前回、USA Shootingに掲載された記事を紹介する際、「お金がないなんてもんじゃなく、そりゃもう貧乏な団体」とUSA Shootingのことを説明しました。それに対し、「お金がそりゃもう有り余っていて、金持ちなんて言葉じゃ言い表せないくらいに金持ちな団体」がNRAです。「膨大な会員から集めた会費と寄付金でなりたつ莫大な資金力をバックに、政治に対しても強い影響力を持つ」なんてフレーズで紹介されることも多いNRA。ほとんど世界征服を企む悪の秘密結社みたいな扱いです。アンチガン連中(感情だけで銃を悪魔の道具と決めつけ世の中から消し去ろうと企むカルト集団)にとってはそれは事実なのかもしれませんが。
その、うなるほど金が有り余っているNRAは、ライフル射撃だとかクレー射撃といった競技スポーツとしての射撃にはあまり興味がないのでしょうか? いや、そんなことはありません。活動報告を見ていると、どこそこの大会にスポンサードしたみたいなのがずらりと並んでいます。USA ShootingがISSF系、それ以外がNRAみたいな棲み分けをしてるわけじゃなく、USA Shootingは代表選手のサポートや技術向上のための研究といった細々とした活動を乏しい資金力でなんとかやりくりし、NRAは有り余る金でありとあらゆる「銃に関連したイベント」をバックアップしている、というような構図に近いみたいです。
若年層への普及に対しては、NRAは特に熱心です。若いファンを増やすことは、将来の愛好者を増やすことに繋がるわけで、未来に向けての安定した地位確立のためには不可欠な投資です。これは別に斬新なやり方というわけじゃなく、スポーツなり文化なりを存続させ発展させていこうとするときには絶対にやらなきゃならないことで、ちゃんと未来を見据えている団体なら必ず少なからぬ額を「子どもたちに、そのスポーツ/文化の魅力をアピールすること」につぎ込んでいるハズです。それをしない団体には未来はありません――ああ、自分の書いた言葉が自分に突き刺さって痛い!
NRAの「若年層への、射撃競技普及に向けた努力」が実った成果の一つとして紹介されているのが、高校クレー射撃リーグの大成功です。ほんの数年前まではドマイナーな部活だったのが、ここ数年で倍々ゲームのように参加校数・参加生徒数が増え、今では全国大会が「世界最大の射撃イベントの一つ」に数えられるほどになったといいます。
全米高校クレー射撃選手権の様子、参加している選手の子たちへのインタビュー、コーチや関係者の言葉、さらには射撃スポーツに対して反感を持っている人たちの反応など、様々な方面に取材してまとめ上げた記事がTIME誌に掲載されていました。射撃スポーツは素晴らしいと単純に持ち上げる内容でもなく、逆に銃なんかけしからんと非難するような内容でもなく、ちゃんと両方の意見や本音を聞き出してバランスが取れた記事になっているあたり、さすがは一流誌と呼ばれるだけのことはあるなと思わせる充実した内容です。
あと、写真も素晴らしいです! 一つ一つの写真が、「ポスターですかこれ」ってくらいのかっこうよさだったり可愛らしさだったりで、これはぜひ元記事に写真だけでも見に行って欲しいと思います。
High School Shooting Teams Are Getting Wildly Popular ? And the NRA Is Helping
たくさんのRV車が駐車場を埋め尽くしています。ミネアポリスから北西に2時間ほど離れた湖の点在した地域にあるアレクサンドラ・シューティング・パークの芝生コースには、アメリカ陸軍、NRAの支持団体、ドナルド・トランプのTシャツの販売などからなるスポンサー・テントがずらりと並びました。チームユニフォームに身を包んだ子供たちを遠くから見るとまるで虹のようです。赤、オレンジ、緑、あずき色、青……。彼らが着ているシャツには、所属するトラップ射撃部のロゴマークとスポンサードしてくれている地元企業の名前がプリントされています。たとえばクロスレイク・コミュニティ・スクールの場合、リストには地元の銀行、保険ブローカー、米国在郷軍人会、グランパス雑貨店が含まれています。
