昨年の11月5日~6日の2日間にわたって、山梨県の勝沼で開催された「ワインツーリズム2011」。せっかくたくさん写真を撮ってきて話もいろいろ聞いてきたのにどこにもUPしていませんでした。今年のワインツーリズム2012が今月末にせまってる今になって、やっぱりもったいないなと記憶をさかのぼりながら記事を書き始めてる次第です。
第4回目となる今回は、2日目の中盤に入ります。昨年のワインツーリズムは、1日目は勝沼エリア、2日目は甲府・石和エリアという具合にバスが巡回するルートがわかれていました。たくさんのワイナリーが狭い地域に密集している勝沼と違い、甲府や石和はワイナリーの数自体は多いのですが互いに離れているので、移動はバスが頼りになりそれほど多くの場所を回ることはできません。そのため、いきおい一箇所での滞在時間も長くなりがちです。
笛吹ワイン
一言で表現すると、「小さい、アットホームな感じのワイナリー」。観光客向けに、「ぶどうの足踏み体験」なんてことをやってたりする。自分で踏んで絞ったブドウ汁を使いワインを仕込んで、出来上がったら自分でデザインしたラベルを貼って送ってくれるというものだ。こういっちゃなんだが、真剣に上質なワインを作ろうとしているところ……というような雰囲気はあまりない。よくある観光地のおみやげワイナリーである。といっても、大きな企業がやってる観光地化された施設じゃなく、小さい施設で気のいいおばちゃん、おじさんが楽しく相手をしてくれるってところは、家族連れで来たりするのはいいのかもしれない。
2日目は観光地化された大手のワイナリーが最初に2つ続いたが、その次に訪れた笛吹ワインはずっと規模が小さい、アットホームな雰囲気のあるワイナリーだった。試飲のワインも、「甘めで誰もが飲める口当たりの良いワイン」、いいかえるとジュースみたいなやつが多かった。
ぶどうの足踏み体験なんてことをやっていた。実際に自分の足で踏んで潰して絞ったブドウ汁でワインを作り、出来上がったら自作のラベルを貼って送ってくれるというものだ。いい思い出にはなるだろうけれど……。
ここの試飲ワインで興味深かったのは、「デラウェア」の新酒だ。デラウェアは生食用として有名なブドウで、誰でも何度かは食べたことがあると思う。収穫期が近くなると急激に糖度が上がり、その代償として果汁中のリンゴ酸は急速に減少してしまうため、ワイン用には向いていないと言われている。だがこの地域では「青デラ」と呼ばれる未熟な実をあえて使用することで、さわやかな味の新酒を作るという試みが行われているという。
ここは、観光地っぽさなんか欠片もない。看板すらほとんど出ていないので、知らなかったら絶対に通りすぎてしまうだろう。ワインツーリズム参加者に事前に郵送されてきた案内地図も、デザイン性重視になっているせいで細かい曲がり角などがわかりづらく、正直言うとこの地図だけでたどり着くのは無理だ。当日、石和温泉駅前で配られていた詳細地図があったからなんとか辿りつけたようなものだ。
一言で表現すると、「農協みたいなところ」だ。実際にやっていることも農協と共通点がある。農家の人たちがワイン醸造を委託する(農家が持ってきたブドウをワインにして、それをそのまま農家の人が持っていく)という生産がメインなのだ、一般に販売もしているが、それはどちらかというと全体から見れば一部に過ぎない。
そんなお役所的なところだったら、ツーリズムで訪れたお客さんなんかほったらかしにされるか……と思いきや、実際は正反対。「え? いいの?」ってところまで超フレンドリーに公開してくれた。
なんと、発酵途中のタンクの中まで覗かせてくれるのである。普通のワイナリーだったら絶対にありえない対応である。
醸造タンクは(当たり前だが)背が高い。だからそれを上から覗き込もうとすると、高いところに登る必要がある。醸造部屋にはキャットウォークが張り巡らされていて、そこに登ることを許可してくれたのだ。
階段は狭いし、建付けもけっして良くないので歩くとグラグラと揺れる。ちょっと怖い……が、参加者はみんな大喜びで我先に高い台の上に登り、普段はまず確実にNGとされる「醸造途中のワインを直接見る」という基調な体験に大興奮だ。
「日本のワイナリー」独特の風景だと感じて撮った写真。事務所や学校みたいな飾り気のない壁と机。机の上に置かれた神棚。そしてその横に置かれた、メスシリンダーと試飲用のグラスである。
次回は八代醸造とドメーヌ・Qをお送りする予定。なんとか次で「ワインツーリズム2011」の覚え書きは最終回になりそうな感じだ。