いきなりですが、ここでモリーニCM162EとステイヤーLP10を真横から見た画像を並べて見比べてみましょう。
上がモリーニ、下がステイヤーです。両方とも「ちょっと前」の機種ですが、基本的な形は今の最新機種(モリーニCM200/ステイヤーEvo10)とほとんど変わりません。
バレルシュラウド(四角いバレル覆い)があるかないかとか、シリンダー先端が銃口近くまで行ってるか少し引っ込んでるかとか、トリガーの角度とか調整できるようになってるかどうかみたいな、ちょっとした外観の違いを挙げていったらいくつも出てきますが、かなり根本的なところの違いといったら、リアサイトの位置になるんじゃないかと思います。
グリップの上、握ったときの親指の付け根あたりの真上にリアサイトがあるモリーニと、それよりずっと後ろにあるステイヤー。サイトレディウス(前後サイト間距離)は長いほうが精度が出るといいますから、より長いサイトレディウスを確保できてるステイヤーのほうが優れた設計に見えますが、ではなんでモリーニはこんな前の方にリアサイトを持ってきているのかという疑問も生じます。
ちょうどそれが話題になっていたトピックが、海外射撃掲示板TargetTalkにて見つかりましたので翻訳してみたのですが……。ちょっと残念な展開を見せてしまってあまり有益な情報は得られませんでした。これもまたネット掲示板のあり方の一つなのでしょうか。
エアピストルのリアサイトがついている前後位置について
引用元:TargetTalk : AP rear sight location question
- モリーニ162とステイヤーLP10を側面から見ると、リアサイトが付いている位置がかなり違うことがわかります。モリーニのリアサイトは手首の関節よりも前方にありますが、ステイヤーは手首の関節のほぼ真上にリアサイトがあるのです。
フロントサイトに目のピントを合わせたとすると、リアサイトが目に近ければ近いほどリアサイトがぼやけて見えることになります。そうすればノッチ(リアサイトの左右幅)は広く見えるようになります。私のモリーニ162では、フロント&リアサイトはほぼ同じ焦点で見えます(両方ともピントがあって見えます)。
この2つについて、どちらかはもう片方より優れているのでしょうか? それとも変わらないのでしょうか? どなたか、この件について考えたことはありますか? それとも誰かがこれについて考えているのですか、それとも私は気にするべき価値もない些細なことにこだわってるだけでしょうか?(Dr.リー/アメリカ)
- 誰かがかつて、リアサイトは手首の関節の真上にあるべきだと提案しました。そうすれば手首が動いても見かけ上で動くのはフロントサイトだけで、リアサイトはほとんど動いていないように見えるからというのが理由です。照準中に気を配る必要がある動きが1つ少なくなるわけです。2つよりも1つのボールをジャグリングする方が簡単です。
リアサイトが手首より前や後ろに位置していれば、手首が動いた時に前後サイトの両方が移動します。(ジェームスHH)
- なるほど、完全に同意です。私の実際の経験に全く合致します。Toz35のリアサイトもやや前方に取り付けられています。私はそれが好きです。(Dr.リー/アメリカ)
- 私にとっては、手首の関節が動くことよりも、腕全体が動いてしまうほうがずっと問題です。
フロントサイトの位置をそのままにリアサイトを後方へ移動すると、サイトレディウス(前後サイト間距離)が長くなりますが、これは私レベルの射撃技術の持ち主にとってはたいした違いではありません。
ノッチが広すぎるのでしたら幅を調整するか(多くのAPはその機能があります)、ブレードをノッチの狭いものと交換することができます(ゲイリーN/カリフォルニア)
- 確かに私は「ノッチ幅が広く見えるようになる」と書きましたが、私にとってメインとなっている問題はリアサイトのブレード全体に目のピントが合うかどうかです。モリーニ162はリアサイトが前方に配置されていることにより、リアサイトをかなりはっきりと見ることができます。実質的にフロントサイトとピントの合い具合は同じです。さらに後方(目の近く)にリアサイトが配置されている他の銃は、確かにサイトレディウスを増やしますが、リアサイトブレードはぼやけてしまい、モリーニのようにくっきりは見えません。私が求めているのは、一方が他方よりも好ましいと私が感じたのは間違っていないか、ということです。
これで私は自分の疑問を十分に説明できたと思います。メッセージを入力しても、必ずしもメッセージが伝わるとは限らないのですね……。(Dr.リー/アメリカ)
- 「フロントサイトに焦点を合わせ、リアサイトをぼやけた状態に」
一般的に基本とされているこのやり方ですが、実際には照明条件によってうまくいくときといかないときがあります。
屋外射場ならば、照明が明るい時(つまり、晴天)ならば目の瞳孔が収縮し、目に入る光の量を減らします。これにより、視覚的な被写界深度(DoF)が向上し、前後サイトの両方に目のピントが合うようになります。
暗い屋内射場では、瞳孔が開き、より多くの光が目に入るようになります。これにより、視覚的なDoFが低下し、両方の光景に焦点を合わせることができなくなります。(ゲイリーN/カリフォルニア)
訳注:「明るい屋外では被写界深度が増す、暗い屋内では逆」というのはたしかにその通りです。ただ、「目に入る光の量が屋外では減らされ、屋内ではより多くの光が目に入る」という表現は、目の瞳孔の収縮や拡大が起こらなかったときと比べればという意味でならその通りではありますが、この書き方だと誤解を招きかねないんじゃないかと心配になります。
- ゲイリーNさん、あなたが言っていることはまるで逆じゃないかと思います。(ジャーバー/バージニア州ノーフォーク)
訳注:ほらなんか読み間違えたっぽい人が出てきた!
