金属以外の素材で、伝統的な金属製の銃を精密かつリアルに再現する技術においては日本は世界でも有数の高い技術を持っている……これについては、まず間違いない事実だと思う。実際のところは、他国では「撃てない銃」に対して、例えば飾るためだとか愛でるためだとかそんな理由だけで高いお金を出して購入しようというニーズがそれほど大きくないってのが理由なのかもしれないが。
ただ、アメリカにおいてはM1911A1、通称「コルトガバメント」と、Single Action Army、通称「コルトピースメーカー」の2種類においては少し例外なようだ。撃てる銃を手に入れるのは、日本に比べればそれほど難しくはないのは他の銃と同じだけれど、「撃つわけじゃなく、ディスプレイケースに入れて飾り、普段からそれを見て楽しみたい」というニーズが、他の銃に比べて格段に高いらしい。国の基礎を築いた銃、いわばアメリカン・スピリッツの象徴そのものという側面があるのだろう。
そういった「飾るためだけの銃」にはどんなものがあるんだろうと調べていたら、面白いものを見つけた。ほぼ全ての部品が木で作られたM1911A1の精密なレプリカ銃だ。
WOOD CALIBERという会社は、もともとはハンドガン用のグリップパネルやライフルの木製ストックを作っているところ。CNC(工具が事前にプログラミングされたとおりに動くことで、複雑で精密な部品を自動で削り出しで作ることができる工作機械)の技術を伝統的なクラフトマンシップと融合させることで、木製グリップや複雑な形状のストックなどを安価に安定して生産する……というのが触れ込みのメーカーだ。
このガバメント・木製レプリカは、その会社が過去に一時期だけ作っていたもの。単にガバメントの外形を再現しているだけではなく、実銃同様にスライドを引くことはできるし、スライドストップを上げてホールドオープン状態で止めることもできる。サムセフティ・グリップセフティも可動し、それぞれハンマーをロックする機能もきちんと持たされている。ハンマーをコッキングすれば起きた状態で止まり、トリガーを引くことで「パチン」と可愛らしい音を立てて倒れる。バレルは実銃どおりにショートリコイルし、外から見ただけではわからないがちゃんとスライド内側のラグと噛み合ってロッキングまでされるらしい。
さすがにスプリングだけは木製というわけには行かず、メインスプリング(リコイルスプリング)は樹脂製、ハンマー・シア・トリガー・グリップセフティスプリングは1本の輪ゴム、マガジンキャッチスプリングは小さいゴム片が使われている。
複雑な形状をした木製部品を精密に削りだすことができる、という技術力のアピールとして試験的に……言い換えると「お遊び的に」少数だけ生産されたものなのだろう。メインの製品であるガバメントのグリップパネルやライフルストック、ディスプレイケースなども、確かに木材の精密加工ができなければ作れないものが多い。
精密な寄木細工ってことなら、日本の伝統技術だってたいしたものだと思うし、高度なCNC加工技術ならそれこそ本家本元だ。法に触れる心配なく、精密な銃のメカニズムに触れることができる美しいディスプレイモデルとして、日本におけるこの手の分野はまだ未開拓の部分もあるんじゃなかろうか。