人間の首は、構造的には真横にまで回るようにできているのだけれど、日常生活ではそんなことをする必要がないため年齢と共に可動範囲は少しずつ狭まっていき、前方の限られた範囲でしか回らないようになってしまう。横に伸ばした腕の先にある銃で射撃をしようとしても、首がそちらを向いてくれないのではサイトを見ることができない。
そこで妥協案として、腕をもっと前方に動かすという方法を取らざるをえないということになる。目で見ることができる範囲まで銃を動かしてくるというわけだ。肩関節の構造上、もっとも安定する場所からは外れてしまうことになるが、サイトが見れないのよりはマシだ。
腕を前方に動かすと、当然のことだけれど銃も動き、狙いをつけてる位置が左方向に移動する(右利きの場合)。そのままじゃ的に当たらないから、足の位置を変更して銃をターゲットの方向に向けることになる。腕を真横に近い位置に伸ばして狙うときは足は的に向かって一直線に近い形で並ぶインラインスタンス(パラレルスタンスともいう)になり、腕を前方に移動して狙うときは足は的に向かって斜めに並ぶオープンスタンスになる。
海外選手の射撃姿勢を見ても、ここらへんは人それぞれだ。年齢が高めの選手は腕をかなり前方に動かしている(射撃時には、身体がターゲット方向を向く)フォームになっている人が多く、年齢が低めの選手、あるいは子供のころから射撃に親しんでいる人が多い国の選手だと腕を真横に近い位置で保持している選手が多い。
なんでも、「ピストル射撃は、10代前半のころから始めたほうが大成しやすい」と言われているそうだ。その理由としてもっとも大きいのが、この首の角度の問題。まだ骨が固まる前の子供のころから、首を真横に回してサイトを覗き込むような姿勢に慣れていれば、腕の角度が骨格的に安定する位置に保持した状態で射撃が行えるわけで、首が回らないため妥協したフォームを強いられる他の選手に比べて有利になるというわけだ。
練習方法としては、まずは基本であるインラインスタンス(腕を真横に伸ばす撃ち方)を身につけ、どうしても首が回らないとか、長時間撃ってると首が疲れて眼がぼやけてくるとかいう問題が出てくるようなら、少しずつ角度を変えてオープンスタンスを試してみる、というやり方がいいだろう。
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