ピストル射撃のインド映画「グッドラックサキ」、ついに公開?

一番最初にその映画のことを知ったのは、2021年の3月のこと。ちょうど1年前になります。なにげなくピストル射撃関連のワードでWeb検索してたところ、エアピストル射撃を題材にしたインド映画が公開されるとのニュースが目に留まりました。

インド映画つったら大勢で踊りまくるハデハデな演出が人気です。射撃競技つったら試合でもじーっと突っ立ってて時々パシンパシンと音がするだけという地味極まりない見た目で不人気です。水と油どころじゃない全く正反対の要素をもったこの2つをどうやって融合させるのか? やっぱりピストル射撃しながら大勢で踊ったりするのか!?

最初はTwitterで公開された画像のとおり2021年6月の公開予定だったのですが、同時期に世界中で勃発した新型コロナウイルス感染症による影響(とくにインドは酷かった)で映画館みたいな大勢が集まる場所のほとんどは閉鎖され、映画の公開は伸び伸びになっていました。いったいいつ公開になるんだろう、そもそも日本で上映されたりするんだろうかと、もともと全く詳しくないインド映画界隈のWebサイトを翻訳ソフトに通しながらウォッチを続けてました。オンライン配信だけでの公開になるかもみたいな話が入ってきたこともあります。

それが、ようやく今年の2月に公開になったそうです。

※一ヶ月遅れでの紹介になってしまったのは、ここ1ヶ月ほど確定申告にかかりっきりで情報収集を怠っていたせいです――。

リリースによると「240を超える国と地域でAmazonプライムビデオで独占的に初公開されます。2月12日から配信開始です」とあります。セリフはテルグ語、マヤラーラム語、タミル語の3言語とのこと。慌てて(日本の)AmazonPrimeを検索してみましたが該当はなし。日本語字幕がついた状態でAmazonJapanのPrimeビデオに追加されるのは、まだ先の話になるのかもしれません。

リリースに載っているストーリーを要約するとこんな感じです。

とある田舎町に住んでいるSakhi Mamar(Keerth Sureshが演じる)は、他の村人から「悪運のサキ」と呼ばれている。彼女がいる場所や通る場所では次々に不運が巻き起こるからだ。その街に突然、軍の大佐が「インドを代表する有望なピストル射手」を探しにやってくる。天才的な射撃の才能を示したサキは大佐の指導を受け、その才能を開花させていく――

ちょっと不遇な状況にあった若者が、普通だったら体験することすらないドマイナーなスポーツにおいて際立った才能を発揮するというのは、超が付く王道展開というか、日本のスポ根ものとしては「その手の話」だけで図書館の一部屋が埋まるんじゃないかってくらいの定番ですね。定番ってのは「ありがち」っていうマイナス面もありますが、面白くて間違いがないというプラス面もあります。というか面白くて間違いがないからこそ定番として何度も(ちょっとずつ題材を変えながらも)作り続けられているわけです。

とはいえ、「どんなスポーツもネタにされてないものはない」とまで言われる日本のマンガ・アニメですら、エアピストル射撃競技を専門的に扱ったスポ根ものとなるとさすがに思い当たりません。ピストルに限らずライフル射撃全般まで話を広げれば少しはあるのですが……。そんな定番にして前人未到のジャンルの作品を、人気急上昇中のインド映画が作ったというのだから、そりゃもう期待は高まるしかないってものです。

現時点ではAmazonPrime公式Youtubeで公開されているオフィシャルトレイラーが、最も内容を詳しく見ることができる映像ソースになります。なので本エントリーではそのトレイラー映像をネタ元にしながら「どんな映画なんだろう」って想像を膨らませてみたいと思います。


