1日目は勝沼ぶどう郷駅がバスの中心ステーションだったが、2日目は石和温泉駅がその役割を果たす。歩いていける範囲にたくさんのワイナリーが集まっている勝沼地区と違って、甲府・石和エリアはワイナリー同士の距離が遠い。そのため、バスに乗って一つのワイナリーに言って、そこが終わったら次のバスを待ってそれに乗って次のワイナリーに向かう…というのが、基本的な巡回パターンになる。
最初に訪れたのはモンデ酒造。大型バスが次々に乗り付けてくる観光ワイナリーだ。広いスペースの各所に、自分で勝手にコップに注いで飲める「ご自由にお飲みください」な感じの試飲スペースがある。きわめて典型的なおみやげワインメーカーである。
とまあ、長々と書いたけれど、つまりは「ありがちな観光地ワイン売り場」でしかない。なんでこんなところにわざわざ来たのかというと……。
実は、面白いワインも作っているのである。普段は完全に観光客向けの「フルーティーで飲みやすいワイン」しか出してないような試飲スペースだが、この日は特別にワインツーリズムの参加者向けに醸造スタッフが解説員として常駐し、普段は出していないワインも試飲用として提供されていた。
特に巨峰スパークリングは、この数週間前に日比谷のヌーボー祭りでも試飲として出ていたものだが、その日は冗談のような大行列になっていて、とても飲めなかったのである。朝イチでこのモンデ酒造を訪れ、「日比谷にも行ったんですが行列がすごかったですね、巨峰スパークリングも飲んでみたかったんですが」とスタッフの人に言ったところ、「ありがとうございます! 今から冷やしますので、30分、いや、20分だけ待っててください!」と、およそ信じられない好対応。他のワインや工場見学ルートを見たりしつつ頃合いを見計らって試飲スペースに戻ると、「おまたせしました! 今から開けますのでこちらにどうぞ!」と、ほとんどVIP扱いである。こちらはもう恐縮するばかり。
そうこうしているうちに、首から緑の札を下げたツーリズム参加者の人たちもぽつぽつ集まってきた。その中の一人である自分が言うのもなんだが、観光バスで来ている「フツーの人たち」とはあきらかにワインを見つめる目つきが違う。試飲をしてはスタッフにやたらと専門的な突っ込んだ質問をするし、それに答えるスタッフも(おそらくはいつもは試飲スペースになんか出てこない)専門の醸造スタッフなので、熱が入った解説が繰り広げられる。最初は人だかりを見て「何があるの~」と寄ってきた一般の観光客の皆さんも、交わされているやり取りのディーブさに引いて離れていく。
ワイン好きだけれど、普段のモンデ酒造の試飲スペースに来て失望して帰ってしまった経験がある人は、次のワインツーリズムではぜひ再訪してみることをおすすめする。「いつものモンデ酒造の試飲」とは全く違う、面白いワインが飲めて面白い話が聞けるスペースが、一年に一度だけそこに出現するのである。
次に訪れた山梨マルスワイナリーも大きめの観光ワイナリーだ。ワインを作る工程を順番に見学できる「工場見学ルート」みたいなのが設置してあり、除梗破砕機や圧搾機、低温貯蔵庫が自由に見学できる。専門の人が案内してくれるわけではないが、見学ルートのところどころにボタンが設置してあって、そのボタンを押すとテープで解説音声が流れる仕組みになっている。なんか、ますます「田舎の民俗博物館」みたいな感じだ。
だが、ここでも「ワインツーリズム参加者」と「一般の観光客」との差別というか区別が行われていた。ワインツーリズムの参加者だけに地下の特別試飲室が開放され(ツーリズムの名札を付けてないと入れない)、有料試飲が行われていたのである。
次回はワインツーリズム2011・2日目の後半。笛吹ワインとニュー山梨ワイン醸造をお送りする予定。