本当なら私が真っ先に気づいてお知らせしてなきゃならなかったんですが、しばらくSCATTソフトウェアの更新をサボってたんで気づきませんでした……!
世界中で使われている射撃解析装置、SCATT。銃に小さいカメラを取り付けて標的を常時撮影し、その映像をPCに送って「銃の照準がいまどこに向いているのか」を記録、トリガーを引いて空撃ち(あるいは実射)したときの衝撃を検知して「ここでトリガーを引いた=弾がそこに当たった」と判断、画面上にデータを表示するものです。ある程度以上にガチで競技射撃やってる人だったら「持ってなきゃダメ」といっていいほど、上達のためには必須となっているアイテムになっています。
基本的には実銃射撃を想定していますが、オリンピックで行われている射撃競技、いわゆる「ISSF系の射撃」以外にも、アメリカやロシアの警察官が行っている射撃訓練用ターゲットや、アメリカの銃愛好者団体NRAが独自に行っているシューティングマッチ、その他アーチェリーやクロスボウ用ターゲットなど、多種多様のターゲットが登録されていまして、リストを見てると「なんだこれ……?」と思ってしまう見たこともないターゲットが目白押しです。自宅で空撃ち練習するために短距離用に縮小したターゲットを印刷する機能なんかもついていたりします。
今年の5月のソフトウェアアップーデートにて、そのSCATTにAPSブルズアイターゲットが追加されました。「へー、APSブルズアイって名前のターゲットが海外にもあるんだー」と勘違いしてませんか? そうじゃありません。JASG(マルゼン)さんが日本で開催しているAPSカップ、そのブルズアイ競技で使われているターゲットが、SCATTのメニューから選べるようになったのです。
恐ろしくたくさんのターゲットが並ぶ、SCATTのターゲット選択画面。いつもなら下の方にある「エアピストル」を選んで練習開始するところですが、アップデートすると右下の方にあるカテゴリーに「aps」というのが追加されています。ABC順だから一番前ですね!
その「aps」を選ぶと、ターゲットが「5m APS Bullseye Target」に絞り込まれます。
そのターゲットをクリックすると、おお! 見慣れたAPSブルズアイターゲットが表示されました!
実は、昨年の5月ごろにSCATTにメールしてみたんです。
「日本ではAir Pistolは法律で実銃とされ、所持や使用には厳しい制限があるため、Air PistolやAir Rifleを使用した射撃は誰もができるスポーツではありません。そのかわり、法律で実銃ではなく玩具であるとされるSoft Air Gunを使用した射撃スポーツが広く行われています。その中でも大規模なものの一つに、JASGという団体が主催して開催しているAPSカップという大会があり、大勢の競技者がスポーツとして本気で取り組んでいます」
「そこで、SCATTの対応ターゲットの中に、APSターゲットを加えていただけないかと思い、メールしました。もっとも基本とされるBullseye TargetだけでもSCATTのメニューから選べるようにしてください。そうすれば、多くのAPS競技シューターにとって喜びとなり、日本におけるSCATTの販売数は間違いなく大きく増えると私は確信しています」
ほとんどダメ元だったんですがお返事は実に前向きなもので、
「早速社内で検討している」
「ルールやターゲットについて詳しいことを教えて欲しい」
「できればターゲットをいくつか送ってくれないだろうか、テストをしてから実装したい」
とのこと。ただソフトをちょっといじってターゲットを追加してもられば万々歳のつもりだったんですが、「実際にターゲットを使ってテストをしてみないと」とか言い出すあたり、前々からそうじゃないかなーとは思ってましたがSCATTの人たちの「常に完璧を目指す態度」というのは徹底してますね!
その後、国際郵便でモスクワにAPSブルズアイターゲットを送ったら、(ロシアの郵便事情ではよくあることらしいですが)郵便局内で紛失してしまい届かなかったことがわかって再送したり、テストで実装したソフトを試してみたら弾痕径が6mmに設定されていて(6mmの弾で撃つのですから、そりゃ普通に考えればそうなりますよね)どこ撃っても10点みたいな状況で、実際にはターゲットに圧着痕が付くのでそれを基準に採点するのです……と説明しようとしたら「そういえば、採点の基準になる弾痕径ってルールで決まってなかったような!?」ということに気づき、JASGさんに問い合わせて事情を話して「じゃあ、とりあえず3mmってことで!」ということになってそれをロシアに伝えたりとか、いろいろありまして……。
そろそろ実装されたかなー、連絡はまだかなーと思ってたら、知らないうちに最新バージョンでしれっと対応していた、という次第です。
銃口(照準)の軌道が色分けして表示されています。緑色が狙い始めてから、撃つ1秒前から黄色、0.3秒前から紺色、撃った場所には3mmの弾痕が表示され、撃った後の軌道は赤色で表示されています。黄色から紺色にかけての軌道が大きく動いているようだと、トリガーを引くときに銃が動いているということがわかります。よくあるのは、緑の線のまとまりは真ん中あたりに小さく固まっているのに、黄色から紺色になったとたんに大きく動いて中心の外に飛び出したところでトリガーを引いてる、というパターンです。「銃が止まらないせいで当たらない」と思っていたが、実は銃は十分にしっかり止まっているのに、トリガーでミスをしていた=トリガーの引き方さえしっかりと練習しなおせば抜群に良く当たるようになる、ということがその結果から分かるわけです。
今回掲載した写真はSCATT EXPARTのもの、つまりMX-02を使ってのテスト結果をお届けしましたが、SCATT BasicもソフトともどもAPSブルズアイに対応しています。ファームウェアのアップデートをしないと上手くキャリブレーションできないことには注意してください。ファームウェアの更新は、SCATT本体をPCに接続した状態でソフトを立ち上げてから上メニューの「製品について」をクリックし、画面中央に現れる公式サイトURLの下にある「診断」というボタンをクリックすることで始まります。
※公式サイトにファームウェアアップデート用プログラムがUPされているものだとばかり思っていて、ここでしばらく引っかかってました……。
SCATTの日本代理店は銀座銃砲店さんです。7月21日から60周年記念セールを開催していまして(なんと来年の3月まで!)、SCATTも個人輸入するより安い値段で手に入ります。Basicが87,500円、MX-02が175,000円、最新型のワイヤレス仕様であるMX-W2が199,000円とのこと。安いものでは……ありませんが、ほら、ちょうどつい最近10万円ほどの臨時収入があったりしませんでしたか? ちょうどいい使いみちだと思いますよ!