鉄やアルミよりも圧倒的に「軽くて強い」材料であるカーボンファイバー。高級スポーツ用品に使われる定番の素材です。もちろん競技銃の世界でも同様です。
Wikipediaによると、カーボンファイバーは鉄に比べて比重で1/4、比強度で10倍とのこと。どういう意味かというと、例えば同じ部品を鉄とカーボンファイバーで作ると、単純計算でカーボン製は鉄の1/4の重さしかないのに、強度は2倍半もあるということになります。「軽くて強い」というのはスポーツ用品(にかぎらず機械製品全般)において万難排する絶対的なメリットの一つですから、少々のコストの高さにもかかわらず多くのスポーツ用品において「高級品」といったら「カーボン製」といったイメージがあります。競技銃の世界ではどうでしょう。銃は基本的に重ければ重いほどよく当たりますから、「軽さ」というのはそれほど重要視されないように思えます。ですがルールで重さの上限がある以上、「どこを重くして、どこを軽くするか」の選択肢を広げるという意味で軽くて丈夫な素材にはそれなりに存在意義があります。
また、誰も彼もがルール上限いっぱいまで重い銃を使いたがるというわけでもなく、ピストルの場合は特にそうですが主に体力的な問題などであえて軽い銃を使うという人もいます。軽い銃でもウエイトを追加すれば簡単に重くできますが、既に重い銃を軽量化するのは並大抵のことじゃありません。とはいえ、「なにがなんでも軽量化したい」という切実な要求があることが多い他のスポーツに比べれば、射撃競技の世界ではカーボン素材の存在価値はそれほど大きくないのは事実です。
今回は、そんな「軽量なカーボン製エアピストル」の購入相談と、そこから派生した銃の選び方談義について、TargetTalkで盛り上がっていたトピックから抜粋して紹介したいと思います。
LP400 Carbonの入手を検討する
引用元:Considering getting the LP400 Carbon (TargetTalk)
- 私は現在イギリス在住の射手です。数年前からスモールボアライフル(主に伏射)を撃っていましたが、最近になって10mエアピストルが面白くなってきました。今は、さらに自分のスキルを伸ばしたいと思っています。
シューティングコーチの勧めもあり、競技用の高品質な銃を買うことにしました。コーチは「軽量モデルのほうが良いだろう」といいます。なので最初に考えていたIZH46はその重さで候補から外れました。
そこで候補に入ってきたのがワルサーLP400です。ネットで販売してるところをあちこち見て回ったところによると、価格は1400~1500ポンド(訳注:日本円で22~23万円程度)なので十分に想定していた予算に収まります。他の銃で試してみたところ、スモール・サイズのグリップが私にはちょうどよかったので、ワルサーではMサイズがおそらく私にちょうどよいサイズになるのではないかと思います(ワルサーのグリップは、明らかに他メーカーよりも小さいサイズです)。
どなたか、LP400カーボンを手にしてみた方はいらっしゃいますか? この銃には、何らかの技術的な問題があったりしませんか? イギリスでのサポートについては、ワルサーは一般的に信頼できますか?
よろしくお願いします。(イギリス)
- こんにちは、ようこそTargetTalkへ!
私はあなたの期待に応えることができます。LP400カーボンは友人が所持しており、私も何度か撃ったことがあります。一言でいうと、「OKです、ちゃんと撃てます」という回答になります。
問題があるとすれば、初期バージョンのものはレギュレータとボトルの接合ネジに問題があり、アダプターのかじりを起こしやすいというトラブルがいくつかありました。これは、今販売されているバージョンのものでは解決されているようです。
LP400カーボンの軽さはナイスです。
私のお薦めは、他にもいくつかの一般的なモデルを試射してみて、あなたが一番好きなものを探してみることです。ワルサーLP400に即決せず、モリーニ、パルディーニ、ステイヤーなどを試してみることを提案します。(アオテアロア/ニュージーランド)
- LP400カーボンの重さはたった870gです。いくらなんでも軽すぎます。同じ軽量モデルでも、私だったら950gあるLP400aluのほうを選びます。(ローマ/イタリア)
- 息子がそれ撃ってますが、たいそう気に入ってます。グリップはまさに彼のために作られたかのようにフィットしますし、トリガーも実に素晴らしいです。気をつけなきゃならない点が一つありまして、シリンダーが完全にねじ込まれていない時でも撃ててしまうのですがパワーが極端に落ちてしまい、弾が銃身の途中で止まってしまうことがあるのです。そういう状態になっているのに気付かずに何発も撃って銃身内に4つも停弾してしまい、真鍮の棒を使って強引に押し出してやらないとならなくなったことがありました。(国籍不明)
- 私もLP400カーボンを1丁所持して、とても気に入っています。IZH46よりも良いですね。私のベストスコアはLP400で記録されたものです。
この銃のポテンシャルを十分に発揮させてやるのは、私にはとても長い時間がかかることになると思います。なお、ウエイトは簡単に足すことができます。軽量化するのに比べたら遥かに簡単です。(アメリカ/ニュージャージー州)
