一つだ。フィールド主催の「定例ゲーム」では、初参加者や初心者が多かったり初顔合わせの人がほとんどだったりといった理由からあまり複雑なルールでのゲームは行わず、ほとんどの場合フラッグ戦か殲滅戦のどちらかだけで行われるが、それはサバイバルゲームの楽しみ方の中でも「ほんの一部」にすぎないといっていいだろう。