新世代のデジタル射撃システム(か?)

先日、浅草で開催されたAPSカップ本大会の片隅にて、「デジタルカメラシューティングシステム」と称するものの体験会がひっそりと行われていた。簡単に何度か体験と、あと各部の構造などについて写真も撮ってきたので簡単にレビューを書いてみたいと思う。

この「デジタルカメラシューティングシステム」は、なんでも2013年の夏に日本ライフル射撃協会が募集していた「デジタルシューティングの後継機種」に応募するために開発されたものとのこと。だが残念なことに選考には漏れてしまい後継機種とはなれなかったということだ。その選考過程については、ちょっと常識的に考えられないやりとりがあったなんて話も聞くのだけれど、そこらへんは真偽があやふやなので確実な話を聞けたらまたいずれ。

「デジタルカメラ」という名前のとおり、レーザーも光線も発射されることはなく、銃に付いているのはカメラだけ。カメラで標的を常時撮影し、標的周囲に設置されたLEDの光を参考に銃口が現在向いている場所を計算、引き金が引かれた直後にその場所をPCまたはタブレットに表示するというものだ。PCとの接続はWifiまたはBluetoothを使って行われる。標的と、銃およびPCとの間では、何のデータ交信も行われないので、いちいち長い距離をケーブル引っ張ったりする必要がないのも特徴の一つだ。

 

銃の後ろ半分は基本的にはAPS-3そのまま。銃の上部にあるチャージングレバーを開けて閉じて引き金を引く、その操作方法も引き金を引いたときの感触もAPS-3とほぼ同じだ(コンプレスト・レバーの操作がない点が異なる)。
こちらは左側面。「やっつけでくっつけました」感バリバリでデザイン的にはとてもじゃないが洗練されているとは言いづらいが、これはあくまで試作品ということなのでそこらへんは言いっこなしってヤツだろう。……と油断してると、試作だと思ってたダサいデザインがそのまま製品化されてビックリ、なんてことがフツーにあるのがこの業界だったりするわけだが。
APS-3だとコンプレスト・シリンダーになっている部分は、電池や電子部品が入っていると思われる四角い箱になっている。トリガーガード前方にスライドスイッチが見える。3Dプリンターで出力したパーツを組み立てて作っているようだ。
PCの設定によって射撃モードが選べる。一つはAPSカップのブルズアイ競技そのまま、一つはエアピストル射撃のシミュレーター、そしてもう一つは近代五種のシミュレーターだ。画面下にちょっとだけ写っているのが近代五種モードになったPCの画面。
銃口から見たところ。四角い電子部品パーツにカメラが内蔵されているものだと思ったらそうではなく、カメラは銃口の奥まった部分に設置されているとのことだ。機構としては現行のデジタルシューティングシステムと似ていて、トリガーを引いてシアがきれてストライカーが勢い良く前進して部品に当たったその衝撃をセンサーで感知し、若干のディレイタイムを置いた後にカメラが指向していたターゲットの部分をディスプレイ上に表示する、というもの。デジタルシューティングのように銃口の軌跡を記録して表示するような機能は現時点では持っておらず、あくまでトリガーを引いた直後の銃口位置だけを表示する。
ライフル型のシューティングシステムも体験会が行われていたが、午後になって機構的なトラブルが発生したらしく引っ込められてしまった。こちらも3Dプリントで作られたと思われる樹脂部品があちこちに使われた試作品。

価格についてはいくら聞いても教えてくれなくて、むしろ逆に「いくらくらいだったら、買いたいと思うか?」とこちらが聞かれるという状況だった。

実は昨年末、東京都ライフル射撃協会の有志で集まって「東京オリンピックに向けて、東ラは何ができるだろうか」を話し合う場というのが設けられたので参加してきたのだが、そこに来ていた偉い人(というか、影響力が強い人)の話として、「デジタルピストルの後継機種は、どうやら従来の1/10くらいの値段のものに決まりそうだ」という情報を得ていた。おそらくマルゼンのこのデジタルカメラシューティングシステムを念頭に置いての言葉だったのだと思われる。

従来のデジタルシューティングのシステムが30~50万円くらいだから(といっても現在では製造が終了しているので新規で購入するのはほぼ不可能)、単純計算で3~5万円くらいということになる……本当か? もし本当に数万円で射撃シミュレーターが手に入るようになり、しかもしれが日本ライフル射撃協会の公認競技になったりするのなら、どれだけ射撃スポーツの普及に役立つことだろう!

……と思っていたのだが、世の中そう上手く物事が運ぶものでもなく、残念ながらデジタルシューティングの後継機種はもっと値段が高いものに決まりそうとのこと。そこらへんの詳しいことは、また上記の会合があったりして詳しい話を聞けたら書いてみたいと思う。

池上ヒロシ

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