今回はちょっといつもと趣向を変えて、エアガンのカスタム記事をお届けする。といっても飛距離や命中精度をアップさせたり、高価なスコープやライト類を装着したりするのではなく、スプレーを使ってエアガンを塗装するだけの超簡単記事だ。それも、最低限の分解、最低限の下地処理で済ませ、「とにかく簡単に見栄えだけをノーマルと変える」ということを主目的としたもの。つまり、「だれでもできるお手軽エアガン塗装」というわけだ。
買ったばかりのエアガンの箱を開けてから、実際に作業を終えるまで1時間足らず。それこそ、小学生や中学生でも簡単にできるカスタムというのをコンセプトに、難しい行程は全部省略してしまった。それでも、左写真程度にはそこそこ見栄えがするカスタムになってくれるものだ。
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誰でも何丁かは買ったはずの大ベストセラー
「日本国内で、もっとも多く売れているエアガン」といったら、間違いなく東京マルイのエアーコッキングハンドガンシリーズだろう。少し前のデータだが、業界紙によると年間あたりで20万丁も売れているのだとか。エアガン専門店だけでなく、小さな模型店やドンキホーテのような安売り雑貨店であっても、他のエアガンは全く置いてなくてもマルイのエアコキハンドガンならいくつかは置いてあったりする。
売れている理由は単純明快。安い割に性能がべらぼうに良いからだ。価格はグレードや発売時期、HOPの有無によって変わるが1900円から高いものでも3500円。一番最初のモデルであるルガーP08(現在は廃盤)が発売されたのが1985年、それから30年以上にわたり細かい部分がいろいろと改良され少しずつグレードアップしながら、多数のモデルが発売されている。
10才以上用の製品が比較的充実しているのも特徴だ。現時点で24種類。多くの都道府県が、一般的なエアガンを「有害玩具」として「子供に売ったり見せたり持たせたり使わせたりしてはならないモノ」と定めてしまっているが、それには該当しないように威力を弱めにしたものがいわゆる「10才以上用エアガン」である。東京マルイの10才以上用エアーコッキングハンドガンは、基本的には18才位上用と外見はほぼ同じで(厳密に見比べると表面仕上げなど若干の違いはあるが)、威力だけを下げているもの。「子供向け玩具」ではなく、「子供でも扱える大人と同じエアガン」という扱いだと考えるといいだろう。
今回、塗装のベースとするのは東京マルイ製のエアーコッキングハンドガン、「グロック17L 【ハイグレード・ホップアップ】・10才以上用・メーカー希望小売価格:2,500円(税抜)」。このシリーズの中では最長クラスのロングバレルを備えており、命中精度が高めのエアコキハンドガンという定評がある。全長244mm、装弾数は24発だ。提供:大友商会
スプレー塗料以外に使う道具。マスキングテープ、デザインナイフ、ドライバー、割り箸(片方だけ)。
※大友商会は問屋ですので、一般の方への小売販売はしていません。商品の問い合わせは、お近くの小売店までお願いします。エアガン関連の問屋としては最大手の一つですので、「エアガンを取り扱っているショップ」なら大友商会さんと付き合いが全くないってことはまず無いと思います。
東京マルイ・エアコキハンドガンG17Lのレビュー
まずは塗装前に、細かい部分を見ていこう。マルイのグロック17Lは比較的初期に発売されたモデルだが、東京マルイが「弾が出ればリアルさなんか知ったこっちゃない」という商品開発から、「やっぱ、実銃と同じ形をしてるってエアガンでも大事なことだよね」と少しずつ方針転換をし始めた時期の製品ということもあり、そこかしこにマルイの「がんばり」が見える。
スライドの右側面には注意書きや、この製品が10才以上用であることを表示するシールが貼ってある。
スライド上部が大きく切り欠かれたデザインになっている。
「HG(ハイグレード)」なので、初期のエアコキハンドガンシリーズのような「割り箸マガジン」ではなく実銃と同じ形をしたいわゆる「フルサイズマガジン」になっている。
実銃のグロックにはセフティは無いが、エアガンの場合はなんらかの形で手動のセフティを付けないとならないという業界の自主規制がある。エアコキグロックの場合、実銃ではディスアセンブリーレバーとんたているトリガー上部・フレーム側面にあるレバーがセフティになっている。レバーを上げるとセフティオフ(撃てる状態)、下げるとセフティオン(トリガーが引けない状態)になる。
スライドストップはモールドとなっており、完全なダミーで機能はしない。グリップ側面がフラットになっている、俗に「セカンド・ジェネレーション」と呼ばれているタイプのグロックだ。ここに親指を押し当てるためのくぼみが追加されたりスライドストップが操作しやすい形に変わったりしたマイナーバージョンアップ・モデルが「サード・ジェネレーション」で、ガスブローバックのグロックなどはそちらをモデルアップしていることが多い。
