Categories: 実銃射撃

静岡藤枝・スポーツパル高根の郷

マスターズ・ジャパン・カップに参加するために、静岡県藤枝市にあるスポーツパル高根の郷に行ってきた。

「マスターズ」というのは、一言で表現すると「お年寄り大会」ということになるのかな? 若い人抜きで、ある程度年齢が行った人だけで集まって競技をして、年齢別でクラス分けしてそれぞれのクラスごとに表彰する、といったもの。自分にはまだまだ関係ない分野だろうと先入観で思い込んでいたんだけれど、調べてみると一番若い「ブロンズクラス」は35歳からとなっている。実は、ずいぶん前から参加資格があったわけだ。知らなかった。

会場となるスポーツパル高根の郷は、静岡国体(2003年開催)の時に新しく作られたもの。すごく綺麗で新しい射撃場だって話は以前から聞いていた。どんな射撃場なのか実際に見てみたいという目論見もあって、マスターズに初めてエントリーをしてみた次第。静岡なら(富山や石巻と違って)日帰りも余裕だし。

射場の正面玄関。確かに真新しい射撃場ではあるのだけれど、ロケーション的には山奥も山奥、人里離れた秘境としか表現のしようがない場所にある。藤枝バイパスの谷稲葉ICを下りてから延々30分、少しずつ道が狭くなっていき最後の方は対向車が来たらすれ違うのも難しいような細い曲がりくねった道を走り続けてようやく到着する。

入り口を入って左が空気銃用の10m射撃場、右が装薬ライフル用の50m射撃場。手前の花壇にある花丸マークみたいなのは藤枝市の市章のようだ。本当なら市章の部分には花が咲いたりしてるはずなのだが、見ての通りズタボロになってしまっている。聞けば、山から降りてきたイノシシに荒らされまくった結果なのだそうな……。

入り口には立派な大会看板が設置されている。すごい、本物のスポーツ大会のようだ! って、全日本ピストルとか東京都普及大会だって「本物のスポーツ大会」であることには変わりないのだけれど。スポンサー名として、「ホテルnanvan」と、中日新聞東海本社の名前が書かれている。

ホテルnanvanは、東名焼津IC下りてすぐのところにあるビジネスホテルで、新東名ができたせいでスポーツパル高根の郷の最寄りICではなくなってしまったが、それでも比較的便利な場所にあるホテル。一ヶ月以上前に予約すると最安で4700円で泊まれること(2人部屋に2人ならもっと安い)、朝食が無料でけっこう美味しい(らしい)ことなど、ここで開かれる大会に参加する射手にとってはお馴染みの宿なのだとか。

東京からだと、行きは3時間半くらいで到着するので第一射群だとしても普通にちょっと早起きするだけで間に合うから、特に前日泊する必要性は感じられない。しかし帰りは別で、確実に東名が渋滞するため、4時ごろに出発しても家に到着するのは10時過ぎになってしまったりする。だから前日ではなく当日に宿を取って試合後はホテルに泊まり、月曜日の朝にホテルを出て自宅に帰る(そして、そのまま出勤?)というやり方を選ぶ参加者の方もいるそうだ。

50m射場の様子。床になにやら白い線が引かれている。なんと50m射場を、テニスコート3面 or フットサルコート2面としても使用できるようになっているのだ。もちろん、銃を撃ってるときは立ち入り禁止なので同時使用はできないけれど。

しかし、こんな自動車を使わなければ来ることも不可能な場所に屋内テニスコート/フットサルコートがあっても、遠路はるばるやってくる人はいるんだろうか。それに、「精密機器があるので壁にボールをぶつけないように」なんて注意書きがあったりして、使い勝手という点でもあまり良いとはいえないし……。「国体に向けて射撃場を作ったのだけれど、射撃場にしか使えない施設となると議会の承認が取れずに予算が降りないんで、タテマエだけ他の競技にも使えるようにしました」みたいな形だったりするんじゃなかろうか。

邪推はさておき。標的の明かりがついて競技の開始準備がほぼ整った状態の50m射場はこんな感じ。全部で26射座もあり、全てが電子標的となっていて射手の頭上には撃った点がリアルタイムで表示される。完全屋内射場なので風の影響もない。国体のために作られたってだけあって、国際大会にも使える立派な射場だ。

手前に大量のトロフィーが並んでいる。マスターズは年齢別で区分けされたクラスごとに表彰があるので、普通の大会よりもずっと表彰対象になる人が多く、こういう風に大量のトロフィーが必要になる。複数の種目に参加する人だと、クラス優勝に加えて総合優勝のトロフィーも受け取ることになって、一人じゃ抱えきれないような大量のトロフィーを持って帰ることになったりもする。

