Categories: 実銃射撃

エアピストル・スタンスでの調整

前回は、「ひたすらブルズアイ」において左右へのターゲットチェンジをスタンス移動で行う場合、足を何mm動かせばよいかということを計算したが、今回はエアピストル(実銃)で自然狙点(いつもどおりに構えて狙った時に、サイトが指し示す場所)がターゲットの中心から左右にズレていた場合、足をどのくらい動かせば必要な量だけ自然狙点を移動できるかを計算してみる。

左はエアピストルのターゲット。新品ではなくて使用済のものだ。再利用するために弾痕のところに黒シールを貼ってある。中心の二重丸が10点で(内側の一番小さい円がインナー10、いわゆる「X」に相当する)、7点のところまで黒丸になっている。

サイズはこんな感じ。公式のターゲットだから、世界中どこで撃っても「公式の大会」だったら同じサイズのものを使うはずだ。
競技射撃の世界では、「自然狙点」って言葉を良く使う。サイトを見てターゲットに合わせようと思わずに、「いつもどおり」の身体的感覚で銃を構えて照準の姿勢を取った時に、自然とサイトが狙い示す場所のことだ。キッチリと姿勢が作られていれば、サイトを見ずに構えても自然とサイトは10点を狙うのと同じ位置に止まる、つまり「自然狙点が10点に入る」状態になる。

けれどなかなかそうはいかない。目をつぶって身体の感覚を「いつもどおり」にしてから目を開けると、たいていの場合は右か左に大きくサイトがズレているものだ。その状態から、足の位置を動かさずに腕だけ動かしてサイトをターゲットの中心まで持って行ってから撃っても、あんまり良い成績にはならない。「力で無理やり自然狙点から動かした」状態で撃っているからだ。

だから、自然狙点がターゲットの中心に来るように足の位置などを動かして調整してから撃ち始める。例えばこの図のように、「的紙の半分くらい左にズレている時」は、左足の位置をどのくらい前に動かせば良いのかというと……

答えは「2.6mm」となる。足を置く位置が「正しい位置」からたった3mmズレているだけで、弾はターゲットの中心から外れて的紙にも当たらないってことになる。

なんか、直感的にはもっと大きい数字になるんじゃないだろうか、って思うAPシューターも多いかもしれない。実際、自然狙点が的紙の端っこを指してたくらいだったら、足の位置をセンチ単位で動かしたくなるものだが、厳密な計算結果はこのとおり。たった2.6mmで十分ってことになる。1センチ(10mm)も動かしちゃったら明らかに動かし過ぎで、今度は自然狙点が的紙の反対側の遥か彼方に移動してしまい、そこからさらに戻すのにまた足を動かして…の悪循環に陥ってしまう。

簡単な操作で、0.1mm単位で靴底が前後にスライドするような靴があったら射撃用品としては大ヒット間違いなしかも? まあ、レギュレーション違反確実だけど。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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