ハイグレードの中でも最初の頃にモデルアップされたものなので、スライドは左右に二分割する、いわゆる「モナカ」タイプとなっている。スライドの中央におもいっきり分割線が見えてしまっている。スライドが一体成型となるのはこれよりもうちょっとあとに発売されたモデルからになる。
グリップの前側と後側には格子状のすべり止めが着いている。全体的なフォルムはほぼ実銃どおりで、妙なアレンジはされていない。実銃そのものがプラスチック製のフレームということもあり、スライドの分割線にだけ目をつぶれば、「リアルさ」という点ではエアコキハンドガンシリーズの中でもかなり上位に入るモデルではないだろうか。
分解するのはスライドだけ
簡単塗装ということもあってできるだけ分解はしないというのがコンセプトだが、今回は「スライドだけを塗装」ということだからやっぱりスライドだけは外しておきたい。マルイのエアコキハンドガンは、新しいモデルなら実銃通りの分解ができたりするが、G17Lはまだそういうことはできない時期の製品なので、ちょっと分解には「独特のコツ」が必要だ。
独特のコツとはいっても、基本的には「見えてるネジを外して左右に割る」というだけの話だ。スライドを分解するのにはずさなければならないネジは2本(ちょっと無理をすれば1本だけでも分解できるけれど、オススメはしづらい)、全て外部に露出している。まずはリアサイトの右側面に見えているネジを外す。けっこう小さいネジなので、細めのドライバーを使う必要があるが、小さいわりにはしっかりとネジこまれているのでドライバーを回す力はそれなりに必要になる。ネジをナメてしまわないよう、しっかりとドライバーをネジに押し当てながらゆっくりと反時計回りに回して外す。
銃口近くの右側面にあるネジも同様に外す。実は、こっちのネジは外さなくても「ちょっと無理」をすればスライドは分解できるのだけれど、いちおう念のため……。
2本のネジを外しただけではスライドは簡単には分解できない。ここから先はちょっと力技になる。「スプリングピン」という特殊なピンで接合されているので、スライドの左右を両手で持って、力を入れて左右にメリメリと引き裂く。接着されているわけではないのでそんなに力は必要ないが、あまり無理すると割れてしまう危険もある。一箇所だけを無理に広げるのではなく、全体が均等に外れていくように力を加えるのがコツだ。
矢印で示した銀色の細い棒がスプリングピンだ。スライドを外すだけなら、写真のようにスライド後部だけを開けばOK。
スライド後部を上に押し上げてフレームに固定された機関部から外してから、スライド全体を前方に引き抜くことでスライドをフレームから外せる。
リコイルスプリングとスプリングガイド(コッキングするために後ろに引いたスライドを、元の位置に戻すためのスプリング)がフレームにはめ込まれているので、前方に引き抜いて外す。
「スライドを外す」だけならここまででOK。簡単でしょ? 今回の塗装では、分解はここまで。G17Lの場合、フレームは接着されているのでこれ以上の分解をしようとするとフレームを一部破壊しないとならないんだけれどね…。細かい部品があるので、なくさないようにどこかにひとまとめにしておこう。
下地作り
エアガンの塗装というのは、実際に塗料をスプレーで吹くのは一瞬で終わるもので、時間がかかるのはまず「分解」、そして「下地作り」だ。逆に言えばそこまで終わってしまえば作業はほぼ終了したも同然ってことだ。
スライド側面に貼ってある注意書きシール、まずこれを剥がそう。なぜかこのシールを「剥がしてはいけないもの」だと思い込んでるユーザーが多いんだけれど、別に法律だとか条例だとかで義務付けられてるものじゃないので、買ったらすぐに剥がしちゃってOK。けっこう粘着力が強いが、一気にベリッと剥がそうとせずに、弱い力でゆっくりと剥がしていくようにするとうまい具合に綺麗に取れる。
実銃だと別部品になっているエジェクションポートカバー(矢印で示した部分)や、エキストラクター(スライド右側面、エジェクションポートの後ろにある小さい棒状のパーツ)は、G17Lではスライドと一体成型になっている。これも一緒に同じ色で塗装してしまうと格好悪いので、ここだけあらかじめ「マスキング」をして、塗装しないで残しておく。
マスキングには、専用の「マスキングテープ」が販売されている。普通のセロテープやガムテープでも代用しようと思えばやってやれないことはないけれど、ノリが残ってしまったり隙間から塗料が中に染みこんでしまったりと、失敗の原因になりやすい。そんなに高いもんじゃないので、これだけは専用のものを買っておこう。模型店で販売されている。
少し大きめに貼って、はみ出した部分をデザインナイフ(よく切れるナイフ)で切り取る。少し力を強めに入れて、下のプラスチックのパーツごと切ってしまうくらいでOK。……といっても力を入れすぎてケガとかしないように、十分に注意!