- 私はこれまで1ダースほどの、「世界トップレベルのクオリティを持つ競技用ピストル」を所持してきました。その中には全てのSSP(ワルサーで作られたものを除く)や、2丁のステイヤーLP10を含む多くのプリチャージ式があります。以前、私はステイヤーを購入するためにLP400カーボンを売りました。実際のところ、私は間違いを犯しました……ここ数年のステイヤーの数々の輝かしい業績から、ステイヤーのことを聖杯であるかのように求め訴えるようになってしまっていました。ワルサーを売り払って数ヶ月も経ってから買い戻そうとしたのですが、神様のお導きでしょう、私のワルサーを購入した人はそれに快く同意してくれました。
もし、「その銃はあまりにも軽い」という人がいても気にすることはありません。あなたはいつでも好きなようにウエイトを足すことができます。しかし(足していない)ウエイトを取り除くことはできないのです。
私のステイヤーはショートシリンダー・ライフルトリガー仕様のものでした。私は銃を私が望む重量に近づけようと思い、バレルシュラウドを取り外しました。ワルサーはそんなことはせずとも既にグレートな重さです(訳注:英語ネイティブな方の「グレート」の使い方って凄い広範囲なんで意味が取りづらいんですが、とにかく最大級に褒めてるんだと思っておけばOKです)。バランスもワンダフルです。発射音は他のプリチャージ式ピストルよりずっと静かで、シリンダーあたりの発射可能弾数も多いです。前後サイト間距離の長さは正確な照準を可能としてくれます。
私の銃には機械的なトラブルが起きたことはありません。聞いた話では、シリンダーの接合部分にかじりつきが生じてしまうという問題が生じたことがあるということですが、定期的にオイルを差してねじ込みの際には十分に注意してゆっくり行うことで防げる問題だと思います。
私の所持しているクラブ・バージョンは、パーツのいくつかがヘンメリー製になっていたりする格安仕様のものですが、本当に重要なパーツは全てワルサー製です。私が所属している射撃クラブでは、3人が同じ銃を撃っています。私が今後、このワルサーを手放すことがあるとしたら、それは(クラブではない)フルバージョンを購入する資金を作るためになるでしょう。
クドクドと書いてきましたが、「なぜ私はLP400を使っているのか」については他スレッドへの投稿でいろいろと書いてきましたんでそちらを検索して読んでみてください。ただとにかく言えることは、なにが自分自身にとってベストなのかを探して決めるためには、それらの銃を実際に手に入れて試してみる必要があるということです。質問者さんは、既に「IZHは重すぎる」という結果を、実際にはノーズヘビーでバランスがダメダメだってことを見出しています。私はそれに完全に同意します。しかし、大勢の人が「IZHこそ自分にとって完璧であり、重量とバランスは素晴らしい」と主張しているのだということも忘れてはなりません。
こういった場所であなたが手に入れることができるのはあくまで「個人的な意見」であり、それは数多くある意見の一端でしかありません。あなたは自分のホームワークを行う必要があります。(LA/バトンルージュ)
- 私は多くのエアピストルを所持しています。その中には2つのLP400があります。一つはカーボン・ロング、もうひとつはalu・コンパクトです。LP400、特に最新の更新されたバージョンは、価格的にちょっと手が届かないレベルにまで行ってしまってます。
私は、一つの重要な真実を見つけました….
質問にあるそれそのもののモデルを所有している経験豊富なシューティング選手からアドバイスを受けてください。その一方で、「こんなことを言ってる人がいた」とか、そういう意見に対しては慎重になってください。ある特定のブランドに偏っている可能性が高い人から聞いた内容については特に。(オーストラリア)
- スレッドを乗っ取るつもりはないんですが聞いてください……。
大抵の射手は、自分が所持して撃っている銃については良いように語るものです。だからこそ、あなたはできるだけ多種多様の製品を撃ってみて、センシティブな人々が、どれだけ異なった感覚を持っているのかということを身にしみて知っておいてください。
私のファインベルクバウP44は、多くの人々にとってはカップ・オブ・ティー(お気に入り)ではありませんが、私にとっては最高の1杯です。(国籍不明)
- まあそんなことより聞いてください、ちょっとトピックからは離れるんですが、ここにごく少数だけ販売された「台湾製のLP400コピー」があるんです。見た目はそうですね、LP400とAP20のハイブリッドのように見えます。スペックを書き出してみますね。
Listone LAP-1 PCPエアピストル
特徴:
・高品質の10m競技用エアピストル
・プリチャージされた空気圧
・エアリリースノブ
・レゾルバ・ダブルコンペンセイター
・アンビデクストラス(利き手の左右どちらにも対応)
・オールインワンユニバーサルグリップ(右/左)、可変サイズ(S~L)
・マイクロレギュレータ圧力システム
・特許取得済みの調整可能なアーミング機構
・取り外し可能なエアシリンダー
