APSブルズアイって、エアピストルよりむしろフリーピストルの方により近いんじゃないかという気がするようになった昨今です。
「どうすれば上手くなりますか?」
射撃スポーツに限った話じゃなく、ありとあらゆるスポーツにおいて最頻出となる質問がこの質問じゃないかと思います。この質問に対する回答は、簡単に済ませようとするならとても簡単です。「練習しなさい」。これで終わりです。ある意味では完璧な回答です。これに異を唱える人はいないでしょう。
そこからさらに足を踏み出して、どういう練習をすると効率よく上達できるのか、どういったところに気を配ると良い成績が出るのかみたいな話になってくると、いきなり話が難しくなってきます。指導者によって言ってる内容が変わったりもしますし、さらに基本的な、いわば教科書的な内容ですら時代によって変化するくらいです。
結局のところ大事なのは、自分で考えることなのでしょう。いろんな意見やマニュアルや指南書にある内容は、それはそれでストレートな心で取り入れつつも、盲目的にそれを信じるのではなく自分で実際に試して消化して自分のものにしていく、そういう態度こそが必要とされるものなんじゃないかと思います。
大会に参加予定だったのだけれど悪天候のため参加見合わせすることにして、日曜日を持て余すことになってしまったので、久々に海外射撃スポーツ掲示板を覗いてみたら、まさにそのものズバリの質問&回答が投稿されていました。質問者は驚いたことに中国の武漢とのこと。中国って一般の人が射撃スポーツすることが許されていたの?みたいな驚きもあって読んでみたのですが、あまり中国の射撃スポーツ事情みたいなものは書かれてませんでした。ちょっと興味があったので残念。
回答欄は、「この手の質問」についてはテンプレめいたものが多かったのですが、テンプレってことは王道ってことですから、それなりに参考になる部分も多いかと思います。抜粋して翻訳してみます。
なお文中において、「50mピストル」とか「フリーピストル」とか表記のゆれがありますが、基本的に投稿者が使った表記そのままに日本語にしています。
フリーピストルで良いスコアを撃てるようにするには、何をすれば良いですか
引用元:TargetTalk(How can I get a good score in free pistol)
- こんにちは、みなさん。私は50mフリーピストルを始めたばかりの射手です。先輩方にお願いがあります。すぐにスコアを上げる方法を教えて下さい。アドバイスをいただければ幸いです!(武漢湖北中国)
- (質問に対する回答になってなくてすみませんが)中国で個人的に拳銃を持つことは許されているんですか? 装薬銃を撃てるロングレンジの射場において50mフリーピストルを撃つことが許されているのでしょうか?
(中国において個人の趣味で装薬拳銃を所持することはできなかったはずなので)あなたはナショナルアスリートを育成する地方スポーツ大学の関係者なのだと思います。であるならば、「赤い封筒に詰め込んだお金」を携えて彼らの元を訪れることで、あなたはたくさんのアドバイスを得ることができることでしょう。(国籍不明)
- フリーピストルで良いスコアを撃つ最も簡単な方法は、ターゲットを撃つことです。(オーストラリア、シドニー)
- エアピストル、スタンダードピストル、フリーピストルを10年撃ち、さらに9mm/45ACPといったセンターファイアの競技ピストルも撃ち、最終的にはブラックパウダーピストルにまで手を出すことになり、もうフリーピストルを撃つことがなくなっても、「十分やった」とか「満足だ」とか「容易いことだ」なんて思える日は来ないでしょう。
別の言い方をしますと、近道なんてものはないってことです。(ポルトガル、リスボン)
- リサーチする。コーチを見つける。エクササイズする。トレーニングする。そして試合に出て経験を積む。(国籍不明)
- OK。まず以下のことを試してください。
いきなり10点を撃とうとはしないでください。まずは6点を撃たないことを目標に。そして次に7点、8点と順番にそれより内側を撃つように集中してください。
この練習は、あなたに「本当の難しさ」を与える高みへと連れて行きます。グッドラック。(国籍不明)
- トリガーを引いてシアを落としてもサイトピクチャーが全く動かなくなるまで、ドライファイア(空撃ち)練習を繰り返しましょう。それができるようになれば、これまでより先のゲームへと行けるはずです。(ミネアポリス)
- スコアには注意を払わず、ターゲットには少し注意を払い、フロントサイトには多くの注意を払い、トリガーには最も注意を払います。あくまで私のやり方ですが。(国籍不明)
- これから長文を書き込みますが、全て私が自分の経験と実験の繰り返しから学んだことであり、あくまで私の考えです。フリーピストルにおいては私は誰にも学ばなかったので、高い確率で何らかの間違いが含まれていると思います。ただ一つ確信を持って言えることは、私はスコアを向上させるために何が必要なのかということを知っているということです。下記の練習によって、私のスコアは20点もジャンプアップしました。
1.エアピストルよりも手に固くフィットするグリップを使用します。
フリーピストルのトリガーは非常に軽いので、それが可能になります。トリガーフィンガーはトリガーに軽く触れるだけです。グリップをキツくすればするほど、トリガーフィンガーを動かすのが難しくなります。エアピストルの場合、トリガーフィンガーがトリガーにかける必要のある圧力は、フリーピストルのそれよりもはるかに大きなものである必要があります。エアピストルで(フリーピストルのように)グリップをキツくすると、サイトピクチャーを乱さずにトリガーフィンガーを自由に動かすことができなくなります。フリーピストルではホールドが最も重要だと思います。エアピストルでは、トリガーが最も重要です。
