なんでダットサイトとかスコープとかの話をしないのか? 簡単すぎて説明が一行で終わっちゃうからだ。それに比べてオープンサイトで正確に狙いをつけるのは難しい。なんでわざわざ難しいことをしようとするのか、光学サイトという人類の叡智を使わないのはなぜか? なんでなんだろう? こっちのほうが面白いから、かな? オープンサイトは、熟練すればレンズやミラーを駆使したサイトを使うのと同等、やりようによってはそれ以上に正確にターゲットの中心に弾を当てることができる。それが面白いんだと思う。
汎用性は高いとは言えない狙い方だが、精度は高い。倍率一倍のスコープとかドットサイトを使って狙うよりも六時照準で狙ったほうがはるかに正確に弾を撃てる。
トップレベルの人達でもここらへんには差があるそうなので、「どれが正解で、どれが間違い」というわけじゃないんだろう。基本のやりかた(隙間を少しだけ開けるやりかた)を試してみて、やりにくいようなら隙間を増やすなり黒丸に食い込ませるなり、試行錯誤してみて自分の狙いやすいやりかたを見つけていくといいだろう。
前後サイトの位置が合っていれば、ターゲットとサイトとの位置関係が少々ズレても大した失点にはならないが、前後サイトの位置関係が少しでもズレると大きな失点になってしまうということは既に述べたとおり。左図のような撃ち方はそのミスを頻発させる悪癖といっていい。もしこのやり方で撃ってる人がいたら、たとえその狙い方に慣れていたとしてもすぐに止めて、前後サイト上辺を横一直線に並べる狙い方で練習しなおしたほうが絶対に良い得点が撃てるようになる。
左図は擬似的に再現してみたものだ。数値的にはサイトの高さは左右で全く同じなのだが、明るいほう(左)と暗いほう(右)を見比べてみると、左のほうがフロントサイトと黒丸との隙間が大きいように見える。暗いと、よりサイトが黒丸に近付いているように感じてしまう。
太陽の光の下で撃つのか屋内で撃つのか、といったことでサイトとターゲットとの位置関係は違ったように見えてしまう。同じ室内でも、かなり暗めになっている射場もあれば明るい照明が付いてる射場もある。どんな射場でもそれなりに対応できるようにするためには、フロントサイトと黒丸の間には「適切な」隙間を空けて狙うようにするといい。
左図で説明してみたので見て欲しい。サイトがクッキリしていれば、ターゲットとサイトの位置関係や、前後サイトの位置関係(重要度としてはこちらのほうがずっと上)が少しずれただけで分かるが、サイトがボンヤリしてしまうと同じ量だけズレていても、ちょっと見ただけではズレてるということが分からない。だがこの状態で撃ってしまえば弾が当たる場所は中心からはるかに離れた場所だ。
「クッキリと見えていないサイトで狙っても、それは狙ったことにはならない」ということを肝に銘じよう。
左図はその練習方法。椅子に座って、上半身だけを立って撃つのと同じ姿勢にして右手をターゲット方向に突き出し、その下にクッションとかカバンなんかを入れて土台にする。銃を握った腕ごと土台の上に載せてしまうのだから、立って片手で持ってるときよりもずっと安定する。その状態でフロントサイトに目のピントをあわせて、前後サイトの位置関係、サイトとターゲットの位置関係を揃え、トリガーを真っ直ぐ後ろに引く。立ち上がって片手で撃つのは、この練習をしばらくやって、「狙い」と「トリガー」を身につけてからでも遅くない。
※参考文献:オリンピック・ピストル・シューティング(日本ライフル射撃協会編・三野卓哉著)