・アジャスタブル・ウエイトとトリガーメカニズム
・リアサイト(上下左右)とフロントサイトは完全に調整可能
・ISSFルールに適合
仕様:
・口径:.177 cal
・バレル:ライフリング付き
・初速:550 fps
・ショット数:1回充填で最大90ショット
・射撃モード:単発のみ
・ラウドネス:2-Low-Medium
・空気圧:最大200 bar
・バレルの長さ:25cm
・全長:45cm
・全高:14cm
・幅:7cm
・重量:1.976ポンド(約900グラム)
(コスタリカ)
- 私には、ワルサーとステイヤーのトリガーの違いなんてわからないです……。好きか嫌いかで選んじゃって構わないんじゃないかと思います。(バージニア州ヘイマーケット)
- 以前所持していましたが、左グリップのネジが壊れて手放しました。この部分はLP400の注意点です。頻繁にそこを締めたり緩めたりすると危険です。
最も良く起きるトラブルは、このピストルはグリップ・ポジションが簡単に変わってしまう点です。私は壊れたネジを直してから銃を売りました。エアシリンダーを一つしか持っていない場合、大会などに出たときにエア漏れを起こしたり壊れたりすると致命的です。
正直に言えば、ファインベルクバウの新型P8XのほうがワルサーLP400よりも優れていると思います。実際に試射してみましたが、P8XはP44とはかなり違っています。ステイヤーEvoよりも良いくらいです。
悲しむべきことに、P8Xを試射する前にモリーニ162EIを買ってしまったのですが。(国籍不明)
- どうやらワルサーは、新型としてLP500を発表するようです。ミュンヘンでカモフラージュ・ペイントが施されたエアピストルをメーカーの人が持っているのが発見されました。写真を見る限りではエレクトリック・トリガーを備えているみたいです。(アテネ、ギリシャ)
- 新型を発表するなら、先週のショット・ショーで発表されてたはずじゃないかなと思うのですが……(この書き込みは2018年1月31日)。イベントでは特に何も聞いてません。けれど、ワルサーがアメリカの競技用エアガン市場をあまり有望視していない可能性もありますし……。(アメリカ・マサチューセッツ州)
- Youtubeに動画がUPされてますよ。
(イギリス・ルイスリップ)
- ワルサーによると、新型のLP500は2018年3月以降に発売されるとのことです。(シドニー/オーストラリア)
- 新型のワルサーLP500が2018年3月から発売される予定とのことです。おそらく、IWAの直後あたりじゃないでしょうか!! エレクトリック・トリガー仕様になるのは確からしいです。乞うご期待!(ドイツの銃砲店のようです。リンクも同ショップの販売ページ)
上記販売ページにある情報によるとワルサーの新型エアピストルであるLP500について、現時点(2/5)で分かってる情報は以下のような感じらしいです。
- モジュラーシステムの導入。顧客の要求に応じて個別に仕様が異なる「非常に個性的な」LP500を製造し迅速に配送できる。
- 交換式トリガーユニット「STING」。トリガーグループがユニットになっており、メカニカル・トリガーとエレクトリック・トリガーを、後からいつでも交換可能である。
- カーボン製のエアシリンダー。複合アルミニウムカーボン製のエアシリンダーを採用、強度が高く耐振性が強く軽いという特徴がある。また耐用年数は20年。
注文に応じて様々な仕様の製品を個別に製造して配送って、まるで最近の自動車みたいな感じですが、エアピストルにそこまで細かい仕様の違いなんてそもそもあるんでしょうか……。せいぜい色の違いくらい?
- 私は、発売されてから最低でも6ヶ月経つまでは手を出すつもりはありません。人柱になってくれる方々による「製品開発」が行われるのを待ちます……。LP400(他にはMG2やパルディーニ・エレクトリックなど)みたいに。(ニュージーランド)
ワルサーは、以前から「新型を出すと旧型をバッサリ切り捨てる」と言われてまして、新型が出るという話は現行モデルのユーザーにとっては楽しみな気持ち半分、戦々恐々とする気持ち半分といった感じになるとか。新型が出たからといってすぐにそれに買い換えれば良いのかというとそうでもなく、出たばっかりの製品に特有の不具合が一通り出きってからじゃないと怖くて買えない、って話もあったりするんで悩ましいところですね。
それにしても、こういった感じの「どの銃を買えばいいんでしょうね」って質問に対する回答って、TargetTalkだと「とりあえずいろいろ撃ってみて、気に入ったのを書いなさい」ってのが王道回答になってます。日本だと、よっぽど特殊な立場にいる人でもなければ不可能なやり方です。
他の人の銃を、「どんな感じなのか知りたいから、ちょっと撃たせて」って頼めたらこのブログでも書けることがいろいろ増えると思うのですが、法的な理由によりそれは絶対NGな行為になります。射撃場において、同種の銃の所持許可を持ってる人間同士が、互いの銃を貸し借りすることにどれだけの社会的危険性があるのか、正直言って疑問なのですが、それが問答無用で銃刀法違反になってしまうのが日本です。もちろん私も一度もやったことありません。捕まるの怖いですからね。