一般的なリアサイトの幅って狭すぎません?【海外の反応】


オートマチックやリボルバーなどの、いわゆる実用拳銃に近いピストルを使って行われるNRAプレシジョン・ピストル競技。アメリカではメジャーなシューティング・スポーツで、オリンピック種目になっている射撃競技(いわゆるISSF射撃)よりも競技者はずっと多いのだとか。

NRAプレシジョン・ピストルは、使用できる銃(弾薬)によって3つのクラスに分かれています。.22リムファイアを使う「入門クラス」、.32口径以上のセンターファイアを使うクラス、そして45口径を使うクラスです。花形は一番上の45クラス、事実上の1911専用マッチになります。

画像を見るとわかりますが、光学機器が使用できます(レーザーサイトは禁止されています)。スコープの使用も許されていますが、利点がないので使っている人はほとんどいないとのこと。ドットサイトを付けている人、オープンサイトで撃ってる人の両方を見ることができます。

ただ、この動画についてるコメントをみる範囲だと、ドットサイト(オプティカル・デバイス)の使用についてはけっこう多くの人があまり良い気持ちを持っていないっぽいことが伺えます。オプティカル・デバイスは「CHEAP SHOT」だと断言してるコメントがありますが、この「CHEAP」というのは「尊敬に値しない」とか「ずるい・卑怯な」というような意味合いで使われてる言葉だと思われます。

ISSF射撃では光学照準器は一切使用不可なので最初から選択肢には入りませんが、そうでない人にとっても、やっぱりスポーツ射撃はオープンサイト(アイアンサイト)で行うべきものなのだ、みたいな考え方はある程度は共有されてる思いなのかもしれません。

そういったNRAプレシジョン・ピストルをメインにやっている射手が、オープンサイトの使いこなしについては確実に一日の長があると思われるISSF射手が集まる掲示板に登場し、適切なリアサイトノッチ(溝)の幅について質問する、というトピックがありました。昨日に引き続きリアノッチ幅についての話になりますが、立ち位置が少し違う同士の会話の噛み合わなさと、それでも共通するところもないわけではないという微妙なやり取りがちょっとおもしろいと感じましたので、簡単に抜粋して紹介してみたいと思います。

フロントサイト&リアサイトの幅の関係

引用元:TargetTalk (Front blade/Rear notch width relationship)


  • Nygord’s Noteには、フロントサイト/リアサイトの幅の比率は一般的に1:1:1か1:2:1だと書かれています。これは実際にノギスを当てて計測したそれぞれの幅のことではなく、銃を構えて照準したときに目に見える形での比率のことだと私は理解したのですが、間違ってませんよね? そうであるという前提で話を進めます。
    私が使っている銃のサイトレディウス&フロントサイト幅では、例えば1:2:1の比率にするためには、リアノッチ幅は.190インチ(4.83mm)が必要になります。ところが、実際には現在および古い競技用ピストルのリアノッチ幅はすべてそれに比べると狭いものです。私は、自作のワッドガン(※1)のためにボーマーのBMCXサイト(純正)を購入しましたが、これもノッチ幅は.112インチ(2.84mm)しかありません。
    もし私が勘違いをしていて、1:2:1という比率が見かけ上のものではなく実際に計測した幅のことだったとすると、計算によって導かれるリアノッチ幅はさらに広くなければならないことになってしまいます。
    私は、リアサイトをグラインダーで削って0.165インチ(4.12mm)まで広げました。かなり良い感じに見えるのですが、フロントサイトは変更していないこともあり1:2:1には程遠いのが実情です。
    そこで皆さんに質問です。皆さんはリアノッチを更に広くしていますか? それともNygord’s Noteによる「推奨される比率」を無視してオリジナルの.112~.125幅で使っていますか?
    この質問を投稿した理由を説明します。照明の条件に合わせてノッチ幅を変えたいと思うことがあるのですが、毎回キャッスルナットのステーキングを壊す(※2)のは面倒なので、1911用にブレード交換可能なアジャスタブルリアサイトを探していました。ウィルソンコンバットはまさにその条件に見合うサイトを作っています。既存の1911スライドに取り付けることは想定しておらず、ボールドスライド(※3)を用意してそれを切削加工して取り付けるものなのですが、私は新しいワッドガンを作る際にそれを使用することを検討するかもしれません。
    1911に調整可能でブレード交換が可能なリアサイト(国際競技に対応するようなものを含む)を取り付ける方法について、他にも良い方法などありましたら教えて下さい。私はすべての提案を受け入れる用意があります。
    1911を使うブルズアイ競技のフォーラムではなく、こちらに投稿した理由は、このフォーラムの皆さんはオープンサイトの世界に住んでいるからです。よろしくお願いします。
    (国籍は未記入ですが、ここまで1911愛が深い人なんですから十中八九アメリカ人でしょう)
※1:ワッドガン(WAD GUN)……「セミワッドカッター(標的紙に綺麗な丸い穴が開くように、銃弾の先端が丸くなく円筒形っぽい形をした競技射撃専用の弾)を撃つように設計されたピストル」のこと。NRAプレシジョン・ピストルのセンターファイア/.45口径部門――要は1911を使う部門――に参加するために作られた競技用ピストルを指す言葉として使われるようです。トリガーチューンした1911に競技用のアナトミカルグリップを装着し、リアサイト部分またはフレームから伸ばしたマウントベースにドットサイトを装着しているというのが定番のカスタムのようです。
Google画像検索結果