ここまでの作業で、手でベタベタと触ったスライドには手の脂とか汚れなどがいっぱい付いてしまっている。そのまま塗装すると塗装が剥げやすくなったり、ムラになってしまったりする。本格的にやるなら表面にヤスリをかけたり専用の溶剤を使って油脂を落としたりするのだけれど、ここは「お手軽塗装」ということで、もっと簡単な方法で行こう。100円ショップなどで売ってるメガネ拭きを使う。
安価に手に入るわりには、メガネ拭きは表面の汚れを極めて強力に削ぎ落としてくれる。できるだけ塗装する表面に触れないようにしながら表面をメガネ拭きでこすっていく。なお、省略したがフロントサイトとリアサイトもマスキングしてある。
いよいよ塗装
缶スプレーを使う時に心に命じておく「秘訣」は、「塗料は、半分は無駄になるのを覚悟しろ」ということだ。スプレーを吹くときは材料とスプレー缶を20cm以上は離すこと。吹き始めと吹き終わりは材料に向けず、空中に向けてスプレーを吹くこと。塗料を無駄にしたくないばかりにスプレーを材料に近づけすぎて吹いたり、吹き始めや吹き終わりも材料にスプレーを向けたままにしたりすると、塗料がタレたりムラになったりという「よくある失敗」の原因になりやすい。
持ち手を付ける。今回の場合、写真の場所にある穴に割り箸を突っ込むとちょうど良い感じで固定される。
こんな感じになる。もちろんこのまま吹くと割り箸を持っている手にもおもいっきり塗料がかかってしまうので、ビニール手袋をしたり、コンビニ袋を手にかぶせたりと工夫するといいだろう。
スプレーを吹く前に大事なのは、「良く振ること」だ。特にこのスプレーは顔料(色となって定着する成分)が固まりやすいので、かなり気合を入れて振る必要がある。写真では片手で軽々と振ってるように見えるが、実際は両手で持って全力で10分以上は振りまくりたい。
「スプレーと材料は20cm以上離す」、「吹き始めと吹き終わりは直接材料にかからないようにする」の2点に注意しながら吹いていく。イメージとしては、空中に吹いた塗料の霧をふわりと材料表面に降らせる、といった感じだ。コツは、一度に厚塗りはしないこと。まず最初は、この写真のように表面にうっすらと色が乗るくらいで止めて、いったん乾かす。
できれば3回、4回と重ね塗りしていくと完璧なのだけれど、今回は「お手軽塗装」ということで2回目で終了。材料をぐるぐると回して前後・上下・左右とあちこちから見て、塗り残しがないかどうか確認しておこう。
組み立て~完成
組み立てといっても、今回はそれほど面倒な分解もしてないので、分解したときの手順を逆にするだけでOK。
吹いた塗料が十分に乾燥してから、貼っておいたマスキングテープを剥がそう。……といっても、BLPペイントのカモフラスプレーは、塗装が終わってから1時間もすればもう触っても大丈夫なくらいには乾燥する。
エジェクションポートカバーとエキストラクターのマスキングも剥がす。こうやって色を変えてやることで、本当は一体成型のモールドなのにもかかわらず「別パーツ感」が出て、ぐっとリアルになるものだ。
組み立てのコツ。まずリコイルスプリングとスプリングガイドをフレームに差し込み、先端だけを合わせたスライドを使ってそのスプリングを縮めるようにして前から後ろにすべらせるようにして押し込んでいき…
最後にスライド後部でピストン&シリンダーを挟み込むようにしてはめ込む。スライド後部のプレートを入れるのを忘れないように注意。あとはネジを2本、もとどおりの場所にねじ込めば完成だ。
上からみたところ。分解・組み立ての関係上、スライド左右の分割線はそのままだ(今回は「お手軽塗装」なので!)。エジェクションポートやエキストラクター、そして前後のサイトが色違いになっただけで、ぐっと「カスタムガン」っぽい雰囲気が増した。
サイトを黒のまま残したのはなぜか? それは、サイトに色が付いてしまうと正確な照準の邪魔になるからだ。ハンドガンの射撃ではサイトはそのシルエットを正確に前後・そしてターゲットに重ねることで照準をするので、サイトは可能な限り真っ黒であるのが望ましい。スライドを塗装したカスタムガンでも、サイトだけは黒色のまま残っていると、「お、このカスタムした人は、ちゃんと『わかってる人』だな」という雰囲気が出るものだ。
最初に書いたとおり、この塗装したグロック17Lは、12月15日に赤羽フロンティアにて開催される「ガスブロ限定ひたすらブルズアイ」の賞品とします。賞品はくじ引きにより分配となりますのでスコアに関係なく誰でもゲットのチャンスはあります! ぜひみなさんお気軽にご参加下さい!