いまさらグダグダ説明するまでもないけれど、ボージョレ・ヌーボーというのは、「今年も無事、ブドウが収穫できてワインが作れました」ということをお祝いするために飲むもので、いわゆる「縁起物」ってやつであって、間違っても「毎年、この時期にしか飲めない特別においしいワイン」というわけではない。
毎年、気候も違えば天変地異や大事件があったりもする中で、無事に収穫・醸造・出荷までこぎつけることができたというのは、十分にお祝いするに足るめでたい理由ではある。しかし、なんでまた日本にいる私達が、遠いフランスブルゴーニュのごく限られた一地方にすぎないボージョレの人たちの収穫をお祝いしないとならないのか、いやお祝いすることにやぶさかではないのだけれど、どうせならもっと身近な、日本産のワインの方をお祝いしてやるのが筋ってものじゃないのか…みたいなことを以前ちょろっと書いたことがある。
その「日本産のワインの解禁」というのが、11月3日。昨日のことだ。正確には「山梨産の甲州種で作ったワイン」の解禁日という極めて限定された品種での解禁日ではあるのだが、それでもお祭りはお祭り。本場の山梨県ではもちろん、首都である東京でも山梨ワイン解禁にちなんだお祭りが開催されている。それが日比谷公園で毎年開催されている「山梨ヌーヴォー祭り」だ。
それをなんとかするためなのかどうか、今年の山梨ヌーボー祭りは、入場料が昨年までの1,000円から2,000円へとUPされた。これ以上広い空間を都心で確保するというのも難しいものがあるし、スタッフ人員を増やすというのも無理があるので、まあ妥当な判断だったと言えるんじゃないだろうか。その効果があって、昨年に比べればまだマシなレベルの人出にとどまった。
とどまりはしたのだが…。「とんでもない人ごみ」という点では対して変わらなかったりする。山梨県内にある36個のワイナリーが出展していて、一つのワイナリーに付き1種あるいは2種のワインを試飲用として提供。入場料を払ったお客は試飲用のグラスを手渡され、それを持ってワイナリーの試飲ブースの前に並んでグラスにワインを注いでもらうという手順なのだが、どのブースにも数十人レベルの長蛇の列ができてしまい、いったい今自分が並んでいるのがどの列なのかすらはっきりしないようなありさま。ようやく先頭までたどり着いてワインを注いでもらっても、後ろに何十人も待っているのだからゆっくりと今年のワインについてお伺いすることもできず、すぐにその場を立ち去らないとならない。
このイベントに慣れている集団などは、まず会場内の開いているスペースにシートなどを広げて基地を作り、そこから人数分(6人グループだったら6つ)の試飲用ワイングラスを下っ端メンバーに持たせて列に並ばせ、注いでもらったグラスを基地まで持ってこさせてゆっくりと楽しむ、気に入ったワインがあったら購入し(物販スペースもある)、その場で栓を抜いてみんなで飲む…みたいなやり方をしているのだが、今年あたりはもうそういうことをする連中の数も限界レベルにまで増えていて、シートを敷くスペースが埋め尽くされていて移動すらおぼつかないような状態になっていた。
「お祭り」という点では十分以上にお祭りになっている。たった4回なれど、ここまで定着し大勢の集客が見込めるイベントなんかそうはないだろう。ただ、ゆっくりとワインを楽しむってことをしたかったら、電車賃を使ってでも山梨まで行ったほうがいいかもしれないなあ、とつくづく感じる一日だった。