首都圏唯一の民間実銃射撃場、J-Magicに行ってきました


埼玉県川口市にオープンしたJ-Magic Shooting Range。実銃である空気銃を撃つ、正真正銘の実銃射撃場です。

地方の方にいくと民間の射撃場はいくつか存在していますが、首都圏ではここが唯一になります。かつて存在した、新宿歌舞伎町のコマ劇場広場に隣接する新宿射撃場を覚えている方はいらっしゃいますでしょうか? あそこがなくなって以来の民間射撃場だそうです。

オープンしたのは2020年の8月。まだ半年とちょっとしか経ってない新しい射撃場ですね。今回、日本ライフル射撃協会主催の全国通信ライフル射撃大会の会場の一つとなりまして、長瀞射撃場に比べればずいぶんと近い(あと参加費も安い)ということもあってエントリーしてみました。結果は(なんかここんところぜんぜんだめで)散々なもんだったので横に置いといて、せっかくなので簡単に取材してきました。「話には聞いていたのだけれど、どういうところなんだろう……?」って思っていた方に参考になれば。


外観です。まあなんというか、派手な看板が出ているわけでもなく、普通のビルです。この1Fが射撃場、2Fが事務所、3Fより上は住居(選手の寮・後ほど詳しく説明します)となっています。


1Fはもともと広い駐車場だったようなのですが、そこを壁で区切って射撃場としています。駐車スペースは手前に2台ほどあり、普段は射撃場利用者が使える駐車場となっています。今回はイベント開催ということで、車で来た方は近隣のコインパーキングを使ってください、ということになっていました。

射場の横には休憩室が設けられています。水道と電子レンジ、空気詰めるためのポンプ、あと机とか椅子が少し。

射撃場の中です(冒頭に掲載している写真と同じです)。人がいなくなったタイミングを見計らってしっかり撮ろうと思っていたのですがうまくタイミングが合わず、試合開始前でわたわたしているところで大急ぎで撮影したものなんでちょっとアレな感じですがご勘弁。全部で射座は6つ、電子標的ではなく紙標的ですが全射座に自動標的交換機が備え付けられています。コロナ対策で射座と射座の間はビニールシートで区切られています。


射座の後ろの壁には日ラの公認射撃場であることを示す認定証が飾られています。この認定証がないと今回みたいな日ラ公式大会は開催できないのだそうです。あと、あきゅらぼの射撃用品チラシを持っていったのですが、早速掲示していただけました!ありがとうございます!

他には利用料金の掲示もありますね。射撃場の利用料金は1時間1,000円、延長1時間につき500円となっています。公営の射撃場に比べれば高くなりますが、そりゃまあ当然であって仕方のないことです。弾や標的などの消耗品の価格も書かれています。下の方には、銃や荷物の預かり料金もありますね。自宅ではなくこの射撃場に銃を預けておくということも可能なわけです。

J-Magic Shooting Range社長の小山将太郎(@7th_klms)さんにお話を伺いました。雑誌とか大きなニュースサイトに掲載する記事ではないこともあって、いきなり相当にぶっちゃけた質問からスタートです!


――いきなりこんな質問で、どうかカンベンして欲しいのですが……。この日本で民間の射撃場を運営しようだなんて、正直言って正気の沙汰ではないというか、商売としての勝ち筋が全く見えないとしか思えないのですが、なんでまたこんなことをしようと思ったのですか?

小山:自分は大学の射撃部でコーチをしているのですが、射撃コーチ一本で食べていくのは難しいのが実情です。この射撃場は、部活動の拠点となっています。1Fが射撃場で2Fが事務所ですが、3Fより上は射撃部員の寮になっていまして、選手が何人か住み込みで競技生活を送っています。

――住み込みの選手の皆さんからの賃料収入があるわけですね。

小山:はい。また、射撃ジャケット(コート)の製作もしていまして、フィッティングなどのためにいつでも好きに使える射撃場があるというのは非常に都合がよろしいわけです。

――コーチ業とジャケットの販売、そして住み込みの選手達からの賃料収入、それらのために手近な場所に射撃場があると助かるというわけですね。

小山:射撃場単体として見れば儲かってるとは言えないのは確かです。海外の民間射撃場みたいに、毎日普通に利用者がガンガン集まるようなことは流石に最初から期待していませんでした。今後力を入れていきたいと思っているのは、イベント会場としての需要です。

――今回みたいな日ラ主催の通信競技とか、あとSNSで見ましたがエアガン射撃、APS用ライフルの新型のデモなんかもやっていましたよね?

