エアピストル(Morini CM162E)オーバーホール(Part.1)

ここんところピストルの練習はほとんどがSCATTを使っての空撃ち練習か、壁に向かっての据銃練習ばかりになっていて、実際に弾を撃つ練習というのをあまりやらなくなってきました。実際に得られるもの、もっとはっきり書くと「上手くなってると実感できる度合い」というのが、圧倒的にSCATT練習>>>実射練習って感じなので、当然の成り行きとしてそうなります。

「時々は実際に弾を撃つ練習もしないとならないとな」と思い立って、射場で弾を込めて撃つというのはそれこそ大会の直前とかそういうときくらいになるわけですが……。先日の国体予選の直前(といっても1週間くらい前)、久々に実射練習をしようと思い、エアを充填したシリンダーを銃にネジこんだところ。

「シューゥゥゥッゥ……」という不吉な音が!

エア入れない状態でずっと放置してたせいもあるのかないのかわかりませんが、とにかく派手にエア漏れしちゃってます! 150気圧が数分で1気圧まで戻ってシリンダーがヒエヒエになってしまう勢いです。いくらなんでもこれじゃ試合に使えません!

ダメ元で銃砲店さんに電話かけてみましたが、「たくさん預かってる銃があるため順番待ちになるので、修理完了までは早くても1ヶ月半くらいはかかりますね~」とのこと。まあそうですよねって感じですが、当然のことながら大会には間に合いません。

こうなったら自力で修理するしかない! ということでいろいろやってみて、結果的になんとかなりましたという報告です。ちなみに試合の結果を先に書いときますと、国体予選は僅差で候補に入れませんでした残念。

まずは分解

グリップや、トリガーユニットや電子基盤などを外したりするくらいなら手持ちの工具ないし付属工具でなんとかなりますが、エアルート周りについては専用工具を別途買う必要があります。ラジオペンチとかそこらへんで代用できないかとちょっと頑張ってみましたが、「絶対に無理ですこれ以上力入れると壊れますやめてー」って感触が伝わってきたので早々に断念しました。

まずは専用工具を発注、それが届いて分解してエア漏れの元凶となっていると思われるパーツを特定、それと同じサイズの部品を購入して交換という順番になります。昔だったら大変な苦労をするところだったのでしょうが、今はAmazonやモノタロウがあるのでマウスクリック数回で完了です、注文してから届くまでも1~2日ってところなので1週間あれば十分です!

工具もパーツも揃った状態からの分解および修理手順を、順番に写真で紹介していきたいと思います。この記事が役に立つ人というのは全国でも私入れて数十人ってところかと思いますけれど、せっかく写真とか撮ったので。

まずはお約束、弾が入っていないことを確認した上でエアシリンダーを外し、銃を完全に安全な状態にします。

グリップを外します。グリップ後部、手のひらの中央あたりに開いてる穴と、ビーバーテイルっぽく後部に出っ張ってるところの最後端の2箇所にある六角ボルトを付属工具で外します。

グリップを固定している六角ボルトを2本外した状態で、グリップを斜め下の後ろ方向に引っ張ると、グリップが内部の基盤ごとぞろっと抜けます。ここまでは日常メンテでもよくやる分解です。

ここから未知の領域に入っていきます。まずトリガーガードを外します。トリガーガードの前方を止めている六角ボルトを外します。六角レンチを入れやすいようにトリガーガードにちゃんと穴が開いているので安心です。

トリガーガードを外したところです。

次にトリガーおよびソレノイドのユニットを外します。後方にあるピンをピンポンチを使って抜きます。それほどキツくありません。ハンマー使わず手でぐっと押し込むだけで抜けるくらいです。

トリガーガードおよび、トリガー&ソレノイドのユニットを銃から外したところです。

ここで注意点が。銃を下側から覗くと、長方形の金属プレートが入っているのが見えます(写真で赤い線で囲ったパーツ。パーツ名は「plate 162045」です)。これ、特になにかで固定されてるわけじゃないので簡単にぽろっと落っこちてきます。作業途中に落としてどっかになくしちゃったり、なくさないまでも「どういう向きで入っていたのかわからなくなる」なんてことになるとなかなかに悲惨ですので、この段階で外しておきましょう。

プレートを外したところです。このプレート、レギュレーターに圧力がかかると飛び出る突起の動きをコッキングレバーの横についているフック(パーツ名は「162039T Safety lever compl.」)に伝えるものです。このフック、圧力が減ってくるとコッキングレバーに引っかかってロックしコッキングできないように、圧力が十分に高いと外れてコッキングできるようにするという仕組みになっています。

次はレギュレーターを銃本体から外す段階にはいります。いよいよ専用工具の出番です。フックレンチという工具です。「ピン爪 フックレンチ ナット外径30~32mmピン径4mm」を購入すればOKです。刻印を見る限りではこれドイツ製みたいですね。

銃を万力で固定し(直接掴むのはアレなんで細く切ったベニヤ板を間に入れてます)、フックレンチをレギュレーターの穴に引っ掛け、反時計回りにまわして外します。フックレンチ無しで手持ち工具で外そうとしたときには「絶対無理だわコレ」ってくらいにガッチリと組み付けられてたんですが、専用工具を使ったらあっさりポコっと外れました。