ミネソタ州立高校クレー射撃リーグ選手権は、世界最大のシューティングスポーツイベントとしての地位を確立しています。にぎやかな群衆と企業の興味の洪水は、それこそNASCARサーキットの風景と間違えそうになるほどです。違うところといえば、中心となっているスター選手たちが10代の男の子と女の子であることだけです。そして、彼らは武装しています。もちろん、これらは完全に競技スポーツが行われている場所なのですが、時折、スコアカードとイヤープロテクションだけではない世界が視野に入ってきます。ローズビル区高校トラップチームのコーチであるバーニー・ボーゲンリーフ氏は、競技者である子どもたちが数十人も集まり、銃を手にしたまま互いに手をつないで肩を組んでチーム写真を撮っている様子を何度も目にした。みんな別の学校なのに。
「でもまあ、賭けてもいいですが、あの写真は卒業アルバムには掲載されないでしょうね」とボーゲンリーフ氏は言いました。
もしかしたら、彼はその賭けに負けるかもしれません。全国各地において「ガン&スクール」という言葉は、しばしば恐ろしいヘッドラインとともに、会計係と春の運動場の間に挟まれた子供の写真と一緒に提示されます(※)。多くの卒業アルバムでは、競技射撃は高校生活の一部として普通に掲載されるようになっています。乱射事件が起きるたびに多くの学校で抗議行動やストライキが行われますが、それが行われているのと同じ学校を含めて、課外活動として射撃部を認可される学校が増えています。例えば、2015年には3つの州にまたがる317の学校で9,245人の学生がアメリカ高校クレー射撃リーグに参加しました。それ以来、参加率は137%も急上昇し、2018年には、ニューヨーク、カリフォルニア、そしてテキサスを含む20州の804チームから21,917人の学生が参加しました。
この増加ペースは、少なくとも2つの複雑で容赦ないほど挑戦的な現実――アメリカにおける、銃と青春との関係――を反映しています。高校の射撃チームは、時には銃器をめぐる全国的な議論に巻き込まれることがあります。NRAは多くの高校射撃チームに資金を提供しています。2014年から2016年(NRAの財務が公表されていた最後の3年間)には、NRAは学校や学校スポーツ射撃を支援する団体に400万ドル以上の現金および備品を寄付してきました。このサポートは、NRAが常に強調している「銃の安全と訓練」に繋がるものです。しかしそれはまた、NRAが「反抗的文化保守主義と結びついた銃の所有権」を基本とする政治的権力機関へと転換していることとも一致しています。NRAの生涯会員にして医療機器のサービスエンジニアでもあるバリー・トンプソン氏によれば、それこそが彼がイーストリッジ高校の射撃部コーチをしている理由なのだといいます。「親御さんたちには正直に話していることですが……」と59歳のトンプソンは語ります。「私がここにいるのには、裏の動機があります。この子達は、(銃規制に反対、あるいは消極的な党または候補者に)投票してくれるようになることでしょう」
銃に批判的な人達には、この光景はいつもと同じように見えるようです。ニューヨーク市の州議会議員であるリンダ・ローゼンタール氏は言いました。
「いつも私が言ってるように、NRAがやることはすべて社会に害をなす可能性が高いことなのです。これ(高校射撃部への寄付)は、NRAが企む自らの影響力向上と銃使用の拡大を目的として行っていることです」
ローゼンタール議員は州内の公立学校で射撃部を作ることを禁止する法律を提案しました。2018年だけでニューヨーク州立高校クレー射撃リーグへの参加数が3倍(1,149人の学生と59の学校)に激増したことを憂いてのことです。議員は、フロリダ州パークランドのマージョリー・スートンマン・ダグラス高校において17人の学生とスタッフを殺害した(参考:マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件)として告発されたニコラス・クルーズは、高校でライフル射撃部の一員だったと指摘しています。
「両親が自分の子供に射撃技術を学ばせようと思ったとき、彼らがそういったプログラムに子供たちを送る権利は、確かに存在しています」とローゼンタール議員は言います。「しかし、学校は学びの場です。将来、銃乱射を起こすための方法を学ぶ場所ではありません」
