電子標的がやけに眩しく感じるのには2つの理由があることがわかりました。
前回はISSF公式サイトにある最新ルールブックのPDFへのリンクを貼っただけでしたが、それだけだとあまりに不親切なのでそれに補足する形で、今回は「つまり、どういうことなのか」を解説したいと思います。
2017年版、最新のISSFルールブックにある該当箇所を上記にスクリーンキャプチャで掲載しました。
日ラのWebサイトにある最新のルールブックの該当箇所は下記の通りです。
外部照明による標的面の照度は、測定器で測定し、標的の高さで射座に向いた位置で測らなければならない(A)。内部照明による標的面の照度の測定は、標的表面からの反射光を測定することで行われなければならない。
これだけだとなにがなにやらなので、図に描いてみましょう。
従来の外光式ターゲットでは、「ターゲットが照らされる明るさ」を計測して、それがルールにある数値以上ならOKとされていました。射手がターゲットを見た時に目にするのは、「ターゲットが反射した光」になりますから、それは反射する前の光よりも当然暗いものになります。資料によると、真っ白な紙(ケント紙など)で反射率が70~80%、コピー用紙みたいなものだと60~65%とのこと。ISSF公式の標的は真っ白というよりかなり茶色っぽい色をしていますから、反射率はこれより小さい数字になることはあっても、大きな数字になるということはないハズです。
一方、内部発光式では「標的面からの反射光」つまり、「標的から出てくる光」を計測することになっています。これは、そのまま射手が標的を見たときに目にする光と同じです。
ルールにあるとおりに「1800ルクス」に設定したとしても、外光式では射手が見るのはそれを半分程度までに減じた反射光、内部発光式では掛け値なしにそのままの強烈な光という違いが生じてしまうわけです。もっとも、ルールで定められているのはあくまで「最低値」であり、上限はどこまでという決まりはありません。だから、最大設定で眩しすぎる電子標的は、決して「ルール違反」というわけではないことには注意が必要です。
実際、大昔は屋外射場が珍しくなく、直射日光が照りつける標的を狙って撃っていた時代だってありました。直射日光の明るさってのは物凄いものがありまして、1800ルクスなんて生易しい数字じゃなく、3万とか10万ルクスといった文字通りの「桁違いの明るさ」でターゲットは照らされ、光り輝いていたわけです。
ただ、屋外射場の場合はターゲットだけじゃなく周囲だってけっこうな明るさがありました。ですから射手も、周りが十分に明るい環境の中で、同様に明るく照らされたターゲットを狙うという形になります。「ターゲットだけがやけに眩しい」というのとは違うのです。
電子標的に対して(特に視力が衰えてきた熟年射手が)眩しくて辛い、と感じるのは、薄暗い屋内射場で、ターゲットのそれも標的面の白いところだけがやけに眩しく光り輝いているからでしょう。暗い環境で瞳孔が開いている状態で、一部分だけが眩しく光るものを凝視し続けなければならないというのは、確かに苦行以外の何者でもありません。
ISSFルールでは、環境光(ターゲットではなく、射手が立っている場所や、標的との中間点の明るさ)についても「最低値」が定められていますが、それは500ルクスという「それほど明るくはない室内」に近い数字です。「暗い室内と、眩しい標的面との落差」が射手にとって負担になっている、ということがルール制定をしている人たちに伝われば(おそらく、近いうちに伝わることでしょう)、「環境光と標的面の明るさの差」をどの程度の割合までに収めるか、といったことがルールで定められるようになるのではないかと思います。
……というかそうしてくれないと、あまりにも辛すぎます。
※追記:初出時には、外光式と内部発光式での測定方法の違いが書かれた部分は「日本語訳はまだされていない」と書いていましたが、投稿後に念のためもう一度日ラWebサイトにあるルールブックを確認したら(6.4.14.2)以降がちゃんと記載されていました。アレ、さっき見たときには見当たらなかったのに……別の場所を確認してたんだろうか……。ということで、該当部分を削除・修正しました。