格安の自作射撃メガネを披露したら総ツッコミ喰らった件【海外の反応】

ターゲットとサイトの両方がくっきりはっきり見えればどれだけ射撃が楽になることでしょうか。少しでもその「理想の状態」に近づけるために、いろんなグッズが販売されています。中にはすごい値段が高い製品もあります。


射撃専用のメガネフレームって、専用のものを買うとけっこうな値段がします。レンズを含まないフレームだけの値段でも安いもので3万円、高機能なものだと5万6万は当たり前の世界です。レンズ込み3000円でメガネが作れてしまう時代この値段はかなり高く感じますが、実のところこれは「ちゃんと作られたメガネの値段」としてはそれほどボッタクリな価格というわけでもないようです。日本のとある銃砲店がメガネ職人に射撃用メガネのサンプルを見せて同レベルのものを作ってもらったところ、「高い」と思ってた値段のさらに倍を余裕で超える価格になってしまった……なんて話を聞きました。
 

なかなかの値段がする射撃用グラスフレームの数々。決してボッタクリというわけではなく、「これだけのものを作ろうとすれば、このくらいの値段にはなる」と日本のメガネ職人さんも太鼓判を押すレベルのクオリティなのだとか(引用元:銀座銃砲店の冬セールチラシ)。



 
高級でなくてもいい、不格好でもいい、自分で作ってやろう……と考える人がでるというのは、日本も海外も同じことのようです。海外の射撃競技専門BBSである「TargetTalk」で、アメリカ在住のピストルシューターがPC作業用のメガネと、ウォルマートで買ってきたクリップ付きのフリップアップサングラスで射撃用メガネを自作して、「ほら、これならたった15ドルですよ! 何百ドルも払うのバカみたいでしょ!」と掲示板に投稿していました。

ですが、その眼鏡が、控えめにいってもかなりアレな出来でして、常連投稿者さんに総ツッコミを喰らうことになりました。最初の投稿者さんも謙虚な方でアドバイスを素直に聞いて特に掲示板が荒れるということはなかったのですが、やりとりの過程で出てきたいろんな話がなかなか興味深かったので、抜粋して翻訳してみたいと思います。

格安の射撃用メガネ

引用元:TargetTalk “Cheap Glasses”


  • 最近、射撃メガネについての質問が多いですよね。そこで私は、安価な解決策を提案したいと思います。
    まず、ウォルマートでクリップ付きのフリップアップサングラスを購入します(訳注:日本だとダイソーで100円で売ってますね)。右のレンズの、構えたときにちょうど標的が見える位置に穴を開けます。穴の位置や大きさは、紙を使っていろいろ試しながら決めるといいでしょう。必要ならレンズを黒のビニールテープで覆うといいでしょう。それから、廃棄する自転車のチューブの一部を切り取ったものを、メガネの左のアームに通し、ブラインダーとします。
    このメガネは、私が普段使いしている(眼科で処方してもらった)メガネですが、視力矯正が必要ない人は安いサングラスでも構いません。
    このような簡単な手作りグッズと同じような効果を得るために何百ドルも費やすなんて私には意味がわかりません。この穴のサイズは実にちょうど良く、被写界深度が増してフロントサイトはカミソリのようにシャープに見えるようになりました。このメガネはPC作業用に処方したものなので、通常の処方のメガネよりも矯正度が小さくなっており、比較的近くのものにピントが合いやすい作りです。ターゲットは若干ボヤケて見えるので、飛んでいく弾やターゲットに開いた穴の位置は見えません――そのことにより、ミスショットをしてもプレッシャーがかかることがなくなりました。
    カラーフィルターを追加することもできます。お近くの舞台照明装置を扱っているお店で、さまざまな透明な色のレンズジェル(スクリムと呼ばれます)を購入してください。
    この射撃用メガネを作るのにかかった総費用は、たった15ドルです。(バトンルージュ、ルイジアナ州)


 

  • その眼鏡はISSFルールでは違反になります。遮光テープの面積が広すぎます。(アメリカ)

 

  • どうすればルール違反じゃなくなりますか? 私はISSFの公式試合に出ることはありませんが、ルールに則ってプレーすることは好きです。(バトンルージュ、ルイジアナ州)

 

  • >どうすればルール違反じゃなくなりますか?
    照準に使わない方の目に付けるブラインダーの幅は最大30mmまでと決められています。また、サイドブラインダーは許可されていません。(イギリス・ルイスリップ)

