毎朝のコーヒーや紅茶が習慣になっている人は、それ無しだとその日は一日中、なんとなく調子が悪くなってしまうものです。その一方で、試合前にコーヒーを飲む(カフェインを摂取する)のは良くないという話も聞きます。どうしたら良いのでしょうか。
私はまだドーピング検査を受けた経験はありませんが、全国大会みたいな大規模な大会に参加するとドーピングに関連する冊子が配られたりするので、私みたいな一般射手でもドーピングや禁止薬物についてある程度は気にするようになります。身近なものだと、例えば私が射撃を始めたころはカフェインがドーピング違反に該当する禁止薬物に指定されていました。毎日のコーヒーや紅茶が習慣になっている国またや地域の人にとっては、それだけで大きなハンディキャップになるんじゃないかと心配になったものです。
その後、2004年にカフェインは禁止薬物から削除されましたので今では試合前にコーヒーや紅茶を飲んでも特に違反になることはありません。ですが、カフェインは射撃には良くない(銃が止まらなくなるとか、精神の集中を阻害するとか)という理由でそれをやめさせようとする指導者もいるそうです。
私自身の話でいうと、普段は毎朝大きめのコップ2杯分くらいは紅茶を飲んでいるので、試合の日(例えば泊りがけの遠征なんかで)にそれがないと一日どうにも調子が出ないということは確かにありました。一時期は、荷物のなかにポットと紅茶の葉を入れて持っていって、朝はホテルでお湯を沸かして紅茶を入れて飲んでから試合会場に行く、みたいなことをしてたこともありました。今はやっていません――効果が無かったからというわけじゃなく、気にするならほかに気にするところがいくらでもあるということに気づいたからというのが実際の理由ですが。
それはそれとして、普段は銃の機構とか射撃用具の使い方とか技術的なことで盛り上がることが多いTargetTalkで、珍しく「コーヒーは得点に影響するのだろうか?」なんていう、特定の国や地域に限定しない、世界中の人が話題に参加できるスレッドが立ち上がってまして、そこそこ盛り上がっていて面白いので抜粋して翻訳してみたいと思います。
コーヒー。
引用元:TargetTalk “Coffee”
- ちょっと興味があるのですが、コーヒーは得点に影響したりしますか?(国籍不明)
- はい。 朝のコーヒーを飲んでいなければ、その日の得点は酷いもんになります。(国籍不明)
- 影響があるかどうかは分かりませんが、撃つ前にコーヒーか紅茶を飲みたいと思うことはよくあります。(オランダ – トウェンテ)
- 良い影響も悪い影響もあります。私はフレンチやイタリアン・ローストを飲みます。フルフレーバー、低カフェインのものです。(アメリカ・アリゾナ州スコッツデール)
- 射撃時の、銃の安定性に無視できない大きな影響があります。私の場合は。(フィンランド)
- 身体がどういう状態に慣れているのかによります。定期的にコーヒーを飲んでいるならば、試合の直前だけ飲まないということが、いつもどおりに飲むことよりも良くない影響(例えば体の震えとか)を引き起こす可能性はあります。
普段からコーヒーをあまり飲んでおらず、身体がそれに慣れていないならば、コーヒー、紅茶、またはソーダに含まれるカフェインの影響は大きなものがあるはずです。間違いなく銃はいつもよりも揺れるようになるでしょう。突然の砂糖の摂取についても同様です。(アメリカ・マサチューセッツ)
- 毎日1リットル半は飲んでます。朝、射撃場に行く前に大きなマグカップでコーヒーを飲まないなんてことは私にとってはありえないことです。(カナダ、ケベック州モントリオール)
- コーヒーは心拍数とアドレナリンを増加させます。そのため、たいていのコーチは試合前に選手からコーヒーを遠ざけようとします。
そうは言われましても、私はコーヒーフリークなのです。(オーストラリア)
- 私は、今はカフェインフリーな生活をしていますが、それに到達するまでには苦しい禁断症状に耐える必要がありました。頭蓋骨が割れるかのような頭痛に悩まされている間は競技どころじゃありませんでした。
今は禁断症状も抜け震えも収まりましたが、ホンモノのコーヒーを飲みたいと思うことは今でもあります。(イギリス)
- このテーマに関する実際の研究結果がありました。
標的検出と射撃技量に及ぼすカフェインの影響
Effect of caffeine on target detection and rifle marksmanship.
