葛飾奥戸総合スポーツセンター・ライフル射撃場は、火曜と金曜が「ビームの日」になっています。普段は自分で許可を取った自分の銃以外は持ち込めないし撃てないのですが、火曜と金曜だけは射場に備え付けの銃を借りて、誰でも射撃を体験したり練習したりすることができます。
「平日だけというのは、ちょっと行きづらい」というご意見を以前から頂いていまして、なんとか土日のどちらかもビームの日にできないかと交渉を重ねていたのですが、その交渉とは全然関係ないところからの声がかかって、いままでの苦労はなんだったのってくらいあっさりと、土曜もビームの日となりました。
※2024年9月から。8月まではこれまでどおり火・金だけがビーム利用日です
朝の9:00から夜の9:00まで、好きなときに来ていただいて、体育館入口の券売機で400円のチケットを購入していただくだけで最大2時間半、撃ち放題となります。
射場備え付けの貸出銃は、ビームライフル(最新式の小数点表示仕様)が5丁と、デジタルスポーツピストルが1丁です。デジタルスポーツピストルというのは、現在公式競技になっているビームピストルより以前に公式競技になっていたレーザーを使ったピストルシミュレーターで、現在はメーカーが活動を停止したため製造も販売も修理も行われていないものになります。「壊れて使えない」という理由で死蔵されていたのを私が発掘してトリガー調整して撃てるようにしました。
※というか正確に言うと、無茶苦茶なトリガー調整をしてあったせいでトリガー引いても撃てないような状況になっていたのをちゃんと調整しなおしただけです……。
今のビームピストルと違い、デジタルスポーツピストルの特徴は「後ろ半分は完全に実銃のエアピストルそのまんま」というところです。弾を発射する機構の部分だけをごっそりと取り除いて、レーザーシステムと交換してありますが、「手に持って、トリガーを引いて、撃発する」という部分については完全に実銃と同じです。
奥戸射場においてあるのは、ステイヤーLP10をベースとしたものです(当時の資料を見ると、銃砲店によってベースとなる銃は何種類かあったようです)。機関部側面にはほぼ消えかかっていますが、STEYRのメーカー名とLP10の機種名がプリントされていた痕跡が見えます。
トリガー固定部分のネジについては(前述の無茶苦茶なトリガー調整がされていたという理由もあって)何度も交換したようで、手に入りにくい六角ボルトではなくプラスネジに交換してあったりしますが、手に触れる部分のパーツそのものは実銃パーツのまま残されています。トリガーの引き味もLP10そのままです(シアが切れた瞬間にトリガーがほんの少し押し返してくる感覚なんかもそのまま)。
レバーをコッキングすると、内部でストライカー的なものがスプリングを圧縮しながら後退し、シアで支えられます。実銃には備わってるスタビライザー(反動軽減装置)ハウジングは単なる金属円柱に置き換わっているようです。空撃ち機構もオミットされています。
グリップやサイトは実銃そのままです。上下左右の調整については、書かれてる言葉がドイツ語なので、英語表記(UP/DOWN、L/R)に慣れた人だと戸惑うかもしれません。基本的にサイト調整はスタッフが行いますので、ここには手を触れないでください。
銃の前半分は、レーザーユニットに換装されています。レーザーによってターゲットと交信を行い、現在の照準場所をPC画面に表示し、撃発時の衝撃を感知してその瞬間(あるいは数秒後)に銃口が指し示していた位置を「着弾点」として記録する、という仕組みです。なにせ古いシステムなので古いPCにしか対応しておらず、今使ってるWindows2000のノートPCが壊れたら、もうデジタルピストルとして使い続けるのは難しくなるでしょう。
「無課金おじさんと同じ銃」と書いたのは、この映像がネタ元になっています。現在(パリ五輪)では、無課金おじさんことユスフ・ディケチ選手はステイヤーEvo10Eを使用していましたが、大人気となってからISSFがX(旧Twitter)に投稿したこの映像、2011年のワールドカップ決勝の模様だと思わますが、ここではステイヤーLP10を使用しているのです。
動画より、銃がアップになるところをキャプチャしてみました。銃の後ろ半分の形状が、上の方に掲載した奥戸射場にあるデジタルピストルと全く同一なのがわかると思います。
ついでに動画より、ユスフ・ディケチ選手が撃ってるところ。ファイナルのルールが今と違って、ファイナルでの点数が本射点数に加算される形式だったころの映像ですね。
とまあこんなふうに、13年前の若きユスフ・ディケチ選手が使っていたのと、ほぼ同じピストルが奥戸射場には備え付けになっていまして、誰でも400円のチケット購入するだけで撃てるという次第です。
ビーム利用日は火・金・土の週3日です。火・金もちゃんとピストルは撃てるよう用意しますけれど、担当者がピストルについてはそれほど詳しくないため、あまり詳しい指導ができません。
土曜日であれば私(池上)が朝から夜まで管理として詰めてますので、狙い方や撃ち方、上達するための日常の練習方法などについてしっかりとした指導が可能です。オリンピックを見て「エアピストルやってみたい!」というやる気に満ちあふれている方、ぜひ奥戸射場まで!
※注:ここに書かれてる情報は、2024年9月以降から適用されます。2024年8月中はビーム利用日は火・金のみで、土曜日のビーム利用はできません。
実際に、奥戸でデジタルピストルを使って練習し、東京都のビーム射撃大会(レンタルのビームピストルがあります)に参加して、およそ考えうる範囲で最速のスピードで初段に合格して推薦の申請を出し、現在エアピストルの推薦待ちになっている方もいらっしゃいます(まさかあんなに早く初段に合格するとは思ってなかったのでこっちが驚きました……)。
日本でエアピストルを撃つというと、誰も彼もが「無理だ」「制限が厳しい」「難しい」「警察や自衛隊だけで民間人は持てない」みたいな、ネガティブなことばっかり言いますけれど、そんなことありません。ちゃんと理論に裏付けられた練習をすれば所持に必要な条件をクリアすること自体は、それほど極端に難しいわけではないのです。簡単とは言いませんが、「頑張ればなんとかなる」くらいは言っても大丈夫だと思います。
レッツトライ!