そんな1年越しのレポートの最終回は、最後に訪れた(実際にはこの後にもう一箇所立ち寄ったんだけれど、そこはかなりのショボンな感じだったのでなかった事にする)マルサン葡萄酒で締めくくることとしたい。
このワイナリー、とてもじゃないが外観は「ワイナリー」には見えない。勝沼では実にありふれたタイプの、ぶどう狩りの直売所そのものの見た目をしている。出てる看板も「若尾果樹園」だし。知らなければ普通に通りすぎてしまうだろう。
実際、昨年のワインツーリズムでここに立ち寄ったのは完全に偶然だった。他のワイナリーを訪れた後、位置的な関係で他のバス停まで歩くよりも勝沼ぶどう郷駅まで歩いてしまったほうが早いという状態になり、けっこう長い道のりをてくてく歩いていた時、ふと道端にある「ぶどう狩り直売所」にしか見えないところの店先に(数名程度ではあるが)人だかりができてワインの試飲会が行われているのが目に入ったのだ。
勝沼ではよく作られている甲州種、マスカットベイリーA、アジロンダックといった品種の他、メルロー、プチ・ヴェルドー、シャルドネといった日本では本来作るのが難しいと言われているヨーロッパ系品種のワインも作っている。それも、海外の高級と言われているワインの味を再現するというわけではなく、かなり日本独自というか、和食の味覚に合う感じの他とは違う道を突き進んでいる。
面白いのはアジロンの辛口だ。アジロンのワインというと、ほとんどジュースみたいな甘ったるいものばかりしか知らなかったのでそういうワインしか作れない品種なんだと思っていたから、飲んだ時はかなりびっくりした。これは美味い。それも、チーズだクラッカーだといういかにも「ワインのおつまみ」みたいなものじゃなく、野沢菜の漬物とか、ちくわと切干大根の煮物とか、豚の角煮とか、いんげんとニンジンの細切りを豚バラ肉で巻いて照り焼きにしたヤツとか、そういった「日本の食卓で定番のお惣菜」に物凄い良く合う。ワイングラスじゃなく湯のみで飲むほうが似合ってるんじゃないかってくらいの勢いだ。
あとで知ったのだが、このマルサン葡萄酒ってワイナリーはそれこそ「知る人ぞ知る」に近い、一部で評価の高いワイナリーらしい。表舞台で大々的に活躍、みたいなことをしていないので、山梨ワインにけっこう詳しい人でも見落としていることもあるとか。
見落とされる理由の一つはこれなんじゃないかなと強く思うのだが、ラベルのデザインが、正直、良くない。あまりにやっつけ感が強すぎる。モノによっては、Wordで作ったそのままなんじゃないかと思えるくらいのテキトーデザインだったりする。そもそも筆文字で大きく「百」と書いてあるのは、アイコンになってひとめで見分けが着くのにはいいかもしれないけれど、ワインのラベルのデザインとしてはどうだろう。ここだけの話だが、ウチの母親にここのワインを見せたら、「湿布薬のパッケージみたい」と言われてしまったくらいだ。
まあ、ラベルの出来は別に中身には関係ない。「知ってる人は少ないが、知ってるというだけで一目置かれる」ワイナリーなんてそうはないし、それだけで訪れる価値はある。交通の便もけっして良い場所ではないので、「ここに行こう」という明確な意思を持っていないとなかなか訪れる機会もないかと思う。ワインツーリズムではぜひルートに組み込んでおきたいワイナリーの一つだ。
さて、このエントリーの公開日を明日に設定してセーブしたところで、明日の準備に取り掛かることにする。まだどういうルートで回ってどのワイナリーを訪れるのか決めてないんだよな~。