ピストル射撃用シューズについて

「あれ、前にも似たような記事なかったか?」って思った方へ。昔から当ブログを愛読いただきありがとうございます。2017年の年末ごろに、「靴でスコアは買えるか?」って題名で、やっぱりピストル射撃用のシューズについての海外反応記事を投稿したことがあります。

その時にも書いてますが、結論だけ書いてしまえば、「たいして効果なんかない」「普段の練習のほうがずっと大事」で終わりになってしまいます。道具関連の話題ってのはどれも結論はそうなるというか、それいったらおしまいというか。

けれど定期的に出てくるのもまた、道具関連の話題の特徴です。「どれ使ったって同じだよ」と言われつつも、時代の移り変わりによって微妙におすすめ製品が変わってきたりするのもお約束です。おすすめが変わるってことは、以前薦めてたのより今回薦めてるヤツのほうが良いってみんな考えてる証拠であり、ということは実は「どれ使っても同じわけじゃない」ってことになるんじゃないかって気もしますが……。

2017年の記事では、韓国のピストル射撃勢が履いているウエイトリフティング用のシューズのことも紹介してました。この記事がきっかけってわけじゃなくそれよりちょっと以前からウエイトリフティング用シューズについては話題になってまして、韓国選手のマネして購入する射手が大勢発生し、日本のみならず世界的にちょっとしたブームになっていたそうです。

私もブームに乗っかって(?)、ウエイトリフティング用シューズを使っていたことがあります。inov-8(イノヴェイト)というメーカーのFLATLIFT 400 BOAという靴です。

※写真真は販売ページから引用

カカト部分が高くなっていること、カカト周りが硬質プラスチックでガッチリと固められていること、靴底がフラットで床面に貼り付くようなデザインになっていることなど、「確かにこれは射撃用として優れてるわ」って思える靴ではあります。足の甲部分を覆うバンドの締め付け具合が、ダイヤルをチキチキチキって回すことでほぼ無段階に調節可能である点なんかも機能的に優れていた点ですね。

前世代の製品になるので、現在は全く同じものを入手するのは難しいようですが、より進化した新型ならば販売しているようです。

Inov-8 メンズ FastLift 370 BOA クロストレーニングシューズ

ただ実際に射撃するときに使ってみると、カカトの後ろ側の上に飛び出してる硬い部分がアキレス腱に食い込んでくる、つまり「少し前傾姿勢になることを強いられる」ようなデザインになっているのがどうにも気になってきました。ウエイトリフティングの姿勢を考えれば当然のことではあります。食い込みを和らげるため、ノコギリで切れ目をいれて前傾部分を立たせようと手を入れてみたりはしたのですが、なかなか解消できませんでした。

ただ、それとは別の理由で、現在はこの靴は使っていません。コロナ騒ぎの影響で練習は基本的に自宅でのSCATT練がメインとなりました。射撃場まででかけていって撃つのは月に一回か二回って感じです。自宅練習では裸足(靴下)での練習になってしまいがちだったので、久々に射撃場でこの靴を履いて撃つと、違和感が凄いんです!

なら練習時にもちゃんと射撃用の靴を履けよって話になるのですが、面倒くさいんですよ。いちいち大げさな靴に足をつっこんでヒモの締め付け具合を調整して何度か踏み固めてなじませてから撃ち始める……なんてのが必須になると、「面倒なんで今日は自宅練はいいか」みたいな心になってしまったりして、これじゃ靴が練習の妨げになってしまってるようなもんです。

そんなときにTwitterのタイムラインに流れてきたのが、「マルゴ」というメーカーの足袋型シューズでした。

ある世界トップレベルのピストル射手が「おすすめしてる」ということで話題になっていたのです。販売ページを見るとこんなことが書いてあります。

本来、足の指は、それぞれ機能をもち、全く異なる動きをしています。しかし、一般的なシューズではその動きにあわせることができず、足本来の機能は妨げられてしまいます。hitoeは、足本来の力を引き出すことに着目して誕生したプロダクトです。つま先が分かれた特徴的な足袋型フォルムは、親指と人差指に自由な動きをもたらし、地面をしっかりと掴む足指本来の動きを可能にします。

良さそうですね!ピストル射撃向きっぽくないですか!?ウエイトリフティング用のシューズと比べてかさばらないから部屋の中のそこらへんに置いておけるし、脱いだり履いたりも楽そうだし!(ここ重要)

というわけで早速購入してみたのですが……残念ながら私には合いませんでした。靴底のデザインの影響で足の指が完全に浮いた状態になってしまって、「しっかりと床面に接地する」のとは程遠い形になってしまったのです。足裏の筋肉群を鍛えるためのランニングシューズとしては優秀なのかもしれませんが、これじゃピストル射撃用シューズとしては使い物にはなりません(Amazonの返品はこういう理由でも受け付けてくれるのがありがたいです)。

次に目をつけたのが、同じ「マルゴ」の足袋型シューズでも、「快適さ」をウリとした「たびりら」という靴でした。外反母趾矯正がメイン効果としてアピールされてますが、別に外反母趾の人でないと履いちゃいけないってわけでもなさそうです。

こっちは正解でした! 足の指が強制的に全部総動員されて床面をしっかりと掴む形に広げられ、足を全部使って床面に根を張る、そんな感覚で射撃をすることができます。なによりかさばらなくて荷物が小さくて済むのと、すぐに履けるのがいいです(これ重要!)。

という具合で、現在はいわゆる射撃専用シューズとして販売されている、足裏が真っ平らで、足をガッチリと締め付けて固定するタイプのシューズとは全く方向性が逆の、裸足と同じような感覚で撃てる柔らかいシューズを使っている次第です。欠点もあります――足裏が薄いので冷たい床(具体的には長瀞の50mレンジ)に長時間立っていると足裏が凍るように冷たくなってしまうのはつらいですね。ホットカーペット敷いて撃ちたくなるくらいです(違反になりますが)。

さて、世間一般というか射撃業界全般では、「ピストル射撃用シューズ」の今の流行りはどんな感じなんでしょう。韓国から始まったウエイトリフティング用シューズの一大ブームは収まりを見せているようです(今でも使い続けてる人もいるようです。特徴を見れば向いてないわけはないので悪い選択ってわけじゃないはず)。コラミやAHGから出ているピストル射撃専用のシューズもちらほら見ます。ただ、こちらはルールである程度以上に靴底が柔らかくないと違反になる関係で、「ベニヤ板に靴が縫い付けてある」みたいな極端に靴底が硬くて平らなシューズが使えなくなり、「だったら普通の靴でも変わらないし……」ってなっちゃったピストルシューターも多いみたいです。

次回は、海外射撃BBSであるTargetTalkに立っていた「ピストル射撃用シューズって、意味あるの?」ってスレッドから抜粋して、世界の潮流を覗いてみたいと思います。


これまで書いた射撃入門記事や、受講した射撃講習会・メンタルトレーニング講座で得た知識などをまとめて、「ピストル射撃入門」としてKDP(Amazonの電子書籍)として販売しています。

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池上ヒロシ

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