金曜の午前中に日本テレビ系列で放送されている「スッキリ!!」という番組に、エアピストルの松田知幸選手が登場したらしい。
1975年生まれの36才と、けっこう親近感を感じる年代の松田選手。番組中で話に出たのが、マンガ「スラムダンク」の中に登場する安西先生のあの有名なセリフ、「あきらめたら そこで試合終了だよ」
集中力を維持するための支えとしているそうな。親近感を感じますね。まあ、ここでさくらちゃん(カードキャプターさくら)の「絶対だいじょうぶだよ」を心の支えにされてたりしたら、それはそれで困惑してしまいますが。
youtubeに、昨年のワールドカップシドニーでのエアピストル10mのファイナルの様子がUPされている(ISSFの公式動画)。ご存知ない方向けに解説すると、これは60発を撃つ「本戦」での上位8名で行われる決勝戦(ファイナル)。本戦の点数に、ファイナルで撃つ10発の点数を加えて勝敗が決定する。本戦では1点刻み(10点の下は9点、その下は8点)だが、ファイナルだとさらに細かく、0.1点刻みになる。最高得点は10.9点(文句なしのど真ん中)。同じ9点を撃ってしまうのでもギリギリで10点に入らなかった9.9点と、ギリギリで9点の線をカジった9.0点では0.9点もの差が付いてしまう。
上動画は、ファイナルのSS(サイティングショット=試射)を行なっているところからスタートする。放送実況・解説の紹介やエアピストル競技の紹介なんかをした後に、一度ファイナル参加者全員が銃から手を離して観客の方を向き、選手紹介が行われる。その後、2分間だけもういちどSSがあって、その終了後にいよいよファイナルがスタートとなる(11分30秒ごろ)。
この大会、松田選手は本戦で585点を撃ってトップ。ファイナルスタート時で既に2位に2点差が付いた状態である。ファイナルで2点をひっくり返すのはそれほど難しくないので「安全圏」とは言いがたい。しかし始まってみれば接戦になるどころか、1発を撃つたびにどんどん差を引き離していく展開になった。3発目で文句なしのど真ん中である10.9を撃ち(17分過ぎあたり)、さらに4発目でも10.6を撃って2位に4.1点差をつけて優勝をほぼ確実とする(このレベルで、6発で4点をひっくり返すのはほぼ不可能に近い)。F1で言うところのポール・トゥ・ウィンってやつである。そのため実況も解説もそれ以降は2~3位争いの方に注目を移してしまっているので(5発目で10.3を撃ってさらに引き離してるのに写りもしない)あんまり見所がなくなってしまったのが残念ではあるが。
優勝確実とはいっても、世界のトップレベルの人がいきなり7点とか撃っちゃうのがファイナルの世界。追い上げる側としては、それこそまさに「あきらめたら そこで試合終了だよ」の言葉を支えに「最高の1射」をし続ける以外にできることはない。追われる側としても、ここから先の5発を「最低でも9点台後半以上」に叩きこみ続けるためのプレッシャーは相当なものになるはず…なのだが、松田選手はキッチリとそれをやり遂げ、最終的には5.7点差でぶっちぎりの優勝となった。
こんな痛快な金メダルをロンドン・オリンピックでも再現してくれるかどうか。今からオリンピック開幕まで、取材やらTV出演やらで練習のペースを乱されることも増えてくるはず。どこまでメンタルを維持できるかが勝負の分かれ目だろう。誠に身勝手な言い分ながら、日本のピストル射撃界の未来がかかった注目のオリンピックである、なんとか、なんとか劇的な感じで活躍してほしい。