事実を列挙するのは以上で終わり、ここからは私の意見。
これらの数字やグラフを見て、「エアガンは改造されていようがされていまいが、実銃に比べれば全然威力も小さいし危険性なんかまるでない」というような認識に至ってもらっては困る。威力がどうであれ、銃の形をしていて、弾が出る以上、それは「危険なもの」であり、そう認識して扱うべきである。オモチャであっても、危険なことには変わりがない。ただ、その危険の大きさが実銃に比べれば格段に小さいというだけの違いでしかなく、意味もなく何の関係もない人間を撃つような真似が許される筈もない。そんなことを行う人間は、使った道具が単なる市販エアガンで、撃たれた側にたいした怪我がなかろうと、単なる「県の迷惑防止条例違反」のような軽い罪ではなく、それなりに重い罰を受けるべきだと思う。
エアガン市場には威力が高い製品のほうが良く売れるという傾向があるのは確かだ。パワーの高さを求めるニーズが確実に存在しているのである。だが、エアガンが「オモチャ」として存在が許されている唯一の理由が「パワーの小ささ」である以上、どこかで線を引いてそれを踏み越えないようにしなければならない。その線が、「このくらいは踏み越えても、いいんじゃないかな?」と思えるところにあったとしてもだ。
しかし、その線を踏み越えたところで、自主規制はあくまで自主規制に過ぎず、法律に違反したことにはならない。だから、誰もその線を踏み越えたことを罰することはできない。また、販売している製品の改造対策が甘かったとしても、それはそれだけでは法律違反でない以上、誰もその製品を作ったメーカーを罰することは出来ない。結局はモラルの問題ということになってしまう……。
しかし、炭酸ガスで金属弾を発射する銃は、作ることも持つことも、既にある法律で裁ける歴とした犯罪である。そういった違法改造銃は、自主規制がどうとかそういうレベルを遙かに超えたところにある、問答無用で実銃認定されて当然の代物である。銃刀法は(特別に許可されたものを除き)「銃」を持つこと自体を禁じた法律である。たとえ撃たなくても、外に出さずとも、誰にも迷惑をかけていなくても、銃を持っていればそれだけで犯罪とされる、それが銃刀法という法律の特徴と言える。
自主規制値を超えることが悪いか否か、エアガンがオモチャとして成り立つにはどこらへんに線を引くべきかといった微妙な問題と、エアガンの違法改造や違法改造銃での犯罪を取り締まることは、一見すると同種の問題に見えがちだが、実は全く次元の異なる別種の問題である。そこを混同して同種のものとして扱い、エアガン全般が今すぐに取り締まられるべき違法な状態にあるかのように思わせる報道は、あきらかな間違いである。それが無知からくるものなのか、意図的なものなのかはともかく、そういった報道には注意を払うべきである。間違った方向にリードする報道は、一件それが正義を叫んでいても、いや正義を叫んでいるように見えるときこそ、それがリードする方向には危険なものが潜んでいることが多いからである。
(了)
2011年9月追記
このエントリーを書いたのも随分と昔のことになった。その後、エアガンについては銃刀法にて威力の上限が定められ、その威力を超えるものは違法なものであり、超えないものは合法なものだと明確に区別されるようになった。それを受けて書いたのが下記エントリーだ。