ジェントルな(締め付けが厳しくない、みたいな意味)グリップを使用すると、フリーピストルがジャンプしすぎて、グルーピングが広がってしまいます。「ジェントルなグリップ」とは、子供の手を振るのと同程度の圧力だと考えてください。フリーピストルの場合、子供ではなく大人の手を振るくらいの締め付けのグリップを使用します。グリップの締め付けがジェントルだと、ジャンプが起きたときに、手首の固定に問題があるのか、グリップのせいなのかを判断できません。
注意すべき点は、グリップの形状です。グリップの形状が適切でない場合、グリップを強く握ることですべての欠陥を明らかにすることができます。手とグリップの間に隙間がある場合、強く握るとピストルは開いたスペースに移動します。または、手が柔らかい場所(骨よりも肉が多い場所)に移動します。
2.フリーピストルはエアピストルよりも忍耐が必要だと思います。
ピストルの動きが落ち着くまで少し時間がかかります。フリーピストルはエアピストルよりも重くて長いからです。もしかしたらそうじゃない人もいるかもしれませんが、私にとってはそうです。
3.一度上に上げたピストルを照準エリアまで下げると同時に息を吐き、体を落ち着かせます。
太極拳を練習するときと全く同じ感覚です。私はダブルブレス法を使用しています。ピストルを持ち上げながら深呼吸します。ピストルを黒丸のすぐ上まで下げながら、まず普通に息を吐きます。次に、小さく息を吸い込んで、続いて深く息を吐きながら照準エリアまでおろします。このやり方が、私の体をうまく落ち着かせるようです。人によっては別の方法の方がうまくいく場合もあるかと思います。息を吐くときは、手首の緊張ではなく、肩をリラックスさせていることに注意する必要があると思います。
私は自分の身体を射撃体勢に落ち着かせるとき、自分の身体と私の周りのすべてがスローダウンする様子をイメージしようとします。時間は私の心の中でスローダウンしはじめます。それは私がほとんど瞑想しているように感じます。長時間ホールドするという意味ではありません。筋肉が疲労しはじめると、身体がピストルを持ち上げるために戦うのを感じ、緊張してはいけない場所に緊張を導入し始めます。その結果として起こるのは、明後日の方向への着弾です。
他の人が書いてた回答に「フロントサイトにフォーカスを合わせなさい」ってのがありましたが、もちろんそれは基本です。照準に使う眼がサイトとターゲットの間を行き来するということは、心の位置が移動しているのと同じことです。ヒトの身体は、心が見ているものをベースとして自動的にアジャストする働きをします。心が揺れ動き、身体がそれにアジャストしようとするとき、多きな揺れが発生してしまいます。フロントサイトに焦点を合わせるとき、実際に私が感じているのは、フロントサイトをリアサイトの中心にパーフェクトに配置することだけです。私の心がサイトピクチャに集中しているとき、ターゲットはほとんど無関係になります。もちろんターゲットの黒丸はそこに存在していますが、積極的には考えていません。そのため、ターゲットを追いかけるのがやめられた気がします。その結果、私の動きは小さくなり、遅くなります。
私が言っている内容は、あくまで私のためには良い働きをしてくれますが、他の人にとっては違うかもしれません。グッドラック!(カリフォルニア)
フリーピストルだと、トリガーはエアピストル以上に重要になってきます。トリガープルに制限がない(どれだけ軽くても許される)のだから、適当にゆらゆら揺れてるサイトを眺めながらここだと思ったところでちょっとだけ人差し指にクイッって力を入れて撃てば弾はそこに飛んでくんじゃないかと最初は思ってましたがとんでもない話で、意識して人差し指を動かす撃ち方すると簡単に黒丸の端っこの方に弾が飛んでってしまいます。まず据銃を安定させ、その上でトリガーにはジワーッと力をゆっくり加えていって「どこかで、意識しないところで」弾がバンッって発射される、そういう撃ち方が必須になってきます。エアだと「ここだ撃て」で撃ってもなんとか真ん中らへん行くこともありますが、フリーだと全然通用しないですね。
この点はAPSブルズアイも近いところがあるかと思います。APSブルズアイにおける10点圏の見かけ上の大きさはフリーどころかエアよりもずっと大きいのですが、より繊細なトリガーが要求されるのはAPSブルズアイのように感じます。なぜか? おそらく、弾が銃身内にいる時間がずっと長いから、トリガーを引くときのブレが及ぼす着弾への影響がずっと大きいってのがその理由になってるんじゃないかと思います。
また、APSのフリーピストルとの共通点はもう一つあります。トリガープルに制限がないことです。APS-3のトリガープルはノーマル状態では520gくらいですが、カスタムすることによって200gとか100gくらいまで軽くすることができます。となると、この記事内で書かれてるように「500gのトリガープル制限があるエアピストルのようにジェントルなグリップではなく、キツく手を締め付けるようなグリップ」の使用が選択肢に入ってきます。ノーマルで使うなら関係なくても、①トリガープルをもっと軽くしたい→②これだけトリガープルが軽ければグリップ形状がよりフリーピストルっぽい手を締め付けるタイプのものも使えそうという順番で、トリガーチューニング沼からグリップカスタム沼にハマりこんでしまう、というのもAPSあるあるの一つかもしれません。
グッドラック!(真似)
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