レンズを使って無限遠に光点を投影し、射撃の際の照準に利用するのがドットサイト。「ダットサイト」とも表記することがあるが、英語の「DOT」をローマ字読みするか原音に近く表記するかの違いでしかない。望遠鏡のように対象を拡大する機能は持たないものがほとんどだ。スコープのように片目だけでレンズを覗きこんで照準することもできるが、基本的な使い方としては両目でターゲットを見た状態で片目だけをサイトを通して見ることで光点とターゲットを重ねあわせるものだ。
初期のドットサイトは今のようにレンズを通してターゲットが見えるようにはなっておらず、鏡で反射した光点だけが見えるものだったという。今のドットサイトで、対物レンズにあるキャップを閉めたままで使うのと同じような感覚になるのだろうか。もちろんその使い方でも、「両目でターゲットを見て、そこに光点を重ねあわせる」という使い方をするのならば問題なく照準はできるはずだ。
そういった時代、いわばドットサイト黎明期のころからドットサイトを狩猟用やスポーツ射撃、さらには軍用の照準器として売り込んできたメーカーがAimpointである。「軍用ドットサイトの先駆け」といった位置づけのメーカーだ。レジャーやスポーツ射撃と軍用とで求められるものの違いは、なによりも信頼性の高さである。狩猟やスポーツ射撃ならサイトが故障して狙えなくても、獲物を逃すか点数を落とすかのどちらかで済むが、軍用だったらダイレクトに自分の命に関わってくる。「狙いたい時に狙えない」なんてことは万に一つでもあってはならない。そういったこともあって、Aimpointのドットサイトの最大の特徴としてメーカー自身が大々的にアピールしているのが電池寿命の長さだ。
定番となっている「Comp M4」では、回路設計の効率化により、「ノーマル」のモードでならば電池交換ナシで80,000時間も使えるとのこと。形状も構造も実にオードソックスで、サイト本体となる太い筒とバッテリーが入っている細い筒が2本並列にくっついていて、その下に銃に取り付けるための四角い台座が固定されている、ただそれだけのもの。まさにシンプル・イズ・ベストを具現化したようなドットサイトである。
実際に軍用としても使われているホンモノと同じ製品ともなると、お値段もけっこうなものになってしまう。お財布の中身に余裕があって、使い道も比較的自由で、なおかつこだわりがあるのならば選択肢に入ることもあるかもしれないけれど、大多数のトイガンユーザーにとっては高嶺の花、最初から購入の選択肢に入ることもないくらいの価格帯ではなかろうか。
というわけで、レプリカ製品である。世の中に出回っているレプリカ品の中には、形をそっくりそのまま真似るのは当然としてロゴや刻印、注意書きに至るまで忠実に再現しているものも少なくない。形はともかくロゴの丸コピーは法律とかそこらへんで不味い部分もあるんじゃないかと心配になるのだけれど、けっこう堂々と販売されている。
そういうのとは違い、大まかな形は似ているものの細部は異なり、ドットサイトとしての基本性能の方を優先した作りになっている「実際に使えるレプリカ」がノーベルアームズから発売されている。例によってAimpointの正規代理店をしながらそのレプリカ?品を発売しているってのも凄いと思うのだけれど、立場的には「トイガン用の廉価版」という位置づけと考えてOKなのだそうだ。
製品名:COMBAT M4
価格:16,000円(税抜き)
倍率:1倍
レンズ径:30mm
全長:133mm
重量:362g
使用電池:単三電池×1
見ての通り、細かい部分の形こそAimpoint Comp M4とは異なるが、遠目には分からない程度の違いでしかない。なにより価格がはるかにお求めやすいものになっているのと、それでいてドットサイトとしての基本的な性能がしっかりしているという点が嬉しい。
まずは、なによりも読者の皆さんが気になるであろう「実際の見え方」から。
見ての通り、見事なものである。普通、カメラのレンズを通して写真に撮影すると肉眼では気にならなかった微妙な歪みが気になったりするものだが、ドットは全く歪みなくまんまるのままだ。「これ、実はレンズ入ってなくて素通しです。光点は横からレーザーサイトでターゲット照らしてるんです」とか言われても違和感がないくらいの自然な見え方だ。さすがに最大光度にすると鏡銅内の反射が写り込んでしまうが、これはカメラで撮影したからであって実際に肉眼で見ると「あえて、ソレが見える角度に目を持っていく」ようなことをしないかぎり見えることはない。
※なお、「1」~「3」は暗すぎて写真に撮影するのは難しい。真っ暗に近い部屋の中などを想定した設定だと考えた方がいいだろう。
ノーベルアームズの製品は、製品名そのままでも微妙にバージョンアップされていたりすることがあるという話は以前「T1」でのレビューで書いたとおり。COMBAT M4も、最近になって出荷されたものは、以前のものには無かった要素が追加されている。
中身とか材質を見ていけばもちろん値段相応の違いはあるのだろうけれど、とりあえず外見や実用上の大きな違いだけを見ていこう。
「COMBAT M4」のレールへの取り付けで、「うまく取り付けられない」という状態になってしまう原因として考えられるのが、上のトラブルだ。マウントの下側にある「横棒」、レールにうまく噛み合って前後方向に動かないように光学機器を固定するためのもので、「リコイルストップ」とか呼ばれている重要なパーツなのだが、マウントのノブを回して緩めようとしたとき、ちょっと力の入れ加減を間違えると変な具合に持ち上がって斜めになったまま動かなくなってしまうことがあるのだ。
この状態になってしまうともう、緩めようが引っ張ろうが押そうがびくともしない。うまい具合に斜めに力を入れると「ポロッ」ともとに戻るのだけれど、ちょっとした知恵の輪みたいな形になっちゃうので意外に厄介だ。
なんか、マウントレールにうまく固定できない……? というときは、上写真の左の状態、つまりリコイルストップが斜めになっちゃっていないかどうかを確認してみよう。