射座はこんな感じ。明るいし綺麗だし、良い射場である。今回、私は50mではエントリーしてないのだけれど(だって私はライフルは素人で、プローンで550点がでるかどうかっていう、オハナシにならないレベルのヘタクソだし)置いてある机が、どう見てもどっかの学校の机を流用してるとしか思えない懐かしい形をしているのがちょっと気になる……。
では次に本命の(?)10m射場。こちらは残念ながら電子標的ではないけれど、明るくて清潔感のある撃ち易そうな射場だ。
私は今回、6番の射座で撃つことになったわけだけれど、この射座だけ標的の真下から射座に向かって黒い線(リノリウムの継ぎ目?)が伸びている。といっても、段差があったりするわけじゃないので射撃に際して不都合があるわけではない。

むしろ逆で、この線、スタンスの位置を決めるのにものすごく便利な目印になっちゃったりするのだけれど、ルール的には大丈夫なのだろうか? 他の射座にはこんな線はない。6番の射座が割り当てられた射手だけの特権である。

というわけで、スポーツパル高根の郷で空気銃の大会に参加する人にアドバイス。「射座は6番を希望」って書いてエントリーすると有利だぞ!(笑) ……まあ、今回の私はそんなチート気味の射座を割り当てられたにも関わらず、点数的には541点と先日の富山よりは「ちょっとだけ」マシな点数でしかなかったのだけれど……。でもまあ、シリーズごとに見れば後のほうはかなり良い感じになってきたので希望は持てるのだが。

撃ち終えて結果発表を待っていると、「シシ鍋ができましたのでどうぞー」という声がかかった。マスターズでは、参加者の方がふるまってくれるシシ鍋(イノシシと野菜とキノコやイモなどを味噌味で煮込んだ鍋)が恒例になっているのだそうだ。

イノシシの肉は一般市場ではほとんど流通していない。鉄砲を持ってる人が自分で獲ったものでないと食べられない。狩猟対象になっている四ツ足の獣というと、イノシシの他にはクマやシカがいる。クマのことはよく知らないが、イノシシとシカで味を比べたら、「イノシシ>>>シカ」ってくらい圧倒的にイノシシの勝ちになるのだとか。

巨大な寸胴鍋で煮込まれるシシ鍋。大きな柄杓を使って底のほうからかき回さないと具が不均一になってしまうのだが、具が大量に入っているのでかき回すのも一苦労だ。
プルプルのお肉、超巨大なキノコ、トロトロにとろけてるのだけれどしっかりと味のするネギ。時間が経つにつれて煮こまれて味が濃くなっていくのか、おかわりすると一杯目よりも美味しく感じる。

大量に作っていて、いつも余ってしまうから遠慮無く何杯でもおかわりしてくれとのことだったので、3杯もおかわりしてしまって、お腹いっぱいどころか、苦しい。食べ過ぎた……。
とまあそんな具合で、印象としては「シシ鍋が美味しくて食い過ぎて苦しい」ってのだけが残ってしまった大会だけれど(笑)、話だけ聞いていたスポーツパル高根の郷を実際に体験できたってのは大きな収穫だ。東京から近いとはいえ辺鄙な場所にある射撃場だが、綺麗だし新しいし、利用料もそんな高くないし(10m射場は3時間で310円、丸一日使っても1050円)、宿泊しようとすれば前述のホテルnanvanの他、距離的にすぐそばに「大久保キャンプ場」というオートキャンプ場があり、コテージ(4人宿泊可能)を使うと8150円で泊まれるなど、射撃クラブで合宿するなんて話にはもってこいの射撃場である。

最後に、帰りにおみやげを買う時のおすすめ店について。「藤枝市」そのものにはそれほどこれといったおみやげ品は思い当たらないのだけれど、隣の焼津市には日本最大級の漁港である焼津港がある。となれば、新鮮な海産物が大量に並んでいるスーパーを期待したいところだ。高速IC近くにあるスーパーをいくつか事前にチェックしておいて、帰りがけに寄ってみた。

最初に寄ったスーパー(名前は出さない)は、店舗や売り場は立派なのだけれど実際に並んでいる品物はごくフツーのどこでも買えそうなものばかりで、全くの失望だったのだが、その次に訪れたスーパーが当たりだった。「富士屋スーパーマーケット五十海店」というお店で、店舗前の駐車場は完全に満車で一台も止める余地がない。第二駐車場がこちらという看板を持っている警備員の方がいたので矢印に従い店舗の裏に周り空いてる場所を見つけて駐車し売り場に向かう。

店構えは古めなのだが、とにかく活気があって、最初に訪れたところとはまるで違う。鮮魚売り場の面積も広いし、品揃えも豊富だ。冷凍マグロの切れ端がドカドカと豪快に売られてたり、お刺身を作った切れ端をまとめて詰め合わせにして激安で売ってたりと、「地元スーパーならでは」の商品も多く、思わず大量に買い込んでしまった。釜揚げしらすも1パックがでかいし安いし。事前に用意してあった発泡スチロールの箱に無料の保冷用氷と一緒に詰め込んで帰途についた。自動車だとこういう買い物ができるのが良いねえ。

というわけで、藤枝で大会があった日の帰りの買い物は「富士屋スーパー」がおすすめ。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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