以上が、おおまかな経緯である。
ここで、文中に出てきた細かい数字を無視してしまうと、「改造エアガン」と「デジコン製品」と「自主規制対応エアガン」との違いが見えなくなってしまう。多くの報道では、わざとなのか無意識なのか、その違いを無視しそれらが混同されてしまうようなやりかたがされているので注意が必要である。
わかりやすく、図に書いて説明しよう。
実は、エアガン業界には、業界団体が2つある。デジコンに裁判で負けたASGKと、もう一つ、JASGという団体だ。JASGは、ASGKの2倍の0.8Jを自主規制値においている。2倍とはいっても十分にオモチャとして通用する程度の威力である。上の図において、白い部分が「問題なくオモチャ」、黒い部分は「オモチャとは言いづらいかも」という範囲だと考えて欲しい。その境界は線ではなく、かなり大きな幅がある。グラデーションによって、そのことを示している。
ASGKが裁判に訴えてまで排除しようとしたデジコン92Fは、実はもう1つの業界団体であるJASGの自主規制値よりも低いパワーしか持っていなかったことが分かるだろう。しかも、ASGK加盟メーカーの製品であっても、0.4Jという自主規制値をオーバーし、デジコン92Fに迫る、あるいは超えるパワーを持ったものはいくらでもあったのだ。
デジコン裁判の判決(東京地裁平成9年4月9日判決)を読むと、独占禁止法違反が成立した大きな理由の1つがそこにあったことが書かれている。分かりやすく表現すると、自分で相手より高いパワーの製品を売っておいて、「あそこの製品はパワーが高いから取り扱っちゃダメ」なんて言いぐさには正当性がない、と見なされたのである。
後にASGKは規約を改正、「競技専用」と銘打ったものに限り自主規制値をJASGと同じ0.8Jに引き上げた。一方、デジコンはより高パワーの「デジコン・ターゲット」の販売を始めたわけだが、これは両団体の自主規制値をオーバーしてはいたものの、かろうじて「オモチャ」の範囲には入る製品だった。
実際、ASGK加盟団体の製品でも、気温によってはデジコン・ターゲットに迫るパワーを(自主規制値をオーバーして)出してしまう製品は存在していた。ただ違ったのは、違法改造に対する対策である。
(つづく)
2011年9月追記
このエントリーを書いたのも随分と昔のことになった。その後、エアガンについては銃刀法にて威力の上限が定められ、その威力を超えるものは違法なものであり、超えないものは合法なものだと明確に区別されるようになった。それを受けて書いたのが下記エントリーだ。