小山:マルゼンさんが日本ライフル射撃協会と共同開発しているライフルがありまして、そのお手伝いをする形で関わっています。自分はエアガン射撃の世界にはあまり詳しくなかったのですが、都内からすぐ来れる場所にいろいろと使える民間の射撃場があるというのは先方にとっても使い勝手が良いとのことで、便利に使っていただけてます。

――現在はエアライフル射撃場とは別の場所でAPSシューティングブースのようなものを一時的に設置している状態みたいですけれど、あれは恒久的なものになるのでしょうか?

小山:将来的にはエアライフル射撃場内でAPSも撃てるようにしたいと考えています。現在使っている標的交換機はエアライフル射撃用なので10mでしか止まりませんが、改造して5mや他の距離でも止まるように工夫しているところです。

――おお、それは期待ですね! いつごろからどんな形で使えるようになるんでしょうか?

小山:まだいろいろと考え中ですが、月に1回か2回ほど「APS開放日」というような形でエアガンが撃てる日を設けるという形を考えています。APS射撃体験会みたいなのを開催するというのもありかもしれませんね。

――公営の射撃場だと「射撃場内で玩具銃を撃つなんてもってのほかだ」なんて言われたりしますが、そこらへん柔軟なのは民間射撃場ならではですね!

小山:日本では銃の所持に厳しい法律の規制がありますので、相当にやる気のある人でないと射撃競技を続けることができません。APS射撃には、そこまでではないけれど射撃には興味があるというような、もっとライトな層にも射撃スポーツを楽しんでもらえるやり方になるのではないかという期待があります。あと、一度引退してしまった射手のカムバック窓口としても注目しています。

あと、池上さんはAPS射撃に詳しいようなのでお聞きしたいことがあるんですが、よろしいでしょうか?

――はいどうぞ?

小山:APSシューターにとって、ライフル射撃用ジャケットはどのくらいの需要があるんでしょうか? APSカップ本大会の様子とか見ましたが、かなりの率の方がジャケットを着用しているんで驚きました。

――APSライフルクラスで射撃ジャケットを来ている射手の多くは、エアライフル射撃もやっていてさらにAPSライフルもやっている、という人が多いように感じます。エアライフルはやっていなくてAPSオンリーだけれど、そのためだけにジャケットを仕立てたって人はあまり多くはないんじゃないかと……。

小山:当社では、現在販売中の純国産射撃ジャケットとは別のラインで、格段に安い価格の射撃ジャケットを開発中でして、APSシューターの皆さんにも興味を持ってもらえるのではないかと。

――海外製のジャケットを購入しようとすると、採寸して色とか決めて送って、何ヶ月かしてやっと届いたらなんか思ってたのと全然違って……みたいな話も良く聞きますし、作ってくれるところに直接行って直接注文できたり、すぐ下にある射撃場で調整もできるとなれば、そしてさらに価格も安いとなれば、ぜひ買いたいって思う人も多いのではないかとは思いますが……すいません、ここに関してはあまり断言めいたことができません。自分、ピストルしか撃たない人間なので、射撃ジャケットについては「あー、なんかみんな着てるからには必要なものなんだろーなー」くらいの認識しかないもので……。

それにライフルクラスは年々縮小気味でして。いろいろ理由はありますが何よりも大きな理由は、肝心のライフルが売ってない、手に入らないという点です。そういえばAPSライフルですよ! SNSで見たあのテスト中の新型APSライフルっていつ頃出るんでしょう!?

小山:マルゼン&日ラのライフル開発をお手伝いしている関係である程度の情報は持っていますが、あまりはっきりしたこと断言するわけには……。4月~7月くらいになれば具体的な情報がメーカーさんから出てくると思いますよ。時々(抜き打ちっぽい感じで)体験射撃とかやったりしますのでTwitterなどチェックしててくださいね。

あともうひとつ、お聞きしたいことが。

……はいなんでしょう!?

小山:平日の夜に、公式大会が開催されるとしたら、需要はあるでしょうか?

――平日に? それはまたどういう理由で?

