10m射撃で看的スコープ使っちゃダメなの?【海外の反応】

銃に取り付けて使うスコープではなく、机の上に置いた三脚や、机の端をクリップで挟んで取り付けたスタンドの先なんかに固定した望遠鏡で、「撃った後に」弾着がどこにあるのかを確認するのをスポッティングスコープ、日本だと「看的(あるいは監的)スコープ」なんて呼んだりします。


一発撃つたびに、今撃ったその弾がどこらへんに当たったのかすぐ確認することは、射撃技術を向上させるためにはとても大事なことです。撃ったときの感覚、具体的には上手く撃てたのならその感覚、そうでないのならどんなふうに外してしまったのかという感覚を、実際の結果と比較して「どういうふうに撃てば当たるのか、当たらないなら問題があるのは何か」というデータを自分の中に蓄積していくことで、いつもと違う環境(例えばプレッシャーのかかる試合会場)でもそのデータを思い出すことで練習で上手く撃ててた時と同じように撃つことができるようになるのです。

大きな射撃場や、(国体の開催などで)最近改修された射撃場なんかだと電子標的が導入されていることが多く、撃てば手元にあるモニターに「どこに当たったか、何点か」が即座に表示されます。……即座といいつつ、広島のつつが射場みたいに古いところだと数秒かかったりしますけど。けれどそういう先進装備がない普通の射撃場では、昔どおりに紙のターゲットを撃っています。10m先にあるターゲットのどこに弾が当たったのか、すごく目がいい人なら見えるかもしれませんが普通は見えません。

標的の交換は、電動のモーターを使い、ボタンを押すだけでシューって自動で送ってくれるところもありますが、もっと古いところだと手動のクランクを回して手前から奥へ、奥から手前へと移動してやらなければなりません。普段の練習では、1枚の標的に数発(5~10発くらい?)は撃ち込みます。電動交換機があれば1発ごと手元に引き寄せて弾着を見て、確認したらそのまま奥に送ってまた撃つ……なんてのもけっこう簡単にできますが、手動クランクだとなかなか大変な作業になってしまいます。なので、標的を10m先に置いたまま着弾位置を確認するためのスポッティングスコープが必要となってくるわけです。

ところがこのスポッティングスコープ、公式ルールだと使用が禁止されています。練習では別に構わないのですが大会本番では持ち込みが名指しで禁止(10mピストルのみ。25mピストルと50mピストルでは許可)されています。昔っからというわけじゃなく記憶だとだいたい10年前かそこらのルール変更で追加された禁止事項だったと思うのですが、とにかくそういうことになってます。

なんでそんなことになってるのか、射手の技術向上を邪魔するようなルールが追加された理由はなんなのか? そういったことが少しTargetTalkで話題になっていたので、簡単に抜粋して紹介してみたいと思います。今回も、特に「有用な情報」があるわけではなく、どちらかと言ったら穴埋めのヒマネタに近いものがありますのでお気楽にどうぞ。

エアーピストルのスポッティングスコープ

引用元:TargetTalk (Spotting Scopes in Air Pistol)


  • ISSFルール(8.6.1)で、10m射撃では射撃後にターゲットを見るための望遠鏡(スポッティングスコープ)が使えないことになっていると聞きました。それはなぜですか? オリンピックやワールドカップなどでは着弾位置が表示される電子標的が使われるから、そういうところでしか撃たない幸運な人たちにとっては問題がないということでしょうか?(オーストラリア、シドニー)

 

  • そのルールの目的は、射座を少しでもスッキリとさせることでしょう。「世界中の何百万人もの視聴者が視聴する10m射撃イベント」で、テレビカメラの視界を遮らないためですね!(ニュージーランド)

 

  • それは多分……あくまで多分ですが、10m競技では射座の幅が1~1.25mまでしか設けられないからじゃないかと思います。50m射撃では1.5mもあります。アルゼンチン、サンタフェ)

 

  • 詳しい部分は覚えてないんですが、確か電動の標的交換機がない場合はスポッティングスコープの使用が許可される、ってどっかで聞いた記憶があるんですが。(ノルウェー)

 

  • ISSFルール「8.6.1 スポッティングスコープ」
    25mと50mのイベントでのみ、ピストルに取り付けられていない望遠鏡を使って着弾を確認したり風を判断することは許可されています。(オーストラリア、シドニー)

 

  • 10mで使うスポッティングスコープには、それほど大きな倍率を必要としませんので、サイズも小さいもので十分です。私が使っているスポッティングスコープはタスコ製の単眼鏡で、机にモノポールで取り付けています(倍率は8倍だったか10倍だったか……使わなくなってしまったので覚えてません)。長さはわずか4cmですので机の上を乱雑にするようなことはありませんし、射線に入れば簡単に視界から消えてしまいます。
    スポッティングスコープが使用不可になったことには、本当に閉口します。弾がどこに当たったか見るためにはターゲットを3~5mくらいの場所まで引き寄せなければなりません。電子標的とくらべて余計な仕事が増えるわけです。より多くの時間がかかりますし、疲労もします。(国籍不明)

 

タスコの単眼鏡なら、確か昔ブラックホールで買った福袋の中に入ってたのがどっかにあったはず……と思って探したら、違うメーカーの単眼鏡が出てきました(笑)。まあ、だいたい似たような形のものだったと思うので参考画像として。