※以下、画像は全てトレイラーからの引用です
「悪運のサキ」と呼ばれている……なんてリリース文には書かれていますが、だからといって村の中で迫害されているとかそんな様子はなく、自分のせいで周囲に不運が訪れていようがなんだろうが、そんなの関係なく飄々と生きてる少女――って感じの描写がありますね。「あたしのせいで幸運が逃げるっていうなら、あなたがここから去ればいい」って啖呵を切るシーンがトレイラーにはあります。
とか思ってたら、「大佐」がいきなりボロボロの村の中に近代的な射撃場をオープンします。トレイラーとはいえ急展開にもほどがある。
3射座しかないとはいえ自動標的交換機付き! 横の壁がガラス張りってのはどうなの、窓から見える家の人って日常的に銃口向けられる様子を見ることになるのでは!?
「自分は国を代表する射撃選手を育てるためにここに来た」とか言う大佐の呼びかけに応じて村の若者が射撃場でエアピストルを撃つわけですが……。生まれてはじめてピストル撃つんだから当然ですが、まあこんな有様になるのも仕方ない話です。なに考えてるんだこの大佐。
で、それとは全く関係なく、村の演劇で主役を張ってるイケメンがいまして、サキの幼馴染なのか恋人なのかはわかりませんがそいつが「女性は候補選手にしないのか?」って大佐に詰め寄ります。「それは考えてない」とにべもなく断る大佐に「ぜひ見てもらいたい才能があるんだ!」って強く推薦したのが……
サキというわけです。これは「フロントサイトがこれ、リアサイトがこれ、この2つを合わせて……」という、初めてピストル撃つ人に対してお約束の指導をしているシーンです。こんなに強く推薦するからには、事前に「射撃競技に関する才能の何らかの片鱗を見せる」みたいな伏線シーンがあったりするんでしょう。
初めて撃った一発目からいきなり的紙に命中したんで驚く大佐、ドヤ顔をするイケメン。どんどん中心に集まっていくのを見た大佐が「本当に射撃の経験が無いのか? 嘘をついてるんじゃないか?」って言ってしまったところ、「私が嘘つきに見えるの? さよなら」っていきなり帰りそうになるサキ、慌ててそれを止めるイケメン。基本的にはこの映画、コメディのようです。
といっても最初っから熱心に射撃競技に取り組むわけじゃなく、練習中に横で見てるイケメンの方にふざけて銃口を向けたり……っておいコラあぶねえ! コレ書くの2回目ですが、横の壁がガラス張りってのはどうなの。
ちょっと真面目な要素もあるようです。これは「なんで女と一緒に練習しなきゃならないんだ」って文句を言うチームメイトに対して、大佐が「この国では、女性は社会にあるたくさんの壁と戦い続けることを強いられている。だが我々が目指す世界にはそんな壁はない」って言い諭すシーン。
ついにでかい大会に参加することになって大きな射撃場につれてこられて、「ひえええ」ってなってるサキ。
試合前にコーチ(大佐)がサキに激を入れるシーン。最初に公開された数秒間のトレイラーにもあったけれど、その時は何を言ってるのかわかりませんでした。今回のオフィシャルトレイラーでは英語字幕がつきました。だいたい下記のような感じのようです。

「我々が慣れている(親しんでいる)ものは?」
「勝利!」

「幸運は……」
「ない!(そんなものには期待しない、って意味かな)」

「運命は……」
「手の中に!」

「良し!!」

よいよ試合開始……というところでトレイラーはここまで。この画像見てて気づいたけれど射座の番号の並びが普通と逆じゃね? インドではこうなのか?

いきなり大佐がやってきて村の中に近代的な射撃場を作る……ってのはさすがにありえないとしても、インドにおいては射撃スポーツは広く親しまれている盛んなスポーツである、ってのは本当のことのようです。小さい村にも手作りの射撃場があって、女性も男性も、老人も子供も、別け隔てなく競技に取り組んでる様子というのがドキュメンタリーなどで見ることができます。お金があるわけじゃないので、古い壊れたエアピストルを使って据銃練習をし、数少ないちゃんと動くエアピストルで実射練習をするなんてことが行われていたり。

つまりは、「田舎の少女が、エアピストル射撃に稀有な才能を発揮して羽ばたいていく」ってのは、日本人的な感覚でいうとほぼファンタジーな話になってしまいますが、インドにおいては「珍しいというわけでもなく、実際にあり得る話」として受け止められているんじゃないかと思われます。

はてさてこの映画、実際にはどんな映画なのでしょうか。エアピストル射撃に関する要素は実はちょっとだけで、ほとんどコメディだったりする可能性もあります(ほら、映画のトレイラーって信用ならないから……)。予想外にガチなスポ根ものだったりすると嬉しいんですが、まあそれは期待しちゃダメですよね。「ヒロインの女の子がかわいい!」だけで押し通す映画って可能性もあります。主演のKeerth Sureshって、物凄く人気がある女優とのこと。「キールティちゃん可愛すぎ!」ってだけで満足できる、そういう類の映画かもしれないって覚悟で見に行ったほうが失望せずに済むかも?


これまで書いた射撃入門記事や、受講した射撃講習会・メンタルトレーニング講座で得た知識などをまとめて、「ピストル射撃入門」としてKDP(Amazonの電子書籍)として販売しています。

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池上ヒロシ

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