Categories: 実銃射撃

エアピストル用の弾をテストする

射撃競技が盛んなドイツなどでは、射撃シーズンが終わって次のシーズンの準備に入るときや、銃のバレルを交換した直後などには、まず最初にその時手に入る様々な銘柄の弾を使い、銃身を万力で固定した状態でターゲットを撃って弾着のまとまり具合を見て、相性が良さそうな弾を選び出し、その弾を1シーズン分まとめ買いするのがお約束なのだとか。

万力で固定してしまっているので銃を手で持った時とは条件が異なってきて、厳密な「銃の性能のテスト」にはならないが、バレルと弾の相性を同じ条件下で比較するのが目的なのでそれで問題ない。銃のテストではなくあくまでバレルと弾の相性テストなので、「バレルテスト」と呼ぶのだとか。

……というような話を日ラ主催のピストル指導者講習会で聞いて以来、自分のエアピストルでも一度やってみたいとずっと思っていたのだが、このたびようやく時間ができたのでバレルテストをやってみた。なかなか興味深い結果になったのでブログにもアップしてみたい。

注意点としては、これはあくまで私が使ってる(使い古した、という表現でもあながち間違いでもない)エアピストルと、たまたま銃砲店で手に入ったエアピストル弾との相性であって、そのエアピストル弾を作ってる銘柄全般やブランドそのものの評価に直結するものではないということだ。ここで悪い結果になってる弾でも、他の人が自分の銃を使ってテストしたら全く違う結果がでるかもしれない。

今回テストしたのは、全部で3銘柄・4種類のエアピストル用弾。一つ目はRWS製、「R10 MATCH」の4.49だ。この「4.49」というのは弾の直径を表す数字で、エアピストル用弾では4.48、4.49、4.50の3種類がよく売られている。数字が大きいと当然弾の直径、空気銃用の弾の場合はスカート部分が大きくなるわけだけれど、弾の重さそのものに変化があるわけではないそうだ。

500発入りの缶で販売されている。「¥800」というBB弾並みの激安価格の値札が付いているが、これはもちろん通常価格ではなく中古(もちろん未使用だが)の特価品。エアピストル弾は、こんな感じで激安価格のものがときおり店頭に並ぶことがある。想像だが、おそらく基準点をクリアできなくてエアピストルの所持更新(正確には新規で許可を取り、自分から自分への譲渡を行う)ができなかった人が手放したものが並ぶのではないかと思われる。

妙にピカピカと光り輝く感じの表面仕上げになっている。R10 MATCHってのは全部こんな感じなのかな?と思ったのだが……。

こちらはR10 MATCHの4.50。格安中古ではなく新品を購入してきたものだ。セール特価でも1900円、通常価格は2000円ちょっとと、BB弾としては高めのグランドマスターBB弾に比べても高い値段になる。

同じブランドで大きさが違うだけなのだから見た目も同じかと思ったら、4.49とは全く異なる、軽いつや消し仕上げになっている。形に大きな違いがあるわけじゃないので、4.49のほうが「高い試合用の弾の缶に、安い弾を詰めてボッタクリ価格で売ってる」ってわけじゃなく、単に製造ロットの違いとかそんな感じなんだろうと思われる。

缶の裏に貼ってあるシールには、弾の大きさの他にもいろいろな数字が印刷されている。分かる人が見ればこの数字から、この弾はいつ頃に作られた弾なのかってことを読み取れるんじゃないかと思う。

こちらは、ずっと使ってたフィナーレ・マッチの4.50。もう1試合分も入っていない缶が1個だけ残っていたのでこれについてもテストしてみることにした。4.49もあったのだけれどそちらは使い果たしてしまっていた。

基本的な形はR10と全く同じだけれど、弾頭部分のラインとかスカートの裏側の形とか、微妙なところがちょっとずつ違うのが分かる。表面のつや消し具合がさらに進んで、ほとんど灰色っぽくなっているのは新品の時からそうだった。これはフィナーレ・マッチの特徴なのかもしれない。

それぞれの形の違いや表面仕上げの違いが、どういうふうに成績に作用するのかとか、そういうことも突き詰めてやってる人だと一家言あったりするのかもしれない。私は、少なくても撃ってるだけじゃ違いはほとんどわからない……。

最後が、R10 MATCH PLUS。最高級精度の試合用弾という位置づけにある製品で、缶のなかにジャラジャラと入っているのではなく、発泡スチロールの穴に1個1個が丁寧にハメこまれた状態で販売されている。1箱で100発。

