製品スペック
ノーベルアームズ PIN POINT VD21
1×33mm
バリアブルドットビルトインマウント
価格:¥8,900-(税込¥9,345-)
倍率:1倍
全長:82mm
重量:115g
上の写真は付属品一覧。予備の電池1本とクリーニングクロス、調整用の六角レンチ2本(大小)と、ラバー製のレンズ保護キャップ。これに英語の(正直言って、ちょっと分かりづらい)マニュアルが1枚付属する。ケースは味も素っ気もない真っ黒な紙の箱に製品名とメーカーロゴが印刷された白いシールが貼ってあるだけ、という「もうちょっと、店頭での見栄えとか気にしたデザインにしようよ…」と思わないこともないデザインだったりする。
上下左右の調節は、六角レンチを使って行なう。明るさ調節ダイヤルの後ろに上下方向の(エレベーション)調節ネジ、左側面に左右方向の(ウインデージ)調節ネジがついている。両方とも分かりやすく「UP」「R」と矢印付きで、どちらに回すと着弾点がどちらに動くかが書かれているので、よほどのことがないかぎり間違えるということはないだろう。
念のため。弾が下に当たる時には「UP」の方、上に当たるときはその逆に回す。左に当たるときには「R」の方、右に当たるときはその逆だ。
ここらへんが、安価なサイトとそうでないちゃんとしたサイトの違いにもなっている。安価なドットサイトだとフツーにネジでそのまま発光部を上下左右に動かして調節しようとしている製品が多い。バックラッシュのせいで「回してもまったくドットが動かない」という状態になりがちだし、レンズと発光部の位置関係の変化でドットの見え方が変わったり(上下に動かすとドットが縦に伸びたり縮んだり)といった現象が起きたりする。
レンズと発光部の位置関係は強固な金属部品に固定されていて全く変更せず、上下左右の調節は本体とマウントの位置関係の変化で行なうという方式が、繊細なドットの形状の維持や大きさの調整機能を損なわない秘訣だと思われる。
マニュアルによると1クリックあたり1MOAの調節とのことだ。MOAというのは角度の単位で、「100ヤード先で1インチ」に相当する。ヤードだのインチだの、文明国ではとっくに廃れている(はずの)単位を平気で使われるあたり、射撃用品ってのは人を混乱させるのがよっぽど好きらしい。文明人らしい単位に直すと「91.44mで25.4mm」となる。エアガンで実用的な距離では、「10mで2.8mm」、「5mで1.4mm」といったところだ。
10mの距離でドットをターゲットの中心に合わせて撃って、下に2cm、右に1cmズレていた場合、「UP」の方向に7クリック(20/2.8=7.1)、「R」の反対方向に4クリック(10/2.8=3.6)回せば、だいたいターゲットの中心あたりに着弾するようになるということになる。ただし、近距離で撃つ場合は特別に気にしなければならない部分もある。それについては後述する。
では、このネジはなんのためのネジなのだろうか? マニュアルには使い方は一切書いてなくて、ただ名称が「ロッキングスクリュウ」である、ということだけが記載されている。
注意点としては、ロッキングスクリュウを締めこんだ状態で上下左右の調節ネジを回してはいけないということ。回せば回ってしまうのだが、上写真で締めこんで食い込んだ部分がガリガリと削れてしまう形になる。上下左右の調節をする際には、ロッキングスクリュウを必ず緩めておくことが重要だ。また、部品の噛み合いの関係で、ロッキングスクリュウを締めこんだことによりサイトの調節が少し動くことがある。その場合は、一度ロッキングスクリュウを緩めて再度調節し、またロッキングスクリュウを締めこんで…という繰り返しにより調節を煮詰めていくことになる。
ドットサイトは、レンズ上に光点を擬似的に「遠距離」に浮かんでいるような形で投影する機械だ。その「遠距離」というのが具体的にどのくらいの距離なのかは、製品によって差がある。ほとんどの製品ははるかに遠い距離、いわゆる「無限遠」にドットが投影される。ドットサイトを固定した状態でサイトを覗いて、顔の位置だけを動かしてみることによってドットの投影距離を調べることができる。近距離にあるモノの上にドットを置いて、顔の位置を動かしたときにドットがそのモノの上を動くように見える場合、それはドットが遠いか、近いか(よほどの粗悪品でもないかぎり、ドットの投影距離が近すぎるということはないが)のどちらかだ。投影距離が遠い場合は、ドットはターゲットを「追い越す」ような形で動く。
これを防ぐための方法は2つある。一つは、ドットの投影距離が射撃距離と同じになっているドットサイトを購入すること。だが5mとか10mといった近距離に調節してあるドットサイトなど皆無に等しい(少なくてもノーベルアームズ製品では存在しない。PINPOINT VD21のドットも無限遠に投影されている)。となるともう一つの方法は、常にドットがスクリーンの中心にあるような形で照準して撃つということだ。ドットサイトの利点の一つを潰してしまうことになるが、これが最も現実的な対応の方法だろう。
VD21は、緻密で正確なドットのサイズ調節機能をもち、シンプルな上下左右調節メカニズムにより広範囲にわたる確実なゼロインを可能にしたサイトだ。ただしエアガンに使う場合は、ドットの投影距離が無限遠になっているため、特に5mとか10mといった近距離で数ミリ単位が勝敗に直結するような精密射撃を行なう場合には注意が必要になる。とはいえ、幅が広く歪みの少ないレンズは素早い照準を大いに手助けしてくれる。ターゲットが十分に大きいシューティングマッチならば投影距離の差による着弾のズレはほとんど問題にならないだろう。