エアライフル射撃場を閉めた後に床を掃除していると、潰れた鉛弾の他にときどき小さいフェルト製の円筒が落ちているのを見つけることがあります。これは「フェルトペレット」とか「クリーニングペレット」と呼ばれてるもので、練習を終えた後に一発だけ、ないしは何発かを撃って、バレルの清掃を行うものです。
このフェルトペレット、昔から一般的に使われているものですが最近の銃では弊害も大きいと以前から言われていました。大昔のスプリング式(スプリングが伸びる力を使ってピストンを前進させて撃つもの)なら問題がなかったものの、新しい銃ではトラブルの元になるというのです。
ポンプ式(レバー操作で一発撃つ分だけ空気を圧縮するもの)の銃で空気を圧縮する際、シリンダー内の空気は断熱圧縮により高温となり、その時にシリンダー内にフェルト繊維が紛れ込んでいると発火してしまい、エアシールにダメージを与えるというものです。たかが人力でちょっと空気を圧縮したくらいで発火するような温度になるはずないだろう……と思いきや、実は油が染み込んだ木綿ってたった120℃で発火するそうなので(参考:Wikipedia)、ありえることに思えてきます。実際、銃砲店が自分のWebサイトに、「ポンプ式ではフェルトペレットを使うな」という警告とともに、小さな糸状の焼損が付いたエアパッキンの写真をUPしていたことがあったのを覚えています。
プリチャージ式(あらかじめ、数百気圧で空気を充填しておいた小型タンクを銃に取り付けて撃つもの)ではそういう問題は起こりにくいと思われるのですが、こんどは新型銃にはほぼもれなく付いてくるようになった反動軽減装置(アブソーバーとかスタビライザーと呼ばれているもの)に悪影響があるという話もあります。シリンダーとピストン間の微妙な摩擦の違いで射撃時の感触が変わってしまう反動軽減装置では、ほんのわずかな異物も命取りになるというのです。
「フェルトペレットは、ピストン&シリンダー内のグリスがバレル内にブシュブシュ吹き込んでくる大昔の狩猟用スプリング式ならともかく、競技用のエアライフル/ピストルには無用であるどころか弊害のほうが大きい」という意見が、とりあえず一番信頼が置けそうなものに思えます。
でも、だったらどうやってバレルクリーニングすれば良いのでしょう?
このように悩ましい空気銃のバレルクリーニング問題について、海外の射撃専門掲示板「TargetTalk」でも少し話題になっていたので抜粋して紹介してみたいと思います。
今回は、あまり意見が対立することもなくほぼ一瞬で結論めいたものが出ました。「使うな」ってのがそれです。
「バレルクリーニングという行為そのものが、する必要のないものである」と遠回しに書いてる人もいますね。当たらないのは、道具になにか問題があるせいなんだ、だから何かをすればきっと当たるようになるはずなんだという思い込みでバレルクリーニングをしているんだというものです。益が無くても害もないのなら、それはそれで「精神安定のためのおまじない」としてアリかもしれませんが、害があるのなら話は別になってきます。
ロッドの先にねじ込んで使うVFGフェルトクリーナーをエアピストルに使ったらどうか、という意見もありました。「装薬銃で使っていますが、フェルトペレットを撃つ時のような弊害はありません」とか書いてましたが、そもそも装薬銃じゃフェルトペレットは撃てないだろってツッコミをしちゃいけないんでしょうか(笑)。エアライフルの世界だったら、もしかしたらそういうやり方してる人もいるかもしれませんね。銃に求められる精度がエアピストルより数段上ですから。
ちなみに私の場合、「フェルトペレットは良くない」ってのは最初にハンドライフル所持した時点で言われてましたので、クリーニングに関してはワイヤー式のクリーニングキットを使っています。周囲がナイロンで覆われたワイヤーの片方の先端が輪になっているものです。
射撃動作を行わないのでアブソーバー等に繊維が吸い込まれる心配もありませんし(モリーニにはアブソーバーは付いていませんが)、ワイヤーですからクリーニング時にはライフリングに沿って自然に回転してくれるのでライフリングを変形させる心配もありません。
といっても、それほど頻繁にやってるわけでもなく、せいぜい年に1回か2回くらいでしょうか。クリーニング前後でグルーピングが良くなったり悪くなったりという実感もありません。ほとんどおまじないみたいなもんです。
[2020.06.03追記]ライフルショップエニスさんが使用方法を動画でUPしてくれています。参考になれば。