普通はこんなの買わないのだけれど、たまたま訪れた銃砲店で安売りになっていたので試しに購入してみたものだ。

次のページは、万力に固定した銃から実際に撃ってみた結果だ。

まず、R10 MATCHの4.49から試してみた。距離は10mで、10発を撃った結果である。

「中心に当ってないじゃん」……というのがよくある勘違いだけれど、このテストは中心に当てることが目的ではない。同じ場所を狙って撃った時に、どれだけ弾着が小さくまとまるのかを見るためのテストなので、別に中心にあたっている必要はない。

「同じ場所を狙ってるってわりには、2つの的で当たってる場所が違うじゃん」……これについてはちょっと説明が必要かもしれない。ターゲットは、大きなクリップみたいなものに挟んで固定して、そのクリップごと紐でガーッと10m先まで送るシステムになっているのだけれど、そのシステム上、毎回完璧に同じ場所にターゲットを設置することはできないのだ。どうしても少しだけ差がでてしまう。銃は固定されているので、当然そうすると当たる場所が少しずつ変わってきてしまうというわけだ。

「なんで、2回もテストしてるの?」……1回め(奥)は、銃を万力に固定して最初に撃ってみた結果なのだけれど、「え?ほんとにこんなんなの?」と疑問に感じてしまうくらいに良くない結果だったので、念のためもう一回試してみたのが手前にあるターゲットだ。最初の1回だったのでまだ固定が馴染んでおらず銃がズレたりしてしまったのかもしれない。

こちらはR10 4.50。厳密に比べると4.49より少し広がっているのかな……?と思える程度の穴の開き方ではあるけれど、このくらいの差なら「実用上、なんの問題もない、誤差も同然の小さな差」でしかないと言っても構わないと思う。

こちらはフィナーレ・マッチの4.50。単純に穴の小ささ(グルーピングのタイトさ)だけで比べるなら一番良い結果になったのがこの弾だった。

このテストをしてみようと決心するきっかけが、APSカップやひたすらブルズアイで顔を合わせる機会も多い実銃シューターの「アベさん」が、「R10いいよー、ぜんぜん違うよー」と熱心に薦めてきたことで、そんなにいいのか、どのくらいいいのだろうか、実際に試してみようと思い立ったことだったのだが……。「いうほど良くないじゃんR10」ってのが結果ってことになってしまった。あくまで私のエアピストルと、たまたま銃砲店においてあったロットの相性がそれほど良くなかっただけなのかもしれないけれど。

最後にR10 MATCH PLUS。めちゃくちゃ値段が高い超高精度弾なのだから、さぞかし良い結果になるだろうと期待していたのだけれど……。

あれ?あまり良くない、いやそれどころか明確に悪い!

信じられなかったので念のためもう一回試してみたのだけれど結果は変わらず、というかむしろさらに悪くなる状況に。2回試して2回とも同じ結果ということは、少なくても今回のテスト結果からは、「MATCH PLUSを買うヤツはバカ」という結論しか導けないということになってしまう……。

もちろん、何度も繰り返しになって悪いけれど、このテストはあくまで「私の銃と、たまたま銃砲店に置いてあった弾との相性」のテストでしかないから、MATCH PLUS全般に対して「これはダメ弾だから買っちゃダメ」と言えるものではないのだけれど。

次のページは、ついでに計測してみた初速について。

最後に初速の比較。エアソフトガン用の弾速測定器を使用したものだけれど、初速の数値そのものはそれほど大きく違うわけじゃないので問題ないと思う。単位はm/sだ。ちなみに弾の重さは0.45gなので、初速が150m/sのときの銃口エネルギーはだいたい5Jになる。もしこれがエアソフトガンだったら、今の法律だと完璧に違法だ。まあ、大昔はそのくらいの銃口エネルギーが計測されるエアソフトガンとか普通にゲームに使われてた時代もあったのだが……。

余談はさておき、この結果から読み取れるのは、せいぜい「フィナーレ・マッチは、R10に比べると初速が低めになるのね」ってことくらいだろうか。初速が低いからといって悪い結果になるわけじゃないのは、前ページを見てもわかるとおり。

4.49と4.50だと初速に変化がでるのかどうか、ってことについても知りたかったのだけれど、ロットが違うために片方はツルツルピカピカ、片方はつや消しと見た目からして全然違う状態では、単純に比較して良いものなのかどうか。少なくても今回のテストでのR10では、4.49、つまり径が小さいほうが少しだけ初速が高いという結果にはなっていた。

今回は、銃砲店にフィナーレ・マッチの在庫がなく、少しだけあった手持ちで4.50だけのテストになったが、次の機会があったらこんどは同じロット同士でのフィナーレ・マッチ4.50/4.49/4.48の比較なんかもやってみたいと思う。まあ、そのためにはまず、今回買った1000発ちょっとの弾を消費しちゃわないとならないんだけれど。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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