靴でスコアは買えるか?【海外の反応】

「道具のせいにするな!練習が足りないだけだ!」とか良く言われますが、実際に道具を新調したり新しいグッズを使ってみたりしただけでスコアが劇的にアップしたりすることが珍しくないのが射撃の世界です。

ピストル射撃は(ライフルと違って)道具に頼る部分が格段に少ないスポーツですが、それでも銃そのものとは別に、スコアをアップするために射撃中に使用するアイテムはいくつかあります。といっても事実上は2種類だけ、メガネやその周辺機器と、靴。それで全部です。敢えていうなら耳栓やイヤマフも含まれるかもしれません。

メガネのレンズやカラーフィルター、ブラインダー、そして新製品として試しに作って使ってみたら劇的な効果があって自分でもびっくりのアイリスシャッターなどについてはこれまでもさんざんやってきましたので、今回は足元、靴についてです。
 

ピストル射撃で使える靴はルールでけっこう厳しい制限があります。簡単に書くと「普通に歩ける普通の靴」でなければなりません。


以前のルールではピストル射撃でも靴底が板のように真っ平らでカチカチで、床に吸盤みたいに吸い付くタイプの「専用シューズ」が使用可能だったのですが、数年前のルール変更で使用不可になりました。今では靴底の柔らかさ(曲げやすさ)まで数値で規定があり、またそれ以外にも「履いたままで普通に歩けること」なんていう条文まで追加されています。

ピストル射撃専用シューズも、ルールをクリアするために硬かった靴底にスリットを入れて曲げやすくしたりした新製品を発売してはいるのですが、それは結果として「専用シューズの優位点」を消すことにもなっています。事実上、本当の意味で「普通の靴」でなければほぼ使用不可に近いといって構わないでしょう。

また、ピストル射手は「荷物が少なくて済む」というのがメリットの一つだったりもするわけで、大会や練習のたびに持ち運ぶ荷物に頑丈で大柄な靴を追加する、というのも躊躇われるものがあります。実際、射場までの行き帰りに履いているのと同じ靴で射撃もできるのなら、それが一番楽ですし。

そんなことから、「ピストル射撃用のシューズ」というのは、かなり高いレベルまで行っていろいろなことを試して、それでもなおさらに高みを目指したい人が「なにかもう一つ、できることはないか」という望みを託して手を伸ばす分野、というイメージがあります。

海外射撃掲示板の「TargetTalk」で、自己申告を信じるならば相当に高いレベルの方が、「さらなるステップアップ」を目指し、射撃に適した靴探しに乗り出すというスレッドが立っていました。いろいろおもしろい選択肢も示されていたので日本の射手(実銃、APS両方)にも役に立つ情報ではないかと思い、抜粋して紹介してみたいと思います。

ピストルシューズでスコアは上がりますか?

(Do Pistol shoes add to performance? 引用元:TargetTalk)


  • アベレージが570くらいのピストル射手です(訳者注:相当なもんです。日本だったら「全国大会では表彰台常連、国の強化選手じゃないのが不思議」ってレベルです)。これまでは、何を履くかなんてことには全く気を配ることはなくカジュアルなスポーツシューズを履いていました。ですが、今は次のレベルに到達するために何かできることはないかと探しています。
    射撃専用のシューズは、通常のスポーツシューズよりもスコアが上がりますか?
    あるいは、もしかしたら特定のスポーツシューズの種類やブランドが射撃専用シューズのような効果を発揮したりしませんでしょうか? 普通のシューズでも良い効果がでるようなら、試合や練習の際に持ち歩かなければならない荷物が減るので助かります。
    アドバイスをお願いします。(国籍不明ですが、インドによくある名前がニックネームになっています)

 

  • あなたが普段使っている「普通の」シューズで問題ありません。ただしそのシューズが、やけに厚底だったり、フワフワの靴底だったりしなければの話ですが。私はもう570点台を撃つことはできませんが、それでも「グニャグニャの靴を履いていると、安定性が変わる」ということくらいは断言できます。靴が変わった程度であなたの据銃能力が劇的に向上するということはないでしょうが、小さな効果は期待できます。(マサチューセッツ州)

 

  • 世界クラスのシューターがスペシャルなシューズを履いているところなんか見たことがありません。Arnie Vitarboによれば、普通の「coaches shoes」で十分に良いとのことです(訳者注:コーチってブランド名かと思いきや、「コーチ(指導者)用のシューズ」っていうジャンルがスポーツシューズの世界にはあるみたいですね……。一般には「トレーニングシューズ」に分類されるものが該当するようです――Amazonリンク)。
    私自身、「ペニー・ローファー」をよく着用しています。(AZスコッツデール)

 