しかし、科学に基づいた調査では、射撃部に加わったことで銃による犯罪を引き起こす可能性が高まるといったような証拠は、何一つ示されていません。また、学校での大量殺人を起こす学生にしばしば見られる特徴的な苦悩(疎外感や社会的孤立を含む)に対し、いわゆる「クラブ活動(射撃部を含む)」が解毒剤となるようなエビデンスも存在しません。
シドニー・ギルバートソンは13歳の時にワコニア高校のトラップ射撃部に加わりました。彼女の兄も射撃選手でしたが、彼女は射撃部の中で唯一の女の子でした。「射撃部での経験は、私をそれまで生きていた小さな世界から連れ出してくれました」とギルバートソンさんはいいます。19歳になった彼女は、今ではミネソタ大学の新入生です。「私はトラップ射撃に情熱を捧げた10代に自信と誇りを持っています。それは私が高校で成し遂げた最高のことです。もし、子どもたちからそれを取り上げるべきだなんてことになったりしたら……」彼女の目は涙でいっぱいになりました。「トラップ射撃は、私の一部です」
全米高校クレー射撃リーグの参加者の約3分の1にとって、トラップ射撃は彼らの唯一取り組んでいるスポーツです。ミネソタ州スプリングレイクパーク高等学校の校長、ジョン・ヘンゼルマン氏は、次のように述べています。
「地方に住んでいるか都会に住んでいるかにかかわらず、子供たちに必要なのは、グループの一員として認められることだけです」
一風変わっているように見えるスポーツですが、たとえばレスリングなどと同じように、チームの絆と互いの信頼を築くことはできます。チアリーダーはいませんけど。様々な装備――シューティンググラスや、イヤマフや、大きなポケットのある射撃ベストなどは、競技力向上に重点を置いて作られ、使用されているものです。手と目の調整と集中は、フィジカルなコンディションよりも重要です。スター選手がいつ、どこから生まれてくるのか、誰にも予想はできません。
「高校のトラップ射撃部に所属して好成績を記録することで、『ジョック(※)』の仲間入りをすることができます」と、ミネソタのNRA支援団体サウスメトロ支部の委員長であるリロイ・バン・ブラント氏は言いました。「まあ、ポリティカル的には正しくない言い方にはなりますが……。コンピューター・ナード(※)や女の子であっても、アメフトのスター選手を打ち負かし、それより上の存在になることができます。実際にそういう例はいくらでもあります」
トラップ射撃では、トラップ・ランチャーと呼ばれる機械がクレーターゲット、別名「ピジョン(ハト)」を空中に放出します。それぞれの競技者はピジョンに対して合計で100発撃ちます。レイクビュー高校という小さな高校のローガン・ガイル君は、膝前十時靱帯を損傷したことでフットボールのキャリアを終えました。かれはまた半月板をも損傷したのでバスケットボールコートを離れました。しかし、上級生になってなお彼はアスリートとしての新たな生き方を見つけました。州選手権で彼は100発すべてを命中させ、喜びのあまりに両親とともに号泣したといいます。
またそれとは別の話ですが、ウォータータウン・マイヤー高校の上級生であるテイラー・ローマンさんは、二分脊椎という障害を持っており車椅子を使用していますが、チームメイトと共に射台で撃ちます。トラップ射撃のおかげで、ローマンさんはバーシティ・レター(学校のスポーツ選手に贈られる特別な賞)を受け取りました。「特別なニーズを持つ子供がいるとき、とても想像しなかったことがいくつか起こるものです」と、ローマンさんの母親であるスザンヌ・ダーナーは言いました。「あの子は他の子供のように、学校でスポーツをしています」
ミネソタはハンティングが盛んな州です。成人の3分の1以上が銃器を所有しています。農村部では、鹿の狩猟解禁日に学校への出席率が大幅に低下するほどです。しかし、ある一人のミネソタ州在住の元広告マンの粘り強い頑張りがなければ、何千人もの学生が射撃部に所属するようなことにはならかったでしょう。現在80歳のジム・セーブルが、自身が経営していた広告代理店を売却して引退したのは2000年のことです。彼は引退後の人生のうち多くの時間を、地元のガンクラブで過ごすようになりました。「ああ、このクラブは高齢化しすぎている」と彼が気づいたのは、誰かが彼に「トレーラーからターゲットを荷降ろししてくれないか」と頼んだ時でした。その時点で、彼はクラブで最も若いメンバーの一人だったのです。
