APSカップ会場では、APS-3ライフルの他にもいくつかマルゼン新製品や再販品の展示がされていましたので、まとめて紹介したいと思います。まず最初はグランドマスターMk2です。
APS-1グランドマスターは、APS-3が登場する以前はAPSカップハンドガンクラスにおいて圧倒的なシェアを誇っていた傑作エアガンです。メカニズム的には一般のエアーコッキングと同じで、ピストンを後退させてバネを縮ませておいて、トリガーを引くことでシアが外れ、勢い良く前進したピストンがシリンダー内で作り出す高圧空気によってBB弾を発射するというものです。
あらかじめ空気を圧縮しておいて、トリガーを引くことでバルブを開放する「コンプレスト・エアー式」のAPS-3に比べると、「ピストンが前進してから弾が出るため、トリガーを引いてから弾が出るまでの時間が長い」「ピストンが勢い良く前進することによって生じる振動が加速中のBB弾に影響を与える」「ピストン&シリンダーをグリップ上に配置しないとならない構造上、バレルやサイトがグリップから離れた場所(高いところ)に配置されてしまう」といったデメリットがあります。当然、命中精度も悪くなるだろうと思われがちですが、実はレストしてノーマル同士で比べてみるとAPS-3とグルーピングそのものはほとんど変わらないか、個体によってはAPS-3よりもグルーピングが小さくなる=よく当たるものすらあるくらいです。おそらく、トリガーの軽さによるものなのではないかと思われます。
APSシューターのほとんどがAPS-3を使うようになった今でも、APS-1グランドマスターを使い続けている人というのは少なからず(1割から2割ほど)いるようで、実に根強い人気を持ったエアガンと言えます。そんなAPS-1グランドマスターがバージョンアップした「マーク2」となって再登場するということで、展示されていた試作品をガラスケースごしに撮影したものをお送りします。
グランドマスターもAPS-3と同様に、いくつもの「限定モデル」が発売されてきました。単なる色変えモデルだったこともあれば、グリップと手首を固定してしまうようなオプションが付いたものもありました。その中でも確実に効果があるとされた「カスタム」の一つが、この「バレルブリッジ」です。
グランドマスターは前述のとおり、「ピストンが勢い良く前進しはじめてからBB弾が発射される」という宿命的な構造を持っています。ピストンの前進によって生じる振動をどれだけ押さえ込めるかが、このエアガンの精度を大きく左右します。バレルに伝わろうとする振動をグリップに逃がして減衰させようとする仕組みの一つが、分不相応なほどに大柄で頑丈なトリガーガードです。アルミの無垢材で作られた極めて頑丈なこのトリガーガードは、「ピストン&シリンダーとグリップを接続する」という重要な役目を持っています。
「バレルブリッジ」は、その接続をさらに頑丈にするためのパーツです。グランドマスターの年度限定生産モデルであるM97やM99に搭載されており、その効果は折り紙付きです。これが限定品ではなく通常販売されるグランドマスターにも標準装備されるようになったわけです。
他にも、インナーバレルは「シリコン含有無電解クロームメッキ」が施されたものが標準装備されているなど、これまで限定品でなければ手に入らなかったカスタム仕様を惜しみなく搭載したモデルとなるようです。価格や発売日は未定ですが、APS-3より高くなるということはおそらくないでしょうから、APS競技入門用エアガンとしての需要が期待できます。
本大会のライフルクラスでもユーザーが多いタイプ96。イギリス軍の制式スナイパーライフルであるL96がデザインモチーフとなっているエアガンですが、L96自体が「元オリンピックのライフル競技金メダリスト」がデザインしたものという異色の経歴を持っており、従来のスナイパーライフルとは違い競技銃でのノウハウを活かした様々なギミック、例えばバットプレートやチークピースの微妙な調整などが盛り込まれた「競技銃に近い狙撃銃」というデザインだったため、そのままでも十分にライフル射撃競技に使えるものになっています。
とはいえ、「最初っから競技向けに作られたもの」に比べれば不満点も生じるだろう……ということで新たに企画中なのが、「競技用ストック搭載モデル」である「タイプ96コンペティション」というわけです。
以上、APSカップ本大会会場で展示されていたマルゼン新製品&再販情報をお届けしました。