大学生どうしでAPSカップのような精密系のシューティング大会、スピード系の大会、さらにはサバイバルゲーム大会などを積極的に開催している「大学交流会(公式ブログ)」という団体があり、そこのAPS部門の担当者と聞いています。
年々高齢化が進んでいく傾向があるシューティングマッチの世界(スピード系でも精密系でも同じ)において、こういった熱心な若いシューターの団体なんてのは、ちょっと大げさな言い方になりますがまさに天使のような存在でして、ハロさんの所属しているNIT-ASC(日本工業大学エアソフトガンシューティングクラブ)に大きな期待をしている古参のシューターや関係者は多いんじゃないでしょうか。
公式ではない練習ではAPSルールで200点満射の経験もあるというハロさん。使用されているAPS-3は、見た目こそそれほどハデではありませんが、なかなか斬新で合理的なカスタムがされています。先日の赤羽PPSで写真を撮らせてもらいながら話を聞いて来ましたので今回はそのレポートをお届けします。
アウターバレルは、フロントサイトベースから機関部に接続する部分まで一体構造となっていて上部にはレールが付いているリミテッドエディションのものが付いている。ノーマルのAPS-3だとダットサイトなどを取り付けようとしたときに付ける場所が無く、フリーダムアートから発売されているカスタムパーツを組み込む必要があったが、リミテッドエディションだとそのカスタムパーツと似たような形をしたアウターバレルがもともと付いているというわけだ。
ダットサイトをもっと前方、具体的にはアウターバレルの上などに載せればカバーと干渉することはない。だが、「もっとサイトを後ろに付けたい」と思う人もいる。カバーを根元部分だけを残して切断するなどして少しでも後方にサイトを載せようとするカスタムもあるが、それにも限界がある。
ハロさんのカスタムでは、カバーそのものを無くしてしまっている。カバー無しでどうやってコッキングするのか? カバーと連動して後退するストライカー部分に引っ掛けるような形のレバーを取り付け、そのレバーを銃の後方に引っ張る形に改造してあるのだ。ちょうどM16(M4)のチャージングハンドルと似たような構造である。その連想から来ているのかどうか、レバーそのものもM16のチャージングハンドルを流用したものが取り付けられている。
左写真で、レバーを青矢印の方向に引張ることでコッキングおよび次弾の装填が行われる。上に跳ね上げる形になるカバーがなくなったため、通常のAPS-3ではありえない位置にダットサイトをマウントすることが可能になったのがよくわかるだろう。
※なお赤矢印で示した場所に緑色のシールのようなものが貼ってあるが、これは実射にはなんの関係もない単なる飾りとのことだ。
パテがけっこう分厚く盛ってあるが、これはレバーを前進させてロックすると後ろから見て斜めになってしまい、サイトを覗いたときに銃が傾いているように感じてしまうため、後ろから見てもレバー上面が水平になるようにするための措置だとのことだ。
コッキング操作は、残念ながらスムースとはいかない。細くてけっこう長いレバーが機関部の中の微妙な部分と噛み合っているので、引く角度とか力の入れ具合とかにコツが必要で、借りてすぐに誰でも簡単に操作できるとはちょっと言いがたいものがある。もっともこれは自作する過程で溝を掘る角度とか位置とか深さなんかを試行錯誤したことによるもので、最初から「この形」にする予定で形や構造を考えて作れば、もっとスムースに動くシステムにすることはそれほど難しくないんじゃないだろうか。
ハロさんによると、「本当ならもうちょっと後ろに移動したいんだけれど…」とのことだ。だがこれ以上後ろに移動しようとすると、ダットサイトやマウントそのものを作りなおしたり新造したりする必要が出てきて、いくらなんでも手に余る大改造になってしまう。
BB弾の装填は、BBローダーのパイプの後方からプチプチと入れる形になる(本来ならマガジン側、つまり出口に相当する場所が入り口になっている)。プラの弾性で保持されるため、入れたBB弾は特に蓋を締めたりしなくても外にこぼれてくることはない。
その後、ノーマルのマガジンと同じようにレバーを引くと、サブマガジン(BBローダー)からマガジンの中にBB弾が流れこむ。メインとなるマガジンの装弾数は5発と、ノーマルと変わらないが、「レバーを引く」という簡単な操作で再びフル装填にすることができるのが最大の特徴だ。
APSカップでは、基本的には「5発ずつ」で何らかのインターバルがある形になっている。ブルズアイは5発撃ったらターゲットを交換。シルエットはスタンディングで5発、それが終わったらプローンで5発。プレートは15発だが、多くのシューターが5発(一列分)を撃ち終わった後にマガジン交換や再装填を行うためインターバルが長めに取られる。だから「5発撃てるマガジンがあればそれで十分」という考え方もできるが、一度弾を装填すれば競技終了までそのまま補充なしで行ける大容量マガジンを備えることで、弾の補充に心乱されることなく競技に集中できるようにしたいと考えるシューターは多く、APS-3用の大容量マガジンはいろんな人がいろんなやり方を考え、自作している。その中でもハロさんのこのシステムは、単純でかつ加工が簡単で、トラブルの心配もない優れたやり方だと言えるだろう。この方式のままカスタムパーツとして売りだしたり、あるいは加工後のマガジンをヤフオク等で販売したとしてもそれなりに需要があるんじゃないだろうか。
トリガーはフリーダムアート製のものに交換してある。…ということを今確認しようと思ってフリーダムアートのWebサイトを見に行ったら、この形のカスタムトリガーってKSCのAP/GP用しか販売されていないような…? ノーマルよりもずっと後方(近い位置)までトリガーを移動させることができるというのが特徴らしい。加工してAPS-3に取り付けてあるということなのだろうか?
独創的なコッキングシステムで、射場でも注目を浴びることが多いハロさんのカスタムAPS-3。ダットサイトを少しでも近く、かつ低くマウントしたいと思っているAPSシューターは多いようで、けっこう需要の大きなカスタムだと思う。
ダットサイトをシューターの近くにマウントすれば、レンズ(ドットが見える範囲)の見かけの大きさが大きくなる。ダットサイトというのはレンズ内のどこにドットがあっても射撃すればそこに弾が飛んでいくというのが特徴だから(実際はそうでもないことがあるが、そこについては割愛)、レンズの見た目の大きさが大きければ大きいほど、「とっさに撃ちたいとき」にはありがたいサイトとなる。通常の精密射撃では顔とサイトとターゲットの位置が毎回一定になっていることが絶対条件なのでダットサイトの恩恵はそれほど大きくないが、APSでは「3秒以内に構えて撃つ」というプレート競技があるので話が変わってくる。
レンズの見かけの大きさを大きくしたいのなら、ダットサイト本体を近づける他にも「レンズが大きい大口径のサイトを使う」という手段もある。しかしそうすると今度は、サイトの取り付け位置(レンズの中心位置)が高くなってしまうという弊害が生じる(レンズの直径が10mm増えれば、レンズの中心位置は5mm高くなるという意味)。射撃姿勢を安定させるとか、距離による着弾位置の変化を少なくしたいという理由から、可能な限りサイトは低くマウントしたいと考えるのが普通の考え方だ。
「小口径のダットサイトを、可能な限り後方にマウントする」ということにおいては、今のところ最強に近いカスタムの一つである。そう簡単には真似できなさそうではあるが。
ハロさんは、ご自身のブログでも射撃に関係あること、無いこと、いろいろと書かれてますのでぜひ一度ごらんになってください。
いくら空を見上げようとも
http://suparutan117.militaryblog.jp/