1.サイトをターゲットに合わせる
2.銃を止める
3.トリガーを引く
時系列での順番がこうだから、ついついこの順番に意識を集中していってしまいがちなのだが、「正確に弾を狙ったところに当てる」ということを考えたとき、重要になる順番は上とは異なる。
はじめての精密射撃(略して「はじみつ」。なんでこんな略称を思いついたんだろう俺)の第3回では、この3つについて重要な順番に解説していく。
精密射撃で一番大事なのは「トリガー」だ。トリガーを引くときに、動くのは人差し指だけで身体の他の部分は微動だにしないこと。照準を正確に合わせることも、銃をピタリと止めることも重要だが、トリガーを引くことの重要さに比べたら取るに足らない。
重要だと強調しているということは、難しいからだ。特にピストル射撃では、トリガーを引く指が付いている手と、銃を支えている手が「同じ手(右利きの場合は右手)」だというところが厄介さを増している。トリガーを引いたとたんに銃が横に触れたり上下に動いてしまったり、そういったミスショットはなかなか減らせるものじゃない。
トリガーを引くときにどういうミスをしたのかによって銃がどういった動き方をするかは異なり、それぞれ対処法も異なってくる。そこらへんの詳しいことについてはのちのち説明するが、ここではとにかく「トリガーを引くときに銃がビクンとならない」ということを、とても大事なことだということを強調しておきたい。
簡単な練習方法がある。弾を撃たず、ターゲットもおかずに、ただ銃を構えてトリガーを引いてみる。当然、銃には何も起こらないし弾も出ない。そうやってトリガーを引いたときにサイトが動くかどうか? ただトリガーを動かしただけなのにそこで銃が動いてしまっているようだとお話にならない。まずは、弾もこめずにコッキングもしない状態で、銃を動かさずにトリガーを引けるようになるまで練習だ。
次に大事なのが、フロントサイトに集中すること。ターゲットではなく、フロントサイトだ。
精密射撃に限らず、銃を撃つ時には当然のことだけれどターゲットに当てたくて撃つわけだから、意識がどうしてもターゲット側に行ってしまいがちだ。これは人間の心理として当然のこと。しかし、意識がターゲットに行ってしまって目のピントがサイトから離れてしまうと、大きなミスショットの原因となってしまう。
勝利の鍵はフロントサイトにある。フロントサイトに集中して、前後サイトを正しい位置関係に置くこと、これが「狙いをつける」うえで大事になることだ。
銃を「止めよう、止めよう」としてしまうのは、特にライフル射撃とか依託射撃の世界からピストル射撃の世界に入ってきた人が陥りがちな罠だ。ピストルは片手で撃つ関係で、どうしてもライフルより止まらない。止まらない上に(さっきも書いたが)銃を支える手に付いてる指でトリガーを引かなければならないため、「止めよう、止めよう」と頑張れば頑張るほど、トリガーを引いた瞬間に銃が動いてしまって、せっかく頑張って合わせた照準が全部無駄になってしまう。
銃は、正確な位置に止まらなくてもいい。前後のサイトの位置関係さえキッチリと合っていれば、サイトがターゲットから大きく外れていてもたいしたミスショットにはならない。上の図を見て欲しい。サイトはターゲットから大きく外れていて、「こんなんで撃って当たるのかよ」ってくらいの位置にあるが、それでも弾を撃てば黒丸の範囲には入る。
目のピントはフロントサイトに合わせなければならないと、何度もしつこく書いてる理由がこれだ。サイトがぼやけてしまうと、前後サイトの位置関係を正確に合わせることができなくなる。ぼやっとしたサイトを「こんなもんかな」で適当に合わせて撃ってしまうと、ちょっとしたズレで弾着が大きく変わってしまう。だがターゲットが少々ぼやけていても、サイトさえしっかりと見えていれば、その「ぼやっとしたターゲット」に合わせて撃てばだいたい真ん中らへんには弾が当たる。
※参考文献:オリンピック・ピストル・シューティング(日本ライフル射撃協会編・三野卓哉著)