実際、APS-1グランドマスター(以下、APS-1 GM)は発売されてずいぶん経つが、「10mまでなら最も高い命中精度を持つ」という評価は、ほぼ揺るぎないものとして定着している。優れたトリガーシステム、独自のスプリング/シリンダー内径バランス理論、ダブルパッキンシステムなど、APS-1 GMがエアガン界においてのエポックメイキングとなった点は枚挙にいとまがない。
ただし、これをピンポイントシューティングはもちろんAPSカップにおいても、実銃のエアピストルと同様に片手撃ちで精密射撃を行おうとする場合、どうしてもここはなんとかしておかないとならない点というのは存在する。欠点といってもいい。普通は「カスタム」といったら使っていくうちに不満点を見付け出してそこをなんとかするために改修を加えるものだが、APS-1 GMの「欠点」については、買ったらすぐに手を入れて改修してしまっても構わない、いやむしろ撃つまえにまず手を入れてしまうべきだ。
改修点は上図で示したとおり、全部で3箇所ある。順番に見ていこう。
だが、これは余計なお世話だ。ピストル射撃においてグリップからバネで押し出されていて手のひらの一部を圧迫してしまうような部分があるというのは、悪い影響を与えることはあっても良いことなど一つもない。よりによってその場所がグリップ後部、手のひらの中央部分に当たる場所にあるというのも良くない。このグリップセフティをしっかり解除するために力を入れてグリップを握り込んだりする癖が付いてしまったりすると、もう最悪だ。
APS-1 GMのグリップセフティは、購入して箱から出したらすぐに解除してしまおう。解除方法は、面倒な方法から簡単な方法まで何通りかある。グリップを外してグリップセフティを後方に押しているバネを外し、グリップセフティが押し込まれた状態で接着剤かなにかでくっつけてしまう方法。分解するのが面倒なら、バネが付いたままでもいいからグリップセフティを押しこんで接着剤を少しだけ隙間に流しこんで固定してしまう方法もある。一番簡単なのは、輪ゴムを使ってグリップセフティを押された状態のままぐるぐる巻きにしてしまう方法だ。これなら輪ゴムを外せば元に戻るから、他人に借りた銃(シューティングレンジのレンタルガンとか)でも遠慮無く行える。
まず、トリガーはなにを置いても一番後退した位置にする。それでもまだ遠い場合(多くの場合、遠いだろう)、一部を削ったりするなどでさらに近づけたりする必要が出てくる。さして難しい加工でもないのだが、「削り」が入るとなると、とたんにハードルが上がってしまうと感じる人も多いかも知れない(レンタルガンだと無理だし)。
トリガーシューが湾曲していて指のカーブに沿うような形になっているのは、トリガーを引くのにすごく大きな力が必要になるリボルバーとか狩猟用ライフルなら意味があるが、ちょっと触れただけで弾が発射される競技銃では必ずしも必要ではない。むしろ、こういうふうに「小さい突起だけを指に当てる」形になっている競技用トリガーというのはけっこう多い。(のちのち説明するが)毎回同じ位置でトリガーに指を当てるというのは上達のためには重要なことの一つだが、それをやりやすくするためのカスタムパーツの一つでもある。
前後をひっくり返したトリガーは見た目はちょっと変だが、実際に撃ってみると意外に撃ちやすい。裏技めいてはいるが、誰でも簡単にできるトリガーカスタムとしてオススメしたい方法の一つだ。
注意:トリガーは、左右方向に斜めにしないこと。
APS-1 GMのトリガーの調整範囲は広く、前後位置の他に、左右への回転をさせることもできる。ノーマルだとトリガーが遠いので、ついつい少しだけ右に回転させて指にフィットするようにしてしまいたくなる人は多いようだ(実際、そういうふうに調節しているひとを良く見かける)。
これは、絶対にやっちゃいけない。トリガーは真正面を向いた状態で固定。左右方向に斜めには振ってはいけない。理由はのちのち説明するけれど、とりあえず今の段階では、これは絶対に守らないとダメな決まりだと考えておいてほしい。もし少しでも左右に回転させてしまっている人がいたら、たとえその調整方法で何年も撃っていて「これで慣れてるから…」という場合であっても、今すぐに真正面を向いた状態に直したほうがいい。
一番上まで上げてもまだ余裕があるという場合は、削って可動範囲を広げたり、ヒールレスト側にパテを盛るなどして隙間を無くしていく。ただ、逆側(グリップの上側、親指と人差し指の間に当たる部分)にパテを盛るのは基本的にNGだ。また、手のひらが当たる部分(右利きの場合はグリップの右側面~後方にかけて)も、手のひらにぴったりとくっついている必要はなく、そこにパテを持って隙間をミッチリ埋めてしまうのは悪影響がでる場合もある。
パテを使ってのグリップ調整は、まずはヒールレストの上下方向のみにとどめておいて、他の部分に手を出すのはもうちょっと後にしよう。
ただし、ここだけはやっておいたほうがいいという箇所はある。グリップに、ちょっと余計な盛り上がりが一箇所だけ残っているのだ。
ただ銃を持って構えて標的方向に向けるだけならこのデザインでもいい。だが弾を撃つためにはトリガーを引かねばならず、トリガーを引くためには人差し指に力を入れなければならない。手の指そのものには筋肉が付いていないため、指を動かすのには腕にある筋肉を使い、腱(ワイヤー)を使って筋肉の動きを指に伝えている。そのワイヤーは手のひらを通っている。そのため、指を動かすと、どうしても手のひらの一部が勝手に盛り上がったり動いたりしてしまうのだ。
そのため、競技用ピストルのグリップでは「人差し指と、人差し指に関連する手のひらの腱が通っている部分は、グリップにはいっさい触れない」ようなデザインにするのが絶対の基本となっている。APS-3のグリップはノーマルの状態だと、人差し指そのものは大丈夫だけれど、手のひらの人差し指に繋がる腱が通っている部分がグリップに強くあたってしまう。このデザインだと、銃をターゲットに向けて、さあトリガーを引こうと力をいれたとたんにグリップに力が加わり、銃が動いてしまうということになりやすい。
この加工をすると、ただ握って構えただけの状態では、手のひらへの密着感が薄まり不安定さが増したような感じがするかもしれない。だが、そこから的を狙ってトリガーを引いてみると、加工前の「力を入れるとサイトが揺れる」という感覚がなくなり、人差し指だけが他の指から独立してトリガー単体に力を入れられるようになったことが実感できるはずだ。