一部、メルロやカベルネを使った赤ワインも製品ラインナップにはあるが、基本的に甲州種を使ったワインをメインに作っているところ。妙に達筆な毛筆体で書かれたラベルが特徴的で、ボトルがワインボトルでなければ日本酒かと思ってしまう。実際、ワイナリーとしての設立は1986年でそれ以前は日本酒を作っていたそうで、建物がやたらとレトロな日本家屋ばかり。いたずらに洋風に飾り立てるようなことをしないで、「日本酒の造り酒屋」な雰囲気をそのまま残しながら、そこで売ってるのはワイン、みたいなコンセプトになっている。
なぜかピンボケな写真になってしまったが、これが甲斐ワイナリーの本店?にあたる建物。今回のワインツーリズムには地元の高校でワイン造りを学んでいる高校生も参加しているとのことで、制服を着た高校生もちらほら見かけた。もちろん未成年なので飲酒は厳禁とのことで試飲も不可。「本当は家では飲んでたりするんでしょ?」とカマかけてみたけれど「いいえ、飲んでません」とキッパリ答えられてしまった。
ワイン貯蔵庫に使われている建物は築150年、となりにあるこのワインカフェ「古壷」も、元は江戸時代の土蔵を改装したもので、築200年とのこと。
案内をしてくれるのは、「甲斐ワイナリー」としては3代目の風間聡一郎さん。以前、新宿駅地下通路に貼りだされた「肉じゃがと一緒に、ぼくらの作ったワイン。どうすか?」のポスターで、ひとりカラシ色の作務衣を着ていて妙に目立っていたメガネの人だ。あのポスター以来、知らない人にもいきなり「あ、ドラゴンボールの人だ」とか呼ばれるようになったとか。
ブドウを絞ったり茎を取ったりする機械の前で、いろいろと説明してくれる風間さん。前回のマンズワインにあった巨大な設備はちょっと規格外で、このくらいの大きさが、勝沼にあるワイナリーの設備としては一般的な大きさだ。
作業場のそこかしこには、他のワイナリーでもよく見かける機械の他にも、全く見かけない「なんだこりゃ?」としか思えない機械や道具などが点在して いる。ここのワイナリーでは参加者にも妙にマニアックな人が多くて、「すいません、ここにあるコレって何に使う機械ですか?」とか、「この2つって両方と もブドウを絞る機械ですよね、なんで2つあるんですか?」とか(この質問をしたのは自分だったりする)、矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
正面にある銀色の機械、右にある黄色の機械、これらは両方とも「ブドウの果汁を絞る機械」。ただその絞り方が違って、正面のはまず筒の中にしぼんだ風船が入っていて、その風船と筒との間にブドウを入れ、後から風船に空気を入れて膨らますことでブドウを筒の外側の壁に押し付けて絞るというもの。右にあるのは「フランス製のバスラン」という機械(聞き違えがあるかも)で、「ブドウを壁が押しつぶす」ような形で絞るもの。風船方式のものは他のワイナリーでもよく見かけるものだが、風間さんによると「綺麗な果汁が採れるが、香りがいまいち」で、壁が押しつぶす形のものは「果汁の香りがいい」という特徴があるそうだ。
写真には取っていないが作業場の片隅に「ワインボトルに、手作業でコルクを差し込む道具」が置いてあった。参加者の一人がそれに気づき、「これって現役で使っているんですか? 自動でコルク挿す機械もあっちにありましたよね?」と質問した(なんでそこまで見てるんだよ…)。風間さんは苦笑しながら、「お客さんの中には、これを使って手作業でコルクを挿してくれって注文される方がいらっしゃるので…。実際、機械でやろうが手作業でやろうがなにか変わりがあるかって言われたら全然無いとしかいいようがないんですが、それでもそれを求めるお客さんがいる以上、応えられるものなら応えたいので」と回答してくれた。
ワイン貯蔵庫。暗い場所だったのでブレブレの写真になってしまった上、全体がまともに写っている写真がこれしかなかったのでやむなく。中央に写ってしまっているカップルの方、すいません。後ろ姿ですし構いませんよね?
作業場からさらに裏に行くと、二階建ての大きな木造の建物がある。これは以前は清酒を作っていた蔵なのだそうで、土の壁だとかそこらへんの構造のお陰で夏でも涼しいという特徴があり、現在はワインの貯蔵庫として使われている。納められているワインの数は(メモが間違っていなければ)152,000本。ただ地震対策とか全然してないので、「もし大きな地震が来たりしたら、ほぼ全滅でしょうねえ」と言っていた。
…3.11では、山梨県は比較的被害は少なかったとはいってもそれなりに大きく揺れたとのこと。大丈夫だったのだろうか…。
甲斐ワイナリーは、建物の美しさも作っているワインのクオリティも高く、そしてなにより規模がちょうどいい感じでワインツアーでは責任者が自ら詳しく突っ込んだところを話してくれるあたりが、「訪れて良かったーっ」って思えるワイナリーだ。ワインツーリズムで塩山方面をルートに組み込むなら、ぜひ訪れておきたい。