APS-3・インプレッション(2)

マルゼンがグランドマスターの後継機種を出す、それもポンプ式を採用した製品らしい……という話は随分前から聞いていた。実際に試作品が大会等で展示されたこともある。だが1年が過ぎ、2年が過ぎても、一向に発売日に関する具体的な情報は入ってこない……。ところが昨年の夏に開催されたAPSカップにおいて、ついに「今年中には発売できます」という発表がなされたのだ。

実際には2006年には間に合わず、2007年2月15日(所によっては16日)の発売となったわけだが、これまで何年も待たされたのに比べれば数ヶ月程度の遅れはどうってことない、というのが多くのAPSファンの気持ちだろう。この間、銃刀法の改正などいろいろとややこしい事態もあったことだし、前述の「問題」の解決にもそれなりの苦労もあったことだろう。

さて、前置きはこのくらいにしてAPS-3のインプレに入ろう。

前述の通り、APS-3ではポンプ式を採用している。メーカーとしては「コンプレスト・エアー」という名前を使っているが、要は同じ意味だ。エアーコッキングでもガスでもなく、レバー操作によりあらかじめ圧縮しておいた空気をトリガーを引くことで一瞬で開放し、弾を発射する。撃ったときの感触がエアーコッキングともガスとも異なる。「バシュン」とか「バスッ」といった音ではなく、「パンッ」という、ごく短い破裂音が響く。通常の玩具銃(エアガン)しか撃ったことの無い人にとってはこの感覚は衝撃だろう。トリガーを引いた、と認識できたときには既に弾が発射されている。これまでの、トリガーを引いて、シアが作動してスプリングが前進して弾が発射される、というものとは全く異なる。

また、ピストン前進に伴う振動の発生が無いことも大きい。グランドマスターは良くできた競技銃だったが、どうしてもそれ(ピストン前進による振動)による弊害が大きかった。トリガーを引くとフロントサイトが一瞬上に上がり(前進するピストンの反作用により、手首を軸として銃口が上に上がる回転モーメントがかかる)、その後下にカクッと下がる(前進しきったピストンがシリンダー前面に当たることによる反作用)。これを少しでも減らそうと、トリガーガードから長い棒を伸ばしてその先に重りを付けたり、銃口付近に大仰なウエイトを装着したりと、様々な工夫をするシューターがいたものだ。私を含めて。

APS-3にはそれがない。トリガーを引くと銃は静止したまま、弾だけが発射される。おそらく上位シューターが撃つのを横から見てるだけでは「いつ弾が発射されたのか」がまるで分からないのではないだろうか。もちろん、シア開放によりバルブを叩くことによる若干の振動は発生する。よりシビアな精度を追求する場合はこれが問題になるはずだ(問題点に関しては後述する)が、エアーコッキングを撃ったときのサイトが上下するほどの振動に比べれば「無い」に等しいものだ。

池上ヒロシ

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