  • これは、「下々の民のことを考慮しなかった」ことによって生じた問題だと思います。ルールを制定する連中が脳裏に描いていたのは、魅力的な会場と大規模な競技会で、トップレベルのエリート達が行う射撃大会です。そういったイベントでは当たり前のように電子標的による集計が行われますから、射手がいちいち自分でスコープを使って着弾位置を確認する必要なんかありません。トップエリートを除いた世界の残りの射手は、昔と同じようにハンドクランクを回して紙のターゲットを交換しなければならないという事実(またはそれよりも更に劣悪な環境であること)は彼らにとっては考慮の範囲外になるのでしょう。
    電子標的が普及する前は、大きなイベントでハンドクランクのペーパーターゲットを使用する場合にはターゲット1枚につきたった2発しか撃てませんでした。なので、スポッティングスコープが使えないということはそれほど大きな問題ではありませんでした。
    幸いにも、私たちのローカルマッチの運営はこのルールを無視してくれます。(マサチューセッツ州)

 

  • スウェーデンでは、誰でも全国大会に出場できます。皆さんの国でも、多くの場合は大丈夫なのではないかと思うのですが……。そういった大会ではMegalinkやSiusが設置されているので、スポッティングスコープが使えないことは特に大きな問題にはなりません。(スウェーデン)

 

  • ターゲットペーパーの白いところにばっかり撃てば、スコープなんか使わなくても着弾点は一目瞭然ですよ!私みたいに!私みたいに!(新しいグローバル英国)

 

  • ノルウェーでは、電動標的交換機や電子標的がない場合に限り、全国大会でもスポッティングスコープの使用が許可されます。(ノルウェー)

 

  • 数年前のことなんですが、私が担当している生徒に一人えらく優秀なヤツがいまして、「カメラが付属した自動標的交換機」なんてものを作り上げてしまいました。カメラが撮影している標的の画像を手元にあるタブレットやスマホに転送して表示することができるばかりでなく、タブレットあるいはスマホの操作で標的交換まで自動で行うことができるスグレモノです。試しに屋外射場に持ち出して使ってみたんですが、100m以上離れても全く問題なく作動しました。ブルートゥースを使用しないワイヤレスネットワーク接続で作動するもので、私達が求める全ての要素がそこにありました。小さいカメラモジュール、ワイヤレスボード、そしてバッテリーが入った小さいボックスで構成されています。(イギリス)

 

写真も図面もないので書かれてるテキストから想像するしかないのですが、コレってかなり良さげですよね! どんな場所でもこの装置さえあれば「ほぼ完璧に施設が整った射撃場」と同等になるわけですから、射撃大会を出張開催してる身だとものすごい興味惹かれます。

 

  • 手動クランク式や電動標的交換機しか設置されていないクラブと、電子標的が設置されたクラブとを比較した場合、後者のクラブでエアピストルをやっている射手は射撃のたびに銃を握り直さなくても良いという大きなアドバンテージがあります。
    優れたカスタマイズが施されたグリップは、握り直しても毎回同じように握れる「再現性」を提供してくれます。しかしそれは、「ピストルを全く降ろさずに撃ち続ける」のと同じになるという意味ではありません。
    幅が1mしかないといっても、スコープスタンドをそこに取り付けるのはそれほど難しいことではありません。スコープの覗くところが45度に曲がっているタイプのスコープなら、設置はもっと簡単になります。真後ろから覗かなければならないストレートタイプだと、再装填の手順が少し厄介になります。(アメリカ・テキサス州タイラー)

 

  • 今更何言ってんだと言われそうですが……。ISSFルールで1圏的1発撃ち込みで撃ってるなら、撃つたびにどうせターゲットを手元に引き寄せなきゃならないんでスコープ使うまでもなく着弾位置は確認できますよね?(オーストラリア、シドニー)

読んでて思ったのですが、海外だと小さい大会では紙標的を使う場合に1圏的1発撃ち込みや2発撃ち込みなんていう「もったいないこと」はあんまりしてないっぽいんですよね。「大きな大会では(信じられないことに)たった2発しか1枚のターゲットに撃てなかった」みたいなこと書いてますから。ということは小さな大会ならば、具体的に数字は書いてないものの5発とか10発撃ち込みにしちゃうところも珍しくない、みたいなニュアンスを感じます。

日本だと、どんな小さい大会でも2発撃ち込み、そこそこグレードが高くなると1発撃ち込みになります。60発競技の場合、前者は30枚+試射4枚の34枚、後者に至っては64枚もの公式ターゲットを1人が1回の試合で消費してしまいます。いきおいそれは集計作業の手間や、参加費の増大に繋がってきます。例えばこれをいっそ10発撃ち込みでOKとしてしまえば使うターゲットはたった10枚になります。標的を集めるのも楽になりますし集計だってけっこう楽になるんじゃないかと思います。

問題は、ある程度以上にレベルが高い人だと10発撃ち込みではとても集計ができない(穴が全部1個にまとまってしまう)ということですが……。普及大会や都の大会なんかで他の方のターゲットを見ると、失礼ながら(遠回しに書きますよ)10発撃ち込みでもそこそこ正確に採点ができそうな感じで穴が開いている方が大多数なんですよね。なら、グレードが低い大会では5発あるいは10発撃ち込みOKにして開催側の負担を減らし参加費も安くすることで参加者を増やし、それではとても採点が無理なレベルになった方はもっと上の大会に参加する、みたいな住み分けはできないものでしょうか。

紙標的を使うピストル種目の大会会場は、台車使わないととても運べないレベルの大量のターゲットに溢れかえる採点室の大変そうな様子がとにかく印象に残るものになってます。1発撃ち込み、2発撃ち込みのルールは、あそこまで大変な思いをしなければならないほどに守らなきゃならない重要で不可欠なルールなのかどうか、改めて考え直す意味はあるんじゃないかと思います。

池上ヒロシ

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