 

  • それなら、自転車チューブを取り付けずにフリップアップシェードのみを使用するとどうなりますか? 照準に使わない側に貼り付けたテープ幅は30mm以下ですし、レンズの残りの部分は通常のサングラスです。(バトンルージュ、ルイジアナ州)

 

  • ルール違反かどうかということ以前に、黒色で視界を塞いでしまうことはフォーカスの助けになりません。
    可能であれば、黒いテープを半透明の材料に交換してみてください。両目に入射する光が多くなればなるほど、ピントが合うようになります。(ニュージーランド)

 

  • >黒色で視界を塞ぐのはダメ
    これな。(ハミントン・スクエア、ニュージャージー州)

 

訳注:ここ、英語(原文)でも「This.」の一言でした。よく日本のネット掲示板で見かける「これな。」と使用法が完璧に同じ――「私が言いたかったことは、まさにこれです」といったニュアンス――だったので吹き出しそうになりました。ネットスラング文化って言語圏が異なっても同じ進化をするんですねえ。

 

  • >黒いテープを半透明の材料に交換してみてください。
    私は左のレンズにマスキングテープ、右のレンズには吸盤で貼り付けるタイプのアイリスシャッターを使用していました。(カナダ、ケベック州モントリオール)

 

  • ノン・エイミング・アイには、非常に小さな目隠しだけで十分です。小さい目隠しでも適切な位置にあれば、ターゲットのダブル・イメージは除去されます。あらゆる科学的知見は、両眼に等しい光量が必要であると結論づけています。半透明(曇り)テープが良いとされるのはそれが理由です。
    また、周辺視力(ターゲットの周辺がちゃんと見えていること)は、バランスと安定性にとって重要です。完全に非照準の目を覆ってしまうと(たとえ不透明素材でも)、揺れは大きくなります。実際、射撃メガネの非照準側を完全に半透明テープで塞いでいた学生が「DIZZY(めまいがする、ふらふらするという意味)」に悩まされ、私のアドバイスにより3/4インチ(19mm)幅の半透明テープに切り替えたところすぐに良くなったということがありました。
    テープ、あるいはブロッカーが十分に小さいことによる利点はもうひとつあります。弾の装填など、射座において行う作業で目隠しが邪魔にならないで済むということです。(マサチューセッツ州)

 

「周辺視力は、バランスと安定性にとって重要」ってのは、当然のようにさらっと書かれてますが実はけっこう衝撃的な内容でした。確かに「目をつぶった状態と目を開けた状態で、片足立ちできる時間」を比べれば圧倒的に目を開けてるほうが安定して長く立ち続けられるわけで、言われてみれば当たり前の話です。
となると、見えてる範囲が広いことによるメリットは目隠し板だけでなく、エイミング・アイの前に付けるアイリスシャッターでも同じことのはず。周辺視力を邪魔しない「あきゅらぼアイリスシャッター」が、予想以上にスコアアップに効果があったのはもしかしたらそこにも理由があったのかもしれません。
写真は左が従来のアイリスシャッター(クノブロッホ製)、右が【あきゅらぼ通販】にて販売中の、あきゅらぼアイリスシャッターです。
※現在予約受付中、次回出荷は3月中旬予定


  • 左目側につけていた黒いテープの代わりにマスキングテープを試してみるつもりです。自転車チューブは外すことにします。(バトンルージュ、ルイジアナ州)

 

  • ノン・エイミング・アイ側のレンズを紙ヤスリを使って粗くするってのもいいかもしれません。
    科学は常に正しいわけではありません。私の場合、エイミエング・アイが脆弱なのか、半透明のブラインダーを使うと標的やサイトにグレアが生じてしまうため、ノン・エイミング・アイにバーチャルなブラックアウトを必要とします。まあ、個人的な好みなわけですが。(新しいグローバル英国)

 

  • >科学は常に正しいわけではありません。
    申し訳ありませんが言わせてください、科学は常に正しいです。特定のケースに適切に適用するのはあなたの責任です。それがテクノロジーというものです。(ニューハンプシャー、アメリカ)

 

