Categories: 実銃射撃

モリーニ・デジタルメーター付シリンダー

競技用の空気銃は、圧縮空気を使って弾を発射するタイプのものが主流になっている。銃身の下に、銃身と並行に太い筒状のシリンダーが取り付けられていて、そのシリンダー内に空気を200気圧とかそういうレベルで詰め込み、その空気を少しずつ使って一発ずつ弾を撃つ。フル充填で、大体150~200発くらいの弾を撃てる。

200気圧という圧力は、普通に生活していて身の回りにある「気体を高気圧で詰め込んだもの」に比べて、かなり高い。身の回りにあるもの……例えば、圧力鍋で2.4気圧、普通の自転車のタイヤで3.5気圧、ロードバイクの細いタイヤでも7気圧くらい。危ないってことで定期的な点検が義務付けられている消火器ですら、せいぜい10気圧といったところだ。これらに比べると、200気圧というのがほとんど非常識といっても構わないレベルのシロモノだということが良くわかる。

もちろん「危ないもの」なので、製造からある程度の期間が経つと、使用を禁止される。いちおうルールでは「製造から10年」が過ぎたエアシリンダーは、たとえ問題なくエアが充填できて弾も撃てていても「使っちゃダメ」ってことになっている。……実際にはよっぽど大きな大会でもなければ製造年をチェックしたりはしないのだけれど。とはいえルールはルール。銃本体は余裕で10年以上は使えるので、シリンダーだけを新しいものに交換して使っていくことになる。

そういうわけで、長年使ってきたモリーニのために新しいシリンダーを購入する必要に迫られたのが数年前の話。せっかくなので奮発して、新型のデジタルメーター付きのものを購入した。古い方のシリンダーは、ルールで定められた10年制限は超えてしまったが、シリンダーそのものに刻印されている耐用年数が切れるまでにはまだ数年余裕があるので(詳しくは後述)使用自体は問題ない。デジタルシリンダーの詳しい紹介ついでに、デジタル/アナログの両方で実射してみた結果をリポートしてみようと思う。
 

左奥の赤いのが、エアピストルの購入時に付属してきたアナログメーター式のエアシリンダー(1999年製)。右手前の青いのが、10年規制を受けて数年前に購入したデジタルメーター式のエアシリンダー(2010年製)。あと5年したらまた新しく買わないとならない。それまでにモリーニが新型APを出してくれるといいのだけれど。
製造年月と耐用年数は、シリンダー先端側面に刻印されている。3行ある刻印のうち一番下の列がそれだ。赤シリンダーには「20 Year Max. * 04.99」とある。1999年4月製造、耐用年数は20年という意味だ。青シリンダーにも同様に「10 Year Max. *11.10」と刻印されている。2010年11月製造、耐用年数は10年という意味になる。新しい方は耐用年数が古いヤツの半分になってしまっている。新ルールがそうなってるのだからそれに対応したものなのだろうが、なんか納得いかない。すごい高いのに…。
左がアナログメーター。いちおう目盛りがついてはいるけれど、どの目盛りが何気圧に対応するというような精密なものではなく、単なる目安である。右がデジタルメーター。液晶画面があるが、普段は何も表示されていない。
デジタルメーターを表示させるには、液晶画面を指でカチッというまで押しこむ(ペコッという音のほうが正確かもしれない)。
すると、「充填されている気圧」と「あと何発撃てるかの目安」が交互に表示される。左写真では、128気圧が充填されていて、あと54発が撃てるという意味になる。実際は残り弾数が0になったあとも20~30発程度は撃てたりするのだけれど。しばらく経つと表示は勝手に消えるが、すぐに消したいときには上と同じように液晶画面を指で押せばいい。「OFF」の表示が出てすぐに消える。
アナログメーター付シリンダーとデジタルメーター付シリンダーで撃ち比べをしてみた……が、当たり前の話ではあるのだけれど特にどちらが良く当たるとか当たらないとかいうことはなさそうだ。

ただし、初速にはちょっとした差が出た。デジタルメーター付シリンダーのほうが、ちょっとだけ初速が出ているのだ。両方とも、親ボンベから充填した直後に撃った10発なので気圧に差があるわけではない(たとえそうだとしても、競技用空気銃では初速に差がでないような仕組みになっている)。

「シリンダーを変えると初速が変わることがある」というのは、圧縮空気式の競技用空気銃を撃ってるとけっこう実感として持っている人が多い。実際に計測してみた結果でも、アナログは平均で146.2m/s、デジタルは148.1m/sという結果になっている。ちょっと「誤差」で済ますのは躊躇する違いだ。

理屈では、シリンダー内に充填されたエアは、銃本体にあるレギュレーターにより安定した圧・安定した量に調整されて弾の発射に使われるのだから、シリンダーの違いが初速の違いとなって現れるなんてことはあるとは思いづらいのだけれど、実際に計測した結果がこうなってしまったのだから仕方がない。事実は事実として認めなければ。

池上ヒロシ

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