デモばかりしている青少年たちの興味を射撃スポーツへと引き寄せるために、セーブル氏は学校に射撃部を創設することを提案しました。当初、彼の「営業」は困難を極めました。最初に教育委員会と面会したときに、セーブル氏は一つの重要な教訓を学びました。彼によると、決して次の単語を口にしてはならないとのことです。「子供たち」「銃」「学校」。もしそれをワンセンテンスでも口にすれば、お決まりの回答が確実に帰ってきます。「あんた、頭がおかしいんじゃないのか?」と。
全米高等学校クレー射撃リーグを設立し、その会長を務め、つい先日その職を退いたばかりのセーブル氏の主張は、実に洗練されています。彼は教育委員会の責任者に2度目に会った時には、自分が射撃スポーツ組織を代表などしていないという「ふり」をしました。そうではなく「脳震盪や骨折や足の破損を引き起こす活動」について説明していると相手が思うように誘導しました。いやいや、そんなはずないでしょう? 彼は、交渉相手に対し、自分がフットボールについて説明しているのだと意図的に勘違いさせたというのです。
視点を変えれば、それは射撃部が学校の備品を必要とせずに活動をできる体制の確立に役立ちました。彼らは射撃場で練習し競い合いますが、銃を学校に持ち込むことはできません。それはまた地域のクラブや他のスポンサーがチームを支援しやすくなることにも繋がり、射撃部は学校の予算にほとんど頼ることがありません。射撃はまた、男の子と女の子が、一緒にそして激しく競いあうことができる、極めて稀なスポーツです。米国の高校リーグの参加者の約18%が女性で、5年前の4%から大きく増加しています。
安全性に関して述べておきましょう。2008年以来、7万人以上の学生が4200万発の発砲をしています。同リーグによると、負傷者はただの一人も報告されていません。スプリングレイクパークで、コーチであるハンセルマン氏は生徒たちに「射撃の1時間前になったら砂糖を摂取しないように」と指導しています。落ち着きのない10代の若者は、射台に立ったときにはさらに神経過敏になるのが常だからです(※)。リーグに所属するすべての学校で、学生はチームに参加するために銃器安全について学び、その修了証明書を獲得する必要があります。
バドガー・グリーンブッシュ・ミドル・リバー高校のアシスタントコーチであるジョッシュ・ケーンは次のように述べています。
「トリガーを引くときに、常に心に命じなさい。撃った結果は、何をしても絶対に元には戻せないのだと。」
「政治的な正しさ」は銃には常に付きまといます。しかし実際に射撃の経験があれば、今まで見えていなかった新しい観点に気づくこともあります。NRA支援団体のハンチョー(班長)であるバン・ブラント氏は、2年前のカントリー・フェアで出会った一人の母親のことを話題に出しました。彼女の息子が学校でトラップ射撃部に入ろうとしたとき、彼女は根っからのアンチガンだったのです。そのとき射撃部のコーチの一人であったバン・ブラント氏は、彼女が考えを転換するまで、彼女の息子とともにいろいろと頑張った苦労話を語ってくれました。
何人かの子供たちにとっては、NRAのトラップ射撃へのサポートはより広範囲な政治的流れと密接に関係しています。ミネソタでのイベントで、1人の男の子は「Keep-America-American」の帽子(※)をかぶっていました。別の子は、南軍の旗が付いた「Redneck -Nation」のシャツ(※)を着ていました。さらにもう1人、トミー・シュローダー君(10歳の誕生日にNRA生涯会員資格を貰ったという)は、銃の権利を守ることと、違法移民の取り締まりを行っていることについて、トランプに敬意を表しました。「私たちにも夢はあります」と、ミネアポリスから北に約60マイル離れたモラ高校の2年生であるシュローダー君は言いました。「私たちは彼らに他の人生を台無しにさせたくないです。」