驚くべきことに、射撃技量には影響が全くないという結果になっています。(アメリカ・マサチューセッツ) - >驚くべきことに、射撃技量には影響が全くないという結果になっています
申し訳ないんですが、その記事からオリンピックタイプのピストル射撃に適用できる深い研究を読み取ることはできません。(イギリス、ルイスリップ)
- 記事内で「射撃技量」という言葉が具体的にどういう意味で使われているのかを考慮する必要がありますね。軍隊においては、伏射姿勢から300m先にある人物大ターゲットを撃つことも「射撃技量」と見なされることがあります。
エアピストルと、SCATTやNoptelのような電子トレーナーでテストを行いたいくらいです。どこかではそういう実験をしてるところもあるんじゃないかとは思いますが、そういう情報は見つけるのが非常に難しいのです。そういった研究の多くは、いろんな国のオリンピックチームによって行われているのでしょうが、その結果はある意味で「国家機密」ですから、公開情報としてネットに掲載されたりはしないのです。(アメリカ・マサチューセッツ)
- もう何十年も前の話ですが、当時は「ブルズアイピストル」と呼ばれていたピストル射撃競技に本気で取り組んでいた時期がありましたが、周囲のトップ射手たちはみなカフェインフリーになろうとしているようでした。実際に違いがあるのか試してみようと思い、短い休憩時間にコーヒーを飲んでから点取りをしてみたところ、普段はゆっくりと黒点の周囲を動くドットが、コーヒーを飲んだ後はずっと早く不規則に動き回ることに気づいたので、禁断症状に耐えながらカフェイン断ちをすることにしました。
スコアや点の動きに大きな違いは見られませんでしたが、健康上の利点もあると聞いていたのでしばらくの間それを続けました。数ヶ月が過ぎたころのある日、私たちは地元で開催される地方大会に参加しました。それは2月下旬~3月上旬にかけてのことでした。試合会場に行く前にバーガーキングに立ち寄り、カフェインレスのコーヒーを飲みました。再び運転を始めたころに、私は自分が飲んだコーヒーがカフェインレスではなかったことに気づきました。その日の試合中は、視界の中を小さな赤い彗星があっちこっちへと飛び回るようでした。実に愉快な体験でした……。
このことから私が得た教訓は、毎日の仕事前に数杯のレギュラーコーヒーを飲むことくらいは気にしないで構わないということです。以上のことから分かる通り、カフェイン断ちをしていようがいまいが、身体は普段の状態に慣れるものです。そして、普段と違うことをすれば何らかの問題が引き起こされるものです。(国籍不明)
- このスレでは、いろんな人がいろんなことを言っていますが、それは全部、書き込んでいる本人にとっては正しいことなのです。カフェインは、皆に異なった影響を与えます。朝の一杯のコーヒーなしでは、射撃がまるでダメになると信じている人にとっては、確かにそのとおりになります。カフェインなしでもしっかり銃が止まると信じているのならば、そのとおりになります。
ネットに書き込む多くの見知らぬ人ではなく、自分自身の射撃ノートに相談するべきでしょう。例えば6週間、カフェイン断ちをしてみてどうなるか見てみましょう。
ただ言えることがあります。その6週間後の最初の一杯のコーヒーは、それはもう……(Walk&Don’t Walkの曲がり角)
「良いか悪いか」で言ったら、悪影響があるという意見のほうが多数ではあるものの、一番悪いのは普段の習慣を無理に変えることであり、いつも飲んでるなら飲んでてOK、飲んでないなら飲まない方がOKってのがだいたいの結論になるのでしょうか。
それよりも読んでてけっこう面白かったのが、「カフェインを摂取しない生活に変えること」というのが、イギリスでも(多分)アメリカでもかなり一般的になってきているように見えることです。上記翻訳では「カフェイン断ち」とか書きましたが、元の文(英文)では「Decaf(デカフェ)」なんていうやけにオシャレな言葉が使われてます。「健康を気にする意識高い系の人たちの間での流行」みたいなニュアンスで使われてるぽい響きがありました。
その一方で、「でもやっぱコーヒーはうめえ」ってなっちゃうところが、全般的に社会から自由な傾向がある射撃人らしさというかなんというか。