  • >科学は常に正しいです。
    科学は経験的な側面と理論的な側面を持っています。私は、黒色のブラインダーのほうが私自身に適していることをあなたに保証することができます。
    科学がいうところの、通常な人間の瞳孔の通常の動作は、私の目のそれとは異なります。その違いに対処することは、あなたが言うところの「適切な適用」に該当します。もし科学が、「私」が両目に等しい光量を必要としていると言うならば、それはばかげた話です。なにがなんでも「両目には等しい光量が最適だ」という風潮は、単なる慣習にすぎません。科学ではなく。
    科学によれば、ピストル射撃には+0.75補正が必要だというのがセオリーですが、最近とある投稿者は+1.25が自分には最適だと書いていました。(新しいグローバル英国)

 

なぜかこの掲示板、メガネやレンズに関する話になると、こういうふうに自論を絶対に譲らない人が複数登場して、激論に近い状態になることがあります。銃そのものについての話題や、ルール改変に関する話題では相当にセンシティブな話題でも実に冷静に会話を続けるTargetTalkの皆さんですが、メガネに関することだけは別のようです。

 

  • 裸眼で、ベストな被写界深度と全体的なピントを得るためには、できるだけ瞳孔を小さくすることが必要です。人間は通常、両眼を異なる瞳孔収縮量に制御する能力を持たないので、両方の目に光が当たっている場合は両方の目の瞳孔が収縮し、両方とも暗ければ両方とも拡張します。片方が明るく片方が暗い場合は、両方とも明るく見えていた場合よりも瞳孔は拡張するでしょう。これが、黒ではなく半透明のテープを使用するほうが良いと言われている理由です。
    写真をみる限り、その射撃メガネは明らかに目に入る光量が不足しており、被写界深度が悪化した状態で射撃することになってしまいます。
    この問題を回避する方法は、シューティング・アイ側に開けられた穴を1/8インチ(3mm)、あるいはそれより小さくすることです。光学系において、被写界深度は光路上の最小開口によって決定されます。この投稿の最初で私は「裸眼で」と書きました。裸眼で見ているときは、自分自身の瞳孔が「最も小さな絞り」になります。一般的な光量下において、瞳孔の直径はおよそ1/8インチになります。射撃メガネの穴が1/8インチで、自分の目の瞳孔が1/8インチの場合、1/8インチの時の被写界深度が得られます。ノン・エイミング・アイを黒色で覆って瞳孔が1/4インチに広がったとしても、被写界深度は1/8インチ相当の時のままです。これは、光路内における最小の開口部が1/8インチだからです。
    さらに、1/16インチ(1.6mm)でも試してみてください。ターゲットとフロントサイトの両方を同時にシャープにすることができます。(オハイオ州シンシナティ)

「被写界深度」って言葉が当然知ってるべき単語のような顔をして何度も登場します。これは「ピントが合う範囲」のことです。例えばこの写真だと、真ん中の一行とその前後の行の一部だけが被写界深度内に収まっていて、それより手前とそれより奥はボヤケてしまっています。絞りを小さくすると(シンシナティの人の言葉を借りると「光路上の最小開口部を小さくする」と)、このピントが合う範囲が広がり、手前から奥までくっきりと見えるようになります。



APS(トイガンでの射撃競技)系では、本格的な射撃グッズを高いお金を出して購入するのではなく、自分に必要な範囲の機能を持ったものを自作してしまう方がけっこういます。それこそ4万5万する射撃用メガネフレームと同等のものを自作してしまった方すらいます。かなり良い出来だったので「それ、売れますよ!」って持ちかけてみたら、「とんでもない!」って答えが帰ってきました。自分のためならともかく他人のためにはとてもやってられないってレベルの大変な手間だったようです。

このトピックで最初に投稿されていた「自作の射撃用メガネ」は、なんというかその、アレな出来だったわけですが、それでも「自分で作ってみよう」と思いたって、実際に手を動かして作ってみたという経験は、大きな財産になったはずです。いいも悪いも、頭の中で考えるだけで結論づけるのではなく、現実に作ってみて実際に試してみるというのは、本当に大事なことだと思います。

市販されているものが最上のものだと「信仰」して、たとえ不満があっても我慢して使い続けるというのは、別に悪いことじゃないんでしょうけれど、面白くない生き方ですよね。不満を感じて、「俺だったらこうする」と構想を立てて実際に作って、試してみたらあまり良くなくて、やっぱり市販品が一番良かったなーって戻ってくるなんてのは、実のところ、よくあるパターンです。私自身を振り返っても似たようなことは何十回と繰り返してるような気がします。ですが、それは決して馬鹿げたことでも無駄なことでもないと、私は思います。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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