- 私にはゲイリーN氏の言ってることは正しいように聞こえます。
瞳孔が収縮することは、アイリスシャッターの穴のサイズを小さくするのと同様の効果があるので、被写界深度が深くなります(ただし、目に届く光の量が少なくなるため、精度が低下する場合があります)。(デビッド・レヴィーン/イギリス、ライスリップ)
- 晴れた日に、私の所有しているキヤノンの名機A1を外に持ち出して、F値を1.4(絞り全開)にして撮影したとします。ゲイリーN氏の言ってることが正しいとすると、全てにピントが合った状態の写真が撮影できることになってしまいますが、そのとおりで間違いないですか?
晴れた日の屋外で射撃をする際、メガネにディオプター(※訳注:どうやらアイリスシャッターのことをディオプターと呼んでいるらしいことが後々わかります。そういう製品名の射撃用品があるのかもしれません)を装着すれば、フロントサイト、リアサイト、ターゲットのすべてがシャープに見えますが、それを外すとどれか1つにしかピントをあわせることができなくなります。屋内ではディオプターを使用しなくても視界ははっきりしています。この理由を説明してください。(ジャーバー/バージニア州ノーフォーク)
訳注:なんか雲行きが怪しくなってきた……。なぜかこの掲示板、光学的な話になると一歩も持論を譲らない人が複数出てきて、元々の質問の主旨とかほったらかしにして激論が始まることが多いんですよ。
- それは違います。穴のサイズを小さくすれば、よりピントが合いやすくなります。
「ディオプターを使う」と書かれてますが、あなたがおそらくある種のアイリスシャッターのようなものを指してそう呼んでいるのではないかと思います。あなたが説明しているとおり、それは穴を小さくすることでよりピントがあう範囲を広くすることができます。(デビッド・レヴィーン/イギリス、ライスリップ)
- デビッドさんへ
私が言おうとしているのは、
使用しているもの(アイリス、視度、眼鏡など)に 関係なく、晴天の屋外でフロントサイトに目のピントを合わせて射撃をすると、ターゲットがややぼやけます。はるかに暗い屋内レンジでは、ターゲットは非常にシャープです。つまり、光が少ないほどDOFが大きくなるということです。(ジャーバー/バージニア州ノーフォーク)
訳注:いやいやそれはさすがにおかしい
- プロの写真家として、私は安全に「ジャーバーさん、あなたが言ってることは完全に事実と正反対です」と言わざるをえません。(ローバー/アイダホパンハンドル)
- つまり、大口径(小さなFストップ)を使用すると、すべてがシャープにフォーカスされるということですか?(ジャーバー/バージニア州ノーフォーク)
- ローバー氏は、「小さな絞り=大きなf値」では被写界深度が増え、よりピントが合いやすくなるということを言っているんだと思います。そしてそれは、私が言っていることと同じです。(デビッド・レヴィーン/イギリス、ライスリップ)
- だから私も最初からそう言ってます!! 光が少なければ、画像は鮮明になるんです!!! けれど、ゲイリーN氏はこんなことを言ってます。明らかに間違ってますよね!?
