2014年の8月に中国・南京で開催されるユースオリンピックで行われるという新しい射撃競技についてのニュースだ。既に2010年のシンガポールYOGで行われたユースオリンピックでも行われた実績があるとのことなので「世界初」というわけではないが、ルールを読むにつけ「これは、面白いんだろうかどうなんだろうか」とどうも良くわからないので、ちょっと皆さんの意見を聞いてみたいと思った次第。
簡単に言うと、「ぜんぜん知らない別の国の異性とペアを組んだ上で、最終的には勝ち抜きトーナメントで優勝ペアを決める」というもの。普通の射撃競技と違って数十発を撃った合計点で競うのではなく、一発だけを撃ってその得点が相手のペアより高いか低いかだけでポイントを取れるか取れないかが決まるというのがミソだ。
この競技が行われるのは、エアライフルとエアピストルの2種目。2日間にわたって行われる。まず1日目は「予選」で、全員で40発競技を普通に行う。
予選の成績で決勝にすすめるかどうかが決まるわけだが、その決め方がユニークだ。男女ひとりずつの一組でチームを組むのだが、男子の1位と女子の20位、男子の2位と女子の19位……男子の20位と女子の1位といった具合に組み合わされる。同じチーム内に同じ国の選手が入らないように適宜組み換えも行われる。そうやって作られた20チームのうち、二人の合計点を比較して上位の16チームで決勝の勝ち抜き戦が行われるという形になる。
決勝は、2チーム(4人)が並んで、1発ずつ撃つ形で行われる。1人1発で、1チームは2人で構成されているので、1チームあたり2発を発射する形になるわけだが、その2発の得点を比較して、自分のチームの方が得点が高ければ1ポイントを獲得する。同じように「1発勝負」を続けて行って、最終的に10ポイントを先取したチームの勝利となる。最速では10発で勝負が付くし、最後の最後までもつれこめば19発を撃つことになるわけだ。
初日に予選とベスト8の決定、2日目には準々決勝、準決勝、決勝が行われる。決勝で勝利すれば金メダル、決勝で敗北したチームが銀メダル、準決勝で敗北した2つのチームによる3位決定戦で勝利したチームが銅メダルとなる。
「互いに1発だけ撃って、その勝敗でポイントを獲得、10ポイント先取で勝利」というやり方は面白いかもしれない。どれだけ中心に近く、正確で完璧なショットをするかという「自分との戦い」がメインとなっている射撃競技の世界に、自分はミスしても、相手がより大きなミスをすれば関係なく勝利になるという「敵との戦い」という大きな要素が加わってくるからだ(もちろん普通の得点競技でもそういう要素はあるが、よりダイナミックにわかりやすく勝敗が決まるという意味で)。
ただ、競技として成り立つかどうかという点で気になるのは、決勝に進むチームを決めるやりかただ。1位と20位、2位と19位という組み合わせは一見すると実力を拮抗させて決勝を面白くするために有効な方法に見える。けれど、上位数名は実力が拮抗していて点差がほとんどつかないけれど、下位の方にいくと人による差というのがだんだん大きくなっていって点差が開いていくというのが普通だ。ということは、予選では数点差で1位になるよりは、少し手を抜いて2位~3位くらいに入っておいたほうが得だ…みたいな判断をする選手が出てくるのではないだろうか。予選での得点は決勝には関係ないとはいえ、上位20チームから決勝に進む際に、予選の得点で4チームが足切りされるようだから、そのリスクを避けるためにそういう手を使おうとする選手がいないとも限らない。予選をしている最中に、男子は女子の、女子は男子の得点を記録して、それを選手に何らかの方法で伝えてより有利に決勝にすすめるように得点を調整したりといったことをしようとする国も出てくるかもしれない。
上のリンク先を見るとこの競技の目的として、「国際的な協力と友好」なんて言葉が並べられている。マジになって勝ちを狙っていく競技というよりは、マスコミ向けに仲良しこよしを演出するためのお祭りイベントって性格が強いのだろうか? 確かに、異なる国籍を持つ男女の選手が力を合わせて勝利を目指していくってのは、絵面としてはなかなか視聴率が取れそうなものではあるのだけれど…。