不具合の原因をさっそく発見

外したレギュレーターです。写真右側ネジの根本あたりに小さい穴が開いていて、そこから銃の機関部へとエアが流れるルートがあります。右に突き出してる円錐形の突起、これが「プレート」を押して「セーフティレバー」を動かすパーツです。エアを充填したシリンダーを装着したり外したりするたびに、この円錐形突起が数ミリだけ出っ張ったり引っ込んだりするわけですね。

前後に動くパーツですから、銃本体には当然そこに動くための穴が開いているわけです。穴の片方には(レギュレーターを通った後の)エアが高圧でかかっていますから、その高圧エアが抜けないようにするためのエアシール(162010A)が円錐形突起の根本にハマっています。これがもう完全に劣化していて、カチコチになってるばかりかヒビまで入っていて、ドライバーの先でつついたらボロボロに崩れて落ちてしまいました。これじゃエア漏れするわけです……というかエア漏れの原因、間違いなくこのシールの劣化ですね。

「Morini CM162E 162010A」で検索してみたところ、スペアパーツを販売しているサイトを発見。しかしドメインを見る限りではオランダのサイトっぽいので輸入なんかしてたら間に合いません。しかしそこにはOリングのサイズが「2.9 x 1.78 mm」であると書かれています。どちらが何の数字なのかは説明がありませんが現物と見比べれば、「2.9mm」が内径、「1.78mm」がリングの太さだということがわかります。

細かいパーツがあっさり見つかるいい時代

似たサイズのものを入手すればいいということでAmazonで検索してみたらあっさりとヒット。フッ素ゴムOリング 6.5mm外径 2.7mm内径 1.9mm幅 機械配管用 FKMシールガスケット グリーン 20個入りというのが使えそうです。他にもいろいろと使えそうなのはありますが、高圧ガスに耐えられるOリングというのはこういう緑色したやつだ、って知識がなんとなく記憶の端っこのほうに引っかかっていたのでこちらを選んだという次第です。20個セットで840円。

注文した翌日には配達完了。見比べれば確かにコレでOKっぽいです。色はちょっと違いますが。

Oリングを装着しようとしてみて初めて、この突起が円錐形をしている理由に気づきました。まず円錐の先っぽからOリングを差し込んで……

そのままスーっと差し込んでいけばポコンともともとあった場所に収まります。かんたん。

これでレギュレーターを元に戻し、グリップ類ももとどおりにすれば完了です。ただ、ボロボロになったOリングの破片が銃の中(レギュレーターからプレートに至る穴の中)に散らばっていてかなり汚くなっていましたので、それをアルコールつけた綿棒で拭き取ってエアダスターで吹き飛ばし、きれいにする必要がありました。

とまあ、こんな具合で修理完了です。Oリングはこの他にも使われていますが、とりあえずはこの一つ(162010A)を交換するだけでエア漏れはピタリと止まりました。一番劣化しやすい場所ってことなんでしょうか、交換するのにも専用工具を一つ購入する必要があるだけで、手順だけ見れば「誰でもできる簡単な作業」といっていいんじゃないかと思います。

似た症状でお困りの方、お声がけください

このOリング、20個セットなのであと19個あります。劣化して使えなくなるまでに10年かかったわけですから、20個あれば単純計算で200年は大丈夫ってことになりますね……ってニンゲンの方の寿命が先に来ますって!

というわけで、モリーニCM162Eのエア漏れで悩んでいる方いらっしゃいましたら、おそらくはコレ交換するだけで修理完了するパーツ(162010A)が私の手元に大量にありますので、お声がけください。私は銃砲店じゃないので「お預かりして修理する」とかできませんが、Oリング一個送るくらいだったら何の法律にも違反しません。専用工具が必要ということでしたらちょっと相談になりますが。

調べたところ、最新機種であるCM200Eもこのパーツ(162010A)は共通部品のようですので(というかCM200E方のマニュアルはOリングのサイズが全部書いてあるじゃん!親切だなあ!)、同様の症状がでたのなら同様の修理方法でなんとかなる可能性は高いですね。

ところで、銃に使われてるOリング(断面が四角のクワッドリングも1つあります)は、当然のことですがこの1つじゃありません。他にもいくつものOリングがあります。中には弾を込めて撃つ一連の操作をしても全く動かない固定されたリングもありますが、射撃時などに動くパーツに取り付けられた、あるいは動くパーツと接しているOリングもあります。それらのOリングも、きっとそれなりに劣化しているものと思われます。

なので、それらのOリングもせっかくなので交換してしまいたいと思います。調べたらeBayで「モリーニCM162E用のエアシールセット」を販売している人がいました。発送場所はカナダのようです。8個のOリングだけで送料含めたら1万円以上となかなかなお値段はしますけれど背に腹は代えられません。ということで購入、到着までは半月ほどかかります。「Part.2」では、162010A以外のOリングの交換、およびそのために必要な分解手順をお届けしたいと思います。

池上ヒロシ

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