パークランド銃乱射事件の後、より厳格な銃規制法を求め学生たちによるウォークアウトが組織されたとき、ほとんどのトラップ射撃部員はそれに参加しないことを選びました。「ずいぶん、いろいろと言われましたけれどね……」と、ツイン・シティー郊外のプリマスにあるウェイザタ高校を最近卒業したミーガン・リンゲイトは言いました。「彼らが訴えていることは、『子供たちを守れ』ということではなく、『私たちは反トランプです』ということだったのです」
もう1人の学生であるローガン・クラエバーは、自身が通っていた学校であるワージントン高校ウォークアウトに参加しました。 しかし、彼はその決断を後悔するようになりました。「私は、ウォークアウトが命を落とした人々への追悼になると考えたのです」と17歳のクラエバーは言いました。「そこにいる誰もが、あらゆる銃を禁止しようと話していました。私はそこから離れました――私は、何世代にもわたって受け継がれてきた大事な物を排除してしまおうとする活動をサポートする気には、どうしてもなれませんでした」
彼は、10代の頃に父親からレミントン870ウイングマスターを譲り受けていたのです。
トラップ射撃部員は、誰もが同じものの考え方をしているわけではないことを知っています。そこが学校の廊下であってさえもです。「同級生たちが僕らを見る目には、ときおり疑念が宿っているように感じます」と彼らは言います。リンゲイトが暮らしているプリマスは田舎町ですが、その視線は感じています。「私が射撃チームに所属していると聞くと、私が学校や町で乱射事件を起こすのではないかと心配する人もいます」と彼女は言いました。
8年生(中学2年生に相当)のレイリー・ローズは、彼女の周囲の人たちは彼女に対して少々「ナーバス」になっていると言います。なにが彼女にそう思わせるのでしょうか?
「自分のチームウェアとかそんな感じのものを持っていて、それに『トラップ&スキート』と書いてあったりすると、ときおりこう尋ねられることがあります。『それ、何?』って」とローズは言います。「説明してあげると、その人達はこんな感じで『OK』って言ってどっかに行っちゃいます」
彼女は、どうリアクションするのでしょうか?
「肩をすくめて、そのまますたすた歩き続けます」と彼女は言って、射撃へと戻りました。彼女にとってより関心があるのは、自分のスコアなのです。
NRAが高校のライフル射撃部に援助を続けていたのを、教育委員会が突然却下してしまい、資金不足で窮地に陥ったライフル射撃部を地元の企業が支援してなんとか持ち直した、というようなニュースが、昨年(2018年)の3月にCNN経由で日本でも報道されたことがあります。
その報道は、控えめにいっても酷いものでした。記事の主役であるべき「高校のライフルチーム」とは何かということについてほぼ全く何も説明がなく、さらにYahooのヘッドライン記事で使われたタイトル画像が軍用銃を手にした男性の写真だったりしたので、読者のほとんどが高校のライフルチームとは「戦闘用の銃を手にして軍事訓練をしているグループ」みたいなものだと思い違いをしてしまったのです。CNNのサイトには今でも記事が残っています。軍用銃を持つ男の写真(NRAについて説明する90秒動画のサムネイルのようです)もタイトル画像として掲載されています。
こんな写真がタイトルに使われていて、記事が「NRAが高校ライフルチームを支援しているのを教育委員会が阻止した」なんて内容だったら、悪の組織NRAが金を出して高校生に軍事訓練みたいなのをさせてるような風景を連想してしまうのも当然です。記事のコメント欄は、「子供に軍用ライフルを持たせようとする狂ったアメリカ人」への非難や嘲笑で溢れかえりました。まんまとミスリードにひっかかった読者の皆さんは何も悪くありません。記事の書き方が悪いんです。
これに比べたら、TIME誌の記事は実にバランスが取れた公平なものと言えるでしょう。この記事をちゃんと読んで、それでもなお「銃を手放さないアメリカ人は狂っている」みたいなことを言い出す人はいないでしょう――いや、もしかしたらいるかもしれませんが、それはすでに合理的で冷静な批判などではなく、銃に対して理屈を超えた感情的な悪意を持つ一種のカルトくらいなものじゃないかと思います。