>暗い屋内射場では、瞳孔が開き、より多くの光が目に入るようになります。これにより、視覚的なDoFが低下し、両方の光景に焦点を合わせることができなくなります
(ジャーバー/バージニア州ノーフォーク)
訳注:ゲイリーN氏の書き方が誤解を招きやすいものだったのは確かですが……。F値を大きくする(絞りを小さくする)ことで被写界深度が増してピントが合いやすくなるのは、絞りを小さくしたからそうなるのであって、光を少なくした(暗くした)からではないのだけれど、この人は「より絞って暗くすれば画像は鮮明になる=暗い環境のほうがピントは合いやすいんだ」って勘違いしてしまってるっぽいですね。
- デビッドは、「アイリスの穴のサイズを小さくする」と述べました。カメラでいうならば、レンズをf / 1.4(完全に開いた状態)ではなく、f / 16(完全に閉じた状態)に設定するようなものです。
小さいアイリスサイズ=大きいf /ストップ数。
より大きな直径のアイリスサイズ=より小さなf /ストップ数。
F値は計算によって導かれる数値であり、何らかのもの(焦点距離や絞りの直径など)を示す絶対的な数値ではありません。
f / stopは、「レンズの焦点距離/開口部の直径= f /ストップ数」によって導かれます。
50mmレンズ/35.7mm開口部= f/ 1.4
50mmレンズ/3.1mm開口部= f / 16
ご覧のとおり、開口部の直径を小さくすると、F値が増加します。
絞りのサイズを小さくすると、DoFが増加します。(F値が大きい)
(ゲイリーN/カリフォルニア)
- そんなこと知ってる!!!!!!!
私をからかってるのか!!!!?
(ジャーバー/バージニア州ノーフォーク)
- >晴天の屋外でフロントサイトに目のピントを合わせて射撃をすると、ターゲットがややぼやけます。はるかに暗い屋内レンジでは、ターゲットは非常にシャープです。つまり、光が少ないほどDOFが大きくなるということです。
眼球が持つなんらかの障害がもたらす効果ではないかと思います。明るい光による緊張や過負荷があるのでは? サングラスをかけてみるというのはどうでしょうか?
光の量がDOFに影響を与えることはありません。それはアイリスのサイズによって決定されます。
ところで、それは実際には「見かけの被写界深度」であり、焦点が合っていないことを伝えることができないことによって作成された幻想です。光学システムは、1つの距離でのみ「焦点を合わせる」ことができます。
アイリスを閉じることによって起きる弊害もあります。回折によるぼやけです。絞りすぎるとリアサイト周辺に蜘蛛の巣のようなにじみが生じます。とにかく、カメラレンズのテスト結果を見ると、極端にF値を大きくした状態では最大のシャープネスを確認することはできませんし、F値を下げた(絞りを開放した)状態でもだめです。(ハイレフト)
- ジェームスHHの返信に感謝します。
他のすべての人に、私の投稿を理解せず、スレッドを乗っ取ってくれてありがとう。(Dr.リー/アメリカ)
いやもうほんとに。
分からずやさんが一人登場して暴れまくったおかげで元々の質問がどっかいっちゃって。非常に興味のある話題だっただけに残念トピックになってしまいました。
最初の方で述べられていた、「手首の上にリアサイトがあれば、手首の角度が不安定なときに、動くサイトはフロントサイトだけでリアサイトは動かない(支点である手首関節の真上にあるから)。それは照準中に気を配らなければならない要素が一つ減ることになる」ってのはどのくらい本当なんでしょうね?
こちらはモリーニCM162Eを実際に手に持って構えてるところです。グリップとかフロントサイトベースとかいろいろ手が入ってますが。(撮影:2017年1月・東日本冬季 in 石巻)
こちらはステイヤーLP10です。モリーニに比べるとリアサイトがずいぶんと後ろ寄り、言い換えると「射手に近い位置」にあることがわかります。(撮影:2017年1月・東日本冬季 in 石巻)
両方を試してみないとなんともわからない、日本だとそれが難しいからこれ以上は書けない……ってのが今までの定番フレーズでした。けれど、今は違う!(ギュッ)ステイヤーLP10ベースのデジタルピストルが奥戸にあり、自前のモリーニCM162と撃ち比べることが可能になっています。というか、火曜日はたいていLP10ベースのデジタルピストルで一日中練習しています。
その上で言いますと、たしかにLP10はトリガーフィーリングもグリップも申し分ないのですが、「なんか狙いにくい」というか、身体の力はいい感じに抜けてるのにサイトがスーッと止まる感じがなかなかつかみにくいってのはあります。モリーニだと、うまい具合に身体のバランスが取れたときは実に綺麗にサイトが止まるのに。
これは単に自分がモリーニの方に慣れているからってだけなのか、「モリーニのほうがリアサイトが揺れにくい」という、このやりとりの最初の方で書かれてる内容が事実なのか、そこまではさすがに判断は難しいのですが……。少なくても自分の感覚では、「なんかモリーニのほうが止まる」ってのはたしかにあります。理由がわからずモヤモヤしてたのですが、もし本当にリアサイト位置のせいでその現象が起きてるんだとしたら面白いですね!