銀/青の両方ともスコープ仕様/オープンサイト仕様の両方に対応はしているそうですが、なんとなく流れで銀色バージョンがスコープ、青バージョンがオープンサイトというようなイメージになっちゃってますね。
そのエアガン専用パーツではなく、ホームセンター等で普通に手に入る材料を使ってカスタムライフルを組み上げてしまう手腕をご覧ください。
正しい立射姿勢を取ると、体に押し当てられる部分というのは銃の下で支える左手と右肩の2箇所だけになります(グリップを握ってトリガーを引く右手は、ごく弱い力で添えるだけ)。銃の位置決めをするための極めて重要なパーツの一つがこのバットプレートになるわけで、上下の位置だけでなく角度や曲がり具合など様々な部分を微調整できるような仕組みになっています。
この青色は自動車用スプレーによるものだとか。銀色のアルミ素材にクリアー系の塗料を吹くとちょうどこんな感じになるのだそうです。
新品で買ったらそれこそAPS-2本体が数挺買えてしまうような値段がするシロモノですが、少し型遅れになったりしている中古品の出物を探すと比較的安く手に入ることもあります。……といっても数千円~一万円ちょっとくらいはしちゃいますが。ちょうどライフルショップエニスの特価品情報が4月12日に更新されたばかりです。「銃付属品」のところにある「リアサイト」と書かれた製品を探してみましょう。だいたいどのくらいの値段なのかという見当がつくと思います。もっとも、誰もが欲しいと思いそうなパーツは掲載と同時に売れちゃってたりするんですけれどね。
普通は、フロントサイトの中に挟み込むインサートを何種類も揃えて、それを交換することで調整しますが、このフロントサイトは「ドーナッツ」の外径・内径をダイヤルを回すことで微調整できるタイプのものです。
フロントサイトが乗せられている銀色の台座はアルミから削りだしたもの、さらにそれが乗っかってる八角形の台座はマルゼンAPS用の純正パーツだとのこと。
マルゼンのAPS競技用ライフルというと、APS-2とT96がありますが、両方とも軍用スナイパーライフルをデザインモチーフとしているため、バイポッドやレストを使った伏せ撃ちには良くても、競技における立射姿勢には正直言ってあまり適していない形をしているという難点があります。といっても、世に出ているエアガンのライフルのほとんどはそういった銃ですから、それが「立射姿勢には向いていない形」なんだということ自体が、APSシューターにすらあまり知られていないのが現状です。
タケさんのように実銃での競技射撃をやっている方なら、そちらの専用品(それこそ世界トップレベルの人たちによる切磋琢磨の末にコストをかけて創りだされた最高品質のもの)を使用した経験や知識をもとに、エアガンでもこういった「構えやすくて、狙いやすい」競技ライフルを自分で作り出すことができますが、そういった経験を持つ機会がない一般の方々だと、自分の姿勢を無理に作ることで軍用ライフルをなんとか構えて照準をつける、それが当たり前だと思ってしまっている人も多いんじゃないでしょうか。
APSカップ本大会では、ライフルクラスの上位が「射撃コート」を着た人たちばかりになっているため、コートの禁止をするべきではないかという議論があるそうです。ですが実際のところ、コートの有無よりもそもそもちゃんとした競技ライフルを撃ったことがあるか、ないかという経験の差が大きいんじゃないかという気がしてなりません。
例えば、バットプレートの位置一つとっても、軍用ライフルのように銃身のほぼ真後ろに肩当て部分がくるようなものだと、普通の立射姿勢を取るとバットプレートの位置が高すぎて下端を鎖骨のくぼみに当てるような構え方になってしまいます。銃身を支えるのを教本どおりに「腰の真上」にすると、銃は前のほうが重いですからバットプレートが浮き上がってしまい、それを抑えるためにグリップを握った右手に力をいれざるを得ません。でなければ、まるでクレー射撃をするときのようにストックの前方を下から支えるしかないわけですが、そのためには左手を筋肉の力を使って止める必要が出てきます。いずれにせよ競技射撃での基本となるボーンサポート(骨格保持)とはかけ離れたフォームになってしまいます。
軍用ライフルに比べてバットプレートがずっと低いところにあり、さらに後方に脇の下に入れるフックが付いているのには意味があるのです。こうすれば、腕の筋肉にはほとんど(できれば、全く)力を入れなくても銃を支えることができるので、銃がより安定して止まるのです。筋肉に力を入れず、全身を脱力した状態でも照準がちゃんと標的方向に向けるためには、力を入れて腕を動かすのではなく、銃の身体に触れる部分(バットプレートの位置や角度、フォアエンドレイサーの高さなど)を微調整するわけです。
そういった調整をしたライフルを携えて出場している人に、軍用ライフル(の形をしたライフル)を筋肉の力で支えて標的を狙ってる人がスコア的に遠くおよばないものになってしまうのはある意味しかたのないことで、それはもうコートの有無がどうこうといった話よりもっと根本的なところに「なんとかしなきゃならないところ」があるんじゃないでしょうか。