W杯で日本選手が金メダル【海外の反応】

2016RIOオリンピックが終わり、次の2020TOKYOにむけての前哨戦がスタートしました。その第一弾となる世界大会、ISSFワールドカップの2017年第1回大会が、先月末にインドのニューデリーで開催されました。

10mピストル(エアピストル)では、日本の松田知幸、堀水宏次郎の2人がそれぞれ本戦4位・8位でファイナルに進みました。松田知幸は中盤から高得点を連発、2位以下に圧倒的な大差を付けてそのままフィニッシュ、ワールドカップで7個目の金メダル(エアピストルでは2個目)を獲得しました。
 


2月28日、インドのニューデリーで開催されているISSFワールドカップの10mピストル(エアピストル)競技にて優勝した日本の松田知幸選手(神奈川県警)。写真はISSF公式サイトより。

(文中敬称略で失礼します)

見どころは地元インドの選手の大逆転です(24:30あたりから)。

ISSFニュースでも当然とりあげられていますので抜粋して翻訳してみます。

Men’s 10m Air Pistol: Matsuda beats Olympic Champ Hoang, India’s Rai pockets Bronze.

http://www.issf-sports.org/news.ashx?newsid=2747


2010年の世界チャンピオンである日本の松田が、今日の10mエア・ピストル・メンズ最終戦でベトナムのオリンピックチャンピオンであるホアンを圧倒しました。インドのJitu Raiは一時は7位まで順位を落としたところから3位まで順位をあげ、ホームの群衆の支持を得て銅メダルを獲得しました。

現在のオリンピックチャンピオンであるベトナムのホアン・スワン・ヴィン(42)と、2010年世界チャンピオンである日本の松田知幸(41)が、ニューデリーで開催されたISSFワールドカップの男子10mエアピストルファイナルのスコアボードの上で決闘しました。

2人の経験豊富な選手が互いに首位を奪いあう展開になりましたが、ファイナルの18発目で松田がホアンに差をつけ、そのまま最終発までリードを守りました。

日本の射撃選手は240.1点のスコアで最も眩しく輝くメダルを獲得し、エアピストルの新しい世界記録を樹立しました(訳者注:ファイナルのルールが変わったので優勝すれば自動的に世界記録だったのです)。彼が前回獲得した金メダルは、6年前にシドニーで行われたISSFワールドカップのものです。

オリンピックチャンピオンのホアンは236.6得点で2位につけました。

しかし、観衆の注目は、地元インドの選手であるJitu Rai(29)でした。彼のファイナルのスタートはけっして良いものではありませんでした。12発目の時点で彼は7位まで順位を落としており、わずか0.2ポイント差で最初の8位決定(脱落)から生き残りました。それが転換点となりました。熱狂的で騒々しい故郷の群衆に支えられ、Raiはターゲットに集中することができました。

優秀な10連射でベトナムのTRAN Quoc Cuong(155.8点で6位)、中華人民共和国のYANG Wei(176.2で5位)を追い抜き、順位を上げました。

18発目でRaiは10.6を2連射しメダルを確定します。地元インドサポーターの大歓声の中、合計216.7ポイントで銅メダルを獲得しました。


例によって、「10.0」を基準としてそれよりプラスかマイナスかを見るグラフを作ってみました。これを見るとそのインド選手、出だしも悪かったですが11発目でも最下位(8位)まで落ちてますね。そこから辛くも表彰台まで生き残ったわけですが、抜群に良い点を撃ったというわけじゃなく、他選手が9点台前半を撃って脱落していく中、9点台後半~10点ギリを撃ち続けることで生き残った、という感じです。19~20発目で10点台後半を連射して中国選手を大逆転し3位に、さらに2位にまで順位を挙げ、そのまま銀メダル取れるかと思いきや最終射でプレッシャーに負けたのかとんでもないところ撃って3位決定という流れです。しかし後半の松田選手の圧倒的な強さといったら!

最初に「オリンピック前哨戦」と盛り上げる書き方しましたが、実は今の段階ではまだISSFワールドカップにはオリンピックの出場権がかかっていません。オリンピック開催2年前あたりからワールドカップで上位に入った選手の所属国にその種目での出場権が与えられるようになっていきます。だから今はまだ、「前哨戦の、そのまた前哨戦」といったところです。

とはいえ、来るべき2017-2020に向けて射撃シーンがどう移り変わっていくかを見るのに重要な「第1戦」であることは確かです。特にガンマニアとしては選手の皆さんの使用銃がどうなってるのかが気になるところ。そこでファイナル出場選手の使用銃をピックアップしてみましょう。
※写真は以下全て、ISSF公式動画よりキャプチャしたものです。
 

まずは優勝した松田知幸選手。これまでのモリーニCM162Eから、ステイヤーのEvo10Eに持ち替えています。グリップ側面のシール(大きな大会に参加すると貼られる銃器検査合格シール)が本大会のものしかないところを見ると、これが世界戦デビューになるのではないかと思われます。バレルシュラウド上部に名前が刻印されているので、本人に合わせて作られたスペシャル・ガンの可能性が高いですね。
2位のホアン・スワン・ヴィン(ベトナム)。RIO五輪で劇的な大逆転をして、ベトナムに初の金メダルをもたらしたベトナムのヒーローです。見たところそのときと同じモリーニCM162E(チタン)を使っている様子。
動画や記事内でも話題になっている、奇跡の大逆転で地元インドに銅メダルをもたらしたインドのRAI Jitu。使用銃はモリーニCM162E(チタン)のようです。銃検シールの数から察するに相当使い込んでいるんじゃないかと。
中国のXU Zhanyiが使用するのはステイヤーLP10E。
中国のYANG Weiが使用する銃、これってもしかして電子トリガーではなくメカニカルトリガーのステイヤーLP10ではないでしょうか? 電子トリガー特有のグリップ側面にある金属蓋が見当たりません。
ベトナムのTRAN Quoc CuongもモリーニCM162Eを使い続けているようです。バレルウエイトを追加できるだけ追加してるみたいですね。かなりズッシリしてるんじゃないでしょうか。
日本の堀水宏次朗選手が使用するステイヤーEvo10E。日本代表は完全にEvo10Eに切り替わった感じでしょうか。
中国のPU QifengはステイヤーLP10Eを使用。

という具合で、一番多いのはモリーニCM162Eで3人、Evo10EとLP10Eが2人ずつ、そしてなぜかメカニカルトリガーのLP10が1人という結果になりました。これまでLP10Eを使っていた人はこのままEvo10Eに移行するのか、生きた化石のごとしモリーニはいつまで生き残るのか、バウP8XやマッチガンズMGH1を使う人は現れるのか。

この大会は開催地がインドだったためか全体的にアジア勢が多く、ヨーロッパ勢があまり参加していませんでした。今後、ドイツやロシアやフィンランドやウクライナといったヨーロッパの強豪も参加する大会においては使用銃がどんな割合になっていくのかも興味深いところです。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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