Categories: 実銃射撃

デジタルピストルの試合に出てみた

いろいろ書いたりする為にはやっぱり自分でも一度は試合を体験しておかないとならんだろうと思い、先日から全国(といっても東京と山口の二箇所だけ?)で開催されてるデジタルスポーツピストルの試合に出てみた。

いきなり迷う。

目黒区中央体育館と、目黒区碑文谷体育館って別なのね(笑) 射撃場があるのは前者、デジタルの試合があるのは後者。後者はまたややこしいところにあって自転車で30分ほどさまよう。自転車だと地元民と思われるらしく女子大生に道を聞かれたりするが、残念ながらこちらも迷子なので何も手助けが出来ない。携帯のナビを駆使してなんとか時間ぎりぎりに到着できた。

デジタルピストルの試合は基本的にはエアピストルとルールは同じなのだけれど、決定的に違うところが1つある。時間が短いのだ。エアピストルは試射込みで1時間45分、デジタルピストルは同じく試射込みで1時間10分。たった35分の違い、と思われるかも知れないけれど試射に取られる時間(約10分程度)を引くと比率的には相当な違いになる。

しかも今回は貸し銃を使うのでサイト合わせから始めなければならないため、試射に必要な時間はいつもより多い。デジタルなんだからサイトなんか最初から合ってるだろ? 最初はそう思ってた。甘かった。手にした銃はリアサイトブレードがいきなり限界まで右に寄ってるし。案の定すげー左に当たるし。超特急でサイト合わせしてだいたい真ん中あたりになったあたりで見切り発車で本射に入る。その時点でもう残り時間60分を切ってる。1発1分より速いペースで撃たないと間に合わない。カンベンしてくれー。

でもまあ、なんとかそこそこ10点が続いてるな、と思ったところでいきなり信じられない大暴投。おおむね真ん中あたり行ったろ、と思ってディスプレイ見たら、おい、6点なんてここ数年撃ったこと無いぞ!? 何事? その後も同じような「俺、ぜったいそんなとこ撃ってねえぞ」って点数が続発、結果的には信じられない低い点数で終わってしまった。

この「納得できない点数」の理由、どうやらロックタイム(バレルタイム)のせいらしい。実銃は構造上、トリガーを引いてからシアが作動し弾が出るまでに若干のタイムラグがある。シアが作動して「カチン」となるまでの時間をロックタイムと呼ぶ。そこから弾が銃口から発射されるまでの時間には正式な呼び名は無いが、「バレルタイム」と呼ぶ人が多い。デジタルピストルはそのバレルタイムを任意に調整できるのだが、試合においては60ms(ミリセカンド)に設定してあるという。

この時間、かなり長い。非常識に長い。ロックタイム込みならそれほどでもないのだが、デジタルピストルはシアが作動して「カチン」と鳴るその音に機械が反応して「撃発された」と判断する仕組みになっているので、ロックタイムをデジタル的に再現する必要はない(機械的に既に再現されているからだ)。だからここでディレイを入れるべき時間は弾が加速しはじめてから銃口を飛び出すまでの時間、いわゆる「バレルタイム」のみになる筈だ。エアピストルの実質的な銃身長は20cm程度、弾の初速は140m/s程度だから、弾がバレル長相当の距離を飛ぶのに必要な時間は単純計算で1.4ms、バレル内で加速する過程でのロスを考えて時間を倍にしたとしても2.9ms程度しかない。

実際の20倍を超えるタイムラグがある状態で弾が出ているわけだ。まあ、弾が飛び出すのが遅いのは100歩譲って良いとしよう。前装銃なんかはそういう感じらしいし。しかし、銃声とリンクしてないのは困る、というより許せない。デジタルピストルでの「銃声」はモニターであるパソコンから鳴るのだが、この音が鳴るタイミングはバレルタイムと全く関係なくトリガーを引いた瞬間に音が出る。「バァン」という音がパソコンのモニターから出るわけだが、感覚的にはこの「ァ」のあたりで弾が出ている。これはシャレにならない。大げさに言うと、「カチンと撃って、バンと音がして、よし真ん中と思って銃を下ろしはじめたあたりで弾が出る」というわけ。大外しするのも当たり前だ。

なぜこんなことになっているのか。想像だが、かつての非実弾系射撃競技銃であるビームライフル、ビームピストルの設定をそのまま使ったことが原因なのではないだろうか。ビームではトリガーが直接電気スイッチになっているので、ロックタイム込みでディレイ時間を電気的に作る必要があった。一方、デジタル射撃ではトリガーを引いて、シアが作動してカチンとなってスイッチが入るのだから、ビームライフル/ピストルのディレイ時間からロックタイム分を引かなければならないのに、銃のことを良く分かってない人がそのまま何も考えずに設定を継承してしまったのではないだろうか。

無茶苦茶上手い人が撃てば、ロックタイムが数ミリ秒長かろうが関係なしに当たる。フォロースルーをきっちり取っていれば関係ない話だからだ。だが、ちょっと下手な部類の人間(私みたいな)が撃つと当たらなくなる。そのため、「当たらないのは下手なせい。上手い人はちゃんと当たってる。銃のせいじゃない。射手が悪い」という解釈がまかり通り、この非常識なロックタイム(バレルタイム)設定がそのままになっているのではないだろうか。

池上ヒロシ

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