  • ルールが変更になりましたので、ピストル射撃用に特別に作られたシューズの必要性が減少しました。かつてのように、アヒルのようにひょこひょこと歩くことしかできないような「非常に硬い靴底」の靴を使うことはできません。
    良い選択と言えるのは、「平らなソール付きのウォーキングシューズ」です。(アメリカ)

 

  • 私は靴を履かず、素足で射撃をしています。
    ISSFルールでの靴に関する規定をどう解釈するかですが、「靴を履かなければならない」とは書かれてませんよね?
    真面目な話、私はこの夏はブリッケンリッジコロラドで暮らしましたが、競技スキーヤーは皆、素足でそこらじゅうを走り回っていました。バランス感覚は足元から脳に届くからだそうです。
    試してみてください!(テネシー州)

 

  • ピストルおよびライフルのルールでは素足は禁じられています。

    6.19.3.2 選手はサンダル履きまたは靴を履かない(靴下を履く、履かないにかかわらず)ことはできない。

    「つま先やかかとが開放されていたり、サンダルやそういった類の靴は許されない」としか書いていない(素足がダメだとは明言していない)のはショットガンのルールです。
    (イギリス・ルイスリップ)

 

  • いろいろ記事を読んでいると、ウエイトリフティング用シューズについて言及している記事をちらほらと見かけます。これらはどうなのでしょう、良いのでしょうか? 長時間履いていても足が傷つかないように優れたクッションを備えていますか?(インド)

 

  • ウエイトリフティング用シューズがどうとかは関係なく、「クッション性が良い」ことは安定性を得るための最良の手段ではありません。土踏まずのアーチをリジッドでサポートするフィッティング機能は素晴らしいですが、クッション効果があると安定性が損なわれます。私はAdidasの内部が何であるかを知りません。(マサチューセッツ州)

 

  • Adidasの「Samba」というフラットな靴底のシューズがあります。メンズ、レディース、子供用と揃っています。安価で、安定性も十分です。(ノースロンドン、オハイオ)

 

デッキシューズみたいなもんかと思ったら、屋内サッカー用のシューズなんだとか。これは見るからに安定しそうで良い感じですね。
※画像はAmazon販売ページより引用


 

  • 私は、ロープロファイル(高さが低いタイプ)のトレイルハイキングシューズを履いています。横方向に安定するという利点があります。
    射撃用シューズと同じような安定性をもたらしてくれるシューズとして私が見つけたのが、「Solomon Trail Running Shoe」です。。この靴は、足首が横方向に転がらないようにしてくれる傾向があります。これは、立っている間にあなたの足首が動く軸の1つを減らします。
    以前どこかで書きましたが、私はランニングシューズで世界クラスの得点を撃つ射手を何人も見てきました。多くを占めるのはメンタルなことであり、それ以外の要素は些細なものです。(アメリカ・オレゴン州)

 
訳者注:「Solomon」ってのは、「Salomon(サロモン)」の書き間違いじゃないかと思います。画像はAmazon販売リンクから引用。お世辞にも「ピストル射撃向き」には見えませんが……。

 

  • Jin Jong-ohはウエイトリフティング用のシューズを好んで使用しています。(ユタ州)
写真:ロンドンオリンピックでのJin Jong-ohの射撃(AP Photo/Darron Cummings)


訳者注:これも少しずつ有名になってきたようで、大きな大会だと同ブランドのウエイトリフティング用シューズを履いているシューターを良く見かけるようになってきました。左写真はJin Jong-Ohが履いているのとは形が違いますが、おそらく新型に相当する製品なんじゃないかと思います(Amazon販売ページより引用)。



けっこういろんなメーカーのいろんな製品が「お薦め」として挙げられていました。けれど上記引用文中でも書かれてるとおり、靴を変えたからって劇的な効果があるってわけじゃない、というのは共通認識になっているようです。

私自身でいうと、先日まではごく普通の運動シューズを履いていました。メーカー名も特にわからない単なる安物シューズです。なぜその靴を選んで履いていたのかというと、つま先部分に小さいリフレクターが付いていたからです。位置的に言うとちょうど足の人差し指の第一関節の上あたりでしょうか。

スタンスを決める時に、暗い射場でつま先部分だけが光って見えるので正確な位置決めがやりやすかったんですね。コレって射撃用シューズにはディフォルトで備えていてもおかしくない便利機能だと思うんですがどうでしょうか。

とはいえ長く使っていてボロボロになって穴まで開いてきたんで、特にコダワリがあるわけでもないので別の「ごく普通のシューズ」を履いて撃つこともあります。靴底にクッションが入っていて特に射撃向きってわけでもなさそうなシューズですが、それでも560点台とか普通に出ちゃったりするわけで、「靴による影響なんて、あってもごくわずかなもの」ってのは確かにその通りなんだと思います。

池上ヒロシ

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