大昔に作られた銃は「古式銃」と呼ばれ、現代の銃と違って簡単な手続きで所持することができる制度がある。武器ではなく、美術品、あるいは骨董品という扱いになるということだ。「古式銃」と認定されるための条件というのは下記の通り。
この条件を満たしていると教育委員会が認定した銃には「登録証」が発行され、現代銃とは異なり特別な許可なしに所持しても構わないものとなる。例えば倉庫の奥などから登録証がない銃を発見した場合などは、最寄りの警察署に「発見届け」を行い、警察から教育委員会に登録希望が出され、教育委員会から登録審査会のお知らせが届き、その審査会に該当する銃を持って行って審査してもらう……という、それなりに面倒な手続きにはなるが、現代銃の所持許可に比べれば格段にラクチンではある。
この条件のうち、「年代」については見たまんまなのでそれほど難しくないが、ちょっと分かりづらいのが「形式」の方だろう。実際、ここの解釈の違いによるトラブル、古式銃だと思い込んでた銃が実は古式銃じゃなかったため銃の違法所持となってしまって大変なことになる例ってのはちょくちょく起こるようだ。
「管打式」というのはパーカッション式とも呼ぶ。銃口から火薬と弾を詰め込む「前装銃」のもっとも後期、別の言い方をすれば進化した形にあるものだ。マッチロック(火縄銃)や、火打ち石をこすり合わせることで発生した火花を使うフリントロック、ホイールロックよりもずっと信頼性が高く、後装銃の時代になっても使われ続けた。
「ピン打式」というのは、金属製薬莢の中でも初期に属するもの。薬莢の側面から突き出している細い小さいピンを叩いて発火する。「蟹目打ち」なんて呼ばれ方もするが、「叩いたら発火するピン」が突き出しているというのは安全面から言えばあまり褒められた構造とはいえないこともあって、現在も使われているリムファイア(縁打ち式)やセンターファイア(中心撃発式)が普及すると姿を消した。
銃の構造の歴史というのは、特に19世紀~20世紀にかけては急激に進化したこともあって、わかりやすく一直線に「これの次はこれ、それが廃れて次はこれ」という具合に並んでいるわけではない。パーカッション式やピン打ち式が使われていたのとほぼ同時期には、紙で作られた薬莢の奥深くに点火薬が内蔵されていて、発砲時には細長い針で紙ごと突き刺す「ニードルファイア」、弾の底に深い窪みがあり、そこに火薬を詰め込んで射撃時にはその火薬が推進薬となってロケットのように飛んで行く「ボルカニック」など、様々な仕組みが生まれては消えていった。
「パーカッション式やピン打ち式等かそれより前ならOK、それより後だとNG」という基準の場合、これはどうなんだろうという微妙な立ち位置になってしまう方式というのが、どうしてもいくつか出てくる。最終的には審査を行う教育委員会の裁量ってことになるのだろう。ただ確実なのは、「火縄銃など前装銃はOK。現在でも流通している金属製薬莢がそのまま使える銃はNG」という点だ。年代的には古くても、現代でも流通する弾薬を使う銃は、現代銃という扱いになる。
例えば「龍馬の拳銃」として有名なS&W Model2は38口径のリムファイア弾、現在でも普通に流通している弾なので、たとえ年代的には条件を満たす古い銃であったとしても「形式」の方でNGになってしまう。同時期に使われていたルフォショウ・リボルバーは問題なく古式銃として所持できるのにも関わらずだ。
これらは「年代」は問題なくても「形式」の方でOKになったりNGになったりするという例だが、その逆、つまり「形式」は紛れも無く古式銃の条件を満たす古いものであっても「年代」がそうではないものも古式銃とはみなされないという点にも注意が必要だ。つまり、最近になって作られたレプリカ品は、たとえその構造や材質が昔の火縄銃と全く同じものであっても、古式銃ではなく現代銃となってしまう。
余談だが、同様の制度は日本だけじゃなくアメリカにもある。ただし、アメリカだと「○○年以上前に製造されたもの」といった具合に現時点から見てどれだけ古いかが基準になるのに対し、日本だと基準となる製造年が定められており、何年経とうがそれは変化しないという大きな違いがある。
これがどういうことかというと、アメリカだと対象となる銃が年々増え続けるのに対し、日本だと減ることはあっても増えることは絶対にないということだ。日本における古式銃は、基本的にはその値段は今後上がることはあっても、よっぽどのことがないかぎり下がることはないだろう。
「ガンマメ~銃の豆知識~」では、銃のメカニズムや歴史などについて、難しい言葉を使わずわかりやすく、けれどいいかげんなことは書かずにできるだけ詳しく書いていきたいと思っています。毎週火曜日、週に一回のペースを目標に新しい記事を投稿できればと思っていますので末永くよろしくです。