小山:現状では参加実績になる大会はほぼすべてが土日の開催ですから、土日に休めない社会人は事実上射撃競技を続けることができないというのが実情ですよね。J-Magicは夜の10時まで営業していますから、例えばPM6:00~8:00、8:00~10:00の2射群で大会を開催することができます。この時間なら会社帰りにそのまま来て参加ということも可能じゃないかと。

――なるほど……。たしかに土日に休めないって人はそれなりに多いはずですし、需要はあるのかもしれません。ただ、ずいぶん長いこと射撃競技やってきて、「大会は土日にあるものだ」というのが完全に身に染み付いていて、そんなこと思いもしなかったってのが正直なところです。

小山:J-Magicでは銃を預かることができるので、大会前にあらかじめ銃を預けておけば会社に銃を持っていく必要もありません。会社帰りに手ぶらでここまで来て、預けてある銃や用品類を使ってそのまま練習したり大会に参加したりして、終わったら銃を預けて家に帰る、そういうやり方が可能になります。

――私では考えつきもしなかったことなので、どのくらい需要があるかなんてとても言えませんが、インタビュー記事を読んだ方が興味を持ってもらえるようにここ強調しておきますね。電車・バスで来ることができる希少な射撃場ですし、都内からの利用者も期待できるかもしれません。

小山:池上さんは、今日はお車ですか?

――いえ、川口駅からバスで南鳩ヶ谷まで行って、そこから歩きました。バイクなら早かったんですが今日はこの天気(インタビューした3/13は丸一日雨降りで、ときおり電車も止まる豪雨になるくらいでした)だったのでしかたなく。Google先生に聞いたところ南鳩ヶ谷駅まで行くより川口からバスのほうが早くて安いと教えてもらえたもので。

小山:ああ、ピストルだとバイクもアリですし歩くのもそんなに苦じゃないですね。実はJ-Magicの目の前にバス停があるのには気づいていましたか?

――ええっ? この場所を目的地にしてましたがGoogle先生は教えてくれませんでしたよ!?

小山:みんななかまバスというバスがありまして、そのバス停「前田西野球場」がほとんど目の前なんです。本数は少ないんですが、川口駅から100円しかかからないんで、うちのスタッフとか常連さんは良く利用されていますよ。

――みんな……、なんですって?

小山:みんななかまバスです。川口市のコミュニティバスです。

――みんななかまバス。聞き違いじゃなかったんですね。さすがのGoogle先生もそこまでは知らなかったと見えます。次に来るときは時刻表調べて使ってみます!

小山:ぜひまたご利用ください。


予約なしの突然のインタビューでしたが、快く対応していただき、誠にありがとうございました。

利用料は、そりゃ確かに公営射撃場に比べると高めにはなりますが、その変わり公営射撃場ではできない、あるいはやりにくいことがいろいろと気軽に実行可能になること、そして実際にいろいろとやってくれているところが期待できますね! 今回みたいに通信競技という形で日ラ公式大会が開催されることも今後は増えてくるでしょうし、ランクリストの開催場所にもなっていましたし、利用機会はけっこう多くなってくるんじゃないかと思います。

また、APSシューターにとっても興味深い内容がいくつかありました。APS開放日や体験会、あとは(すでにエアライフル射手向けに行われているような)射撃教室なんかも開催されたりするようになるのかもしれません。APSライフルが発売になれば(なんでも、ビームライフルとストックを共用できるようにする予定だとか?)、けっこう長いこと停滞気味だったライフルクラスに再び活況が訪れるかもしれませんね。

さて、最寄り駅となる南鳩ヶ谷駅とか、あとインタビュー内にも出てきましたコミュニティバスなど、実はこの場所、けっこう交通手段がややこしいエリアにあります。選択肢がやたらと多くて迷うんですね。自分ができる範囲で簡略化してわかりやすくした路線図を作ってみましたので、参考にしてみてください。

南鳩ヶ谷駅からは徒歩5分ほど。「みんななかまバス」のバス停、前田西野球場からは徒歩1分たらずです。「みんななかまバス」は本数が少ないため、あらかじめ時間を調べておいたほうがいいでしょう。

みんななかまバス公式サイト


こちらは、帰り(J-Magic目の前のバス停から川口駅行き)の時刻表です。

さいごにもう一度。平日の夜に公式大会が開催されるとなれば、参加したいと思う方。あるいは、平日にも試合をやってるのなら、自分も実銃を所持して射撃競技始めてみようかなーとか考えてる方、いらっしゃいましたら、ぜひJ-Magic(@JMShootingRange)までその声を届けてください。これまでにない、新しい射撃スポーツとの関わり方が始まるかもしれません!

[2021/03/15追記]初出では現行のJ-Magic製射撃ジャケットの価格が安価であると記されていましたが、格安の射撃ジャケットは現在販売中のものとは別に新規で開発中のものです。本文は修正済です。
初出ではマルゼンがJ-Magicと新型ライフルを共同開発していると読める表記になっていましたが、実際にはマルゼンと日ラがライフルを共同開発中で、J-Magicではそのお手伝いをしている形になります。本文は修正済です。

池上ヒロシ

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