APS-3にFPのグリップを付けてみる

3月上旬には大事な大会があったのに全部中止になってしまって、行き場をなくしたやる気の行き先としてAPS-3にMG-5のグリップを取り付けるアダプターを製作しました。

APS-3にエアピストルのグリップを装着するカスタムをしている人は、それなりに見かけます。APS純正グリップはちゃんとした競技向けのグリップですし取り立てて欠点があるわけでもないのですが、それでもワンサイズしかなく調整機能を駆使しても手が大きい人、小さい人にはフィットしづらいところがあるとか、コストゆえの妥協点はどうしても存在します。エアピストル用はさすがにそこらへんの選択肢は豊富ですし、自分の手のサイズに合ったグリップには、手がその大きさの人向けの細かい調整もされているという利点もあります。値段そのものが大きく違うのですからそもそも同じ土俵にあげて比べるのも酷い話ではあるのですが。

しかし、エアピストルのグリップにAPS-3を入れようとすると、グリップとAPS-3本体のどちらかあるいは両方に大幅な加工を行う必要がでてくることが多いという難点があります。エアピストルはルールで全幅の規制がありますので、グリップのサイズは必ずそのルールに沿った大きさで作られています。ルールの制限内でグリップを作りその中に銃を入れないとならないので、当然銃のサイズ(横幅)にもある程度の制限がでてきます。スペースに余裕がないのですから違う銃を差し込んでピッタリ入るなんて奇跡的なことが起こらなければ、どちらかを削って無理やり合わせるしかないわけです。

ですがフリーピストルには全幅の制限がありません。なのでグリップ内部の広さには十分な余裕があります。試しに手持ちのMG-5用純正グリップにAPS-3を差し込んでみたらスカスカで、前後上下にセンチ単位でAPS-3を動かして適切な位置を選ぶ余裕すらありました。これなら、隙間を埋めるアダプターを作るだけで簡単に装着できそうです。

普段使っているRinkのカスタムグリップは、上部に突起があるためAPS-3のリアサイトがそれに当たらないように取り付けると銃の位置がかなり高くなってしまうため(グリップをちょっとだけ削れば解決なのですが、今回はグリップにもAPS-3にも一切加工を行わないというのがコンセプトなのでそれはNG)、MatchGunsの純正グリップの方を使います。これならサイトの高さはAPS-3の純正グリップとほぼ変わらない高さで取り付けられそうです。

APS-3のグリップ取付部と、MatchGuns MG-5の純正グリップ内部の寸法を計測して図に描いて、その間を上手く埋められるようなアダプターを設計します。残念ながら一度で完璧なものが作れたりはしないので、作って組み立てて握ってみて、あと少し前、あと少し下、ああサイトが当たってしまったから数ミリだけ上げて、とか試行錯誤を山のように繰り返しました。


最終的に落ち着いたのがこの形です。グリップスクリュウの受けとなるフランジナットを埋め込むスペースを確保するために、APS-3に取り付けるネジを締めるためのドライバーの導線を斜めに曲げたのがアイデアです。ネジ頭にドライバーが斜めに当たった状態でネジを締め込む形になりますが、プラスネジなのでこのくらいはギリギリで許容範囲です。左にあるのは新規作成したトリガーです(後述)。


ポリカを6枚積層して左右からボルトで締結し、内部にはAPS-3取り付け用のネジと、グリップスクリュウの受けとなるフランジナットを埋め込みました。APS-3の機関部左右に貼ってあるMDF板は、グリップとの隙間を埋めるためのスペーサーです。少しキツかった(スペーサーが厚めでした)が、表面を少しずつ剥ぎ取っていくことで微調整できます。


組み立てて握ってみたところです。サイトとグリップの位置関係はこれ以上ないほどバッチリですが、人差し指がトリガーから遥かに離れた場所に来てしまっています。リアサイトとグリップの干渉を避けるために銃を前方にオフセットしたので当然ですが……。


なので、トリガーブレードを延長して指の位置まで持ってきました。本来ならトリガーなんて剛性が要求される場所は金属で作るべきなんでしょうが、トリガーカスタムしてトリガープルも大幅に軽くなってるわけで、大した負荷がかかるわけでもないということでここも樹脂で作ってしまいます。ポリカ4枚の積層でトリガーブレード取付基部のレールを左右から挟み込む形にして(一応接触部は簡単に削って溝に入るようにはしましたが気休めです)固定。正直言うと、指でつまんで下方向に引っ張れば簡単にはずれてしまう程度の固定ですが、撃つぶんには全く問題はありません。


APS-3の後ろ側トリガーガードの取り付け基部となっている三角に出っ張ったところが邪魔になってトリガーをこれ以上は後ろに動かせない状態になってしまっていますが、まあなんとかギリギリなところに収まりました。余裕をもたせるためにはその部分(APS-3のトリガーガード取り付け基部)を少しだけ切断してしまうという方法もあります。実射にはなんの関わりもないところなのでぶった切っても問題ないといえば問題ないのですが、「銃にもグリップにも一切の加工は行わない」というコンセプトを守るためにここはこのままにしておきます。

据銃練習で空撃ちを繰り返してるだけなのですが、おっそろしいほどに銃が安定します。「俺は、恐ろしいものを作り出してしまったのかもしれない……」とか思っちゃうくらいです。ただ、こりゃ完全にブルズアイ特化のカスタムですねえ。プレートは完全に捨てた仕様になってしまっています。シルエットプローンも厳しいかな……。APSカップ本戦でこれが使い物になるかどうかは正直微妙かもしれません。

ただ、少なくてもFPの自宅練習用としては完璧!

池上ヒロシ

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