※2:ナットのステーキング(nut staking)……ステーキングとはカシメのこと。ネジが緩まないように接触部の側面をカシメるのを「ナットステーキング」と呼びます。1911のリアサイトの固定でそういう加工をするものがあるとは知りませんでしたが、自分で銃をビルドするくらいの人が言うのだから実際にあるんでしょう。

※3:ボールドスライド(bald slide)…直訳すると「ハゲのスライド」。前後サイトのドブテイル加工などがされていない無加工のスライドのこと。
Google画像検索結果

  • フロントサイトの見かけ上の幅は、ターゲットの黒丸の直径(幅)に対して70~100%くらいになるようにします。上図では黒丸の幅の70%になっています。精密射撃では、リアノッチの見かけ上の幅はフロントサイト幅の2倍になるようにします。上図ではまさにそのとおりに1:2:1になっています。目のピントをフロントサイトに合わせて、フロントサイトが正確な正方形を描くように注意してください。
    ラピッドファイア競技の場合はさらにリアノッチの幅を広く、フロントサイト幅の3倍にします(1:1:1)。それにより素早い照準が可能になります。大きな10点リングを持つターゲットには精度は必要ありません。
    リアサイトの幅を広げるのは、極めて注意深い手作業と、新品の角ヤスリと良い視力が必要です。事前に角ヤスリの片面をグラインダーで磨いて歯を取り去ってなめらかにしておくことで、ノッチの角を直角に保つことができます。加工を終えたらサイトをリブルーします。(国籍不明)
  • 私は、数年前にクリニックでオリンピックトレーニングセンターのコーチが推奨した「対称性」アプローチを使用しています。基本的な考え方は、画像の対称性を最大化し、3つの可動部分(フロントサイト、リアサイト、標的)ではなく、維持しようとする1つの画像としてそれを考えるように脳を訓練することです。画像の対称性が高いほど、筋肉を使用して画像を維持するように脳をトレーニングするのが簡単になります。
    それを実現するためには、フロントサイトの見かけ上の幅を黒丸の幅(直径)に近づける必要があります。フロントサイトの両側のギャップは、黒丸とフロントサイトの上部の間のギャップと一致する必要があります。

  • フロントサイトと黒丸との距離は、据銃能力や個人的な好みによって異なります。揺れるフロントサイトがリアサイトブレードに触れてしまうほどリアノッチを狭くしてはいけません。また、年配の目にはノッチ幅を広くすることをお勧めします。もちろん、後部のノッチが広いほど据銃するときの苦労は減りますが、絶大な効果があるというわけではありません。
    私は、上記のこと(厳密なフロントサイト/リアノッチの幅)について、それほど深刻になって思い悩むことはありません。サイトピクチャーがほんのちょっとだけ「パーフェクト」でなかったとしても、トリガーのミスによって失われるポイントのほうが遥かに多いからです。何十年もの間、たくさんの人達が、競技銃メーカーが作ったそのままのピストルを使って素晴らしいスコアを撃っています。あなたはあなたの時間を空撃ち練習のために使い、お金は練習用の弾のために使ってください。(マサチューセッツ)
訳注:照準の際に見える光景を、①遠くにある標的、②近くにあるフロントサイト、③もっと近くにあるリアサイトの3つとして立体的に捉えるのではなく、その3つが綺麗に揃った一枚の絵(サイトピクチャー)として認識するという照準方法は、現在のピストル射撃においては基本となる考え方だそうです。ガンプロで連載していた「ピストル講習会」でも触れていました。正しい「絵=サイトピクチャー」を強固に脳内にて構築することにより、銃を構えただけで特に力を入れたりしなくても自然にその状態で収まるようになるというものです。
  • 対称性が重要だというのは非常に興味深く感じました。私のスキルレベルを考慮しますと、フロントサイトの上(=黒丸の下)にあるスペースについて厳密にどのくらいに合わせるか、というようなことを考えるのではなく、フロントサイト左右にあるスペースと似たような感じが望ましいと自分の脳が考えるようにする、というのが良いのでしょう。これは、すなわちあなたが言いたいことと同じですよね?
    なお平面砥石を使っていますのでノッチを正確に正方形に保つことの難しさについては大丈夫です。
    さて、皆さんのお返事を読む限りでは、皆さんはリアノッチを(通常販売されているピストルのリアノッチよりも)広くしているようですね。
    リアサイトブレードを簡単に交換できる調整可能なリアサイトを1911に装備する方法について、どなたか良いアイデアをお持ちではないでしょうか? ボールドスライドから作業を開始しますので、カスタム加工は問題ではありません。オリンピック射撃におけるフリーまたはラピッドファイアの世界で使われるような、本当に良いサイトセットをマウントする方法があれば、私はそれを真剣に検討します。
    (多分アメリカ人)
  • ノッチ幅の調整が可能なリアサイトとしてはベネリやパルディーニの製品がありますが、それらは(通常1911に付いているものに比べると)非常に大柄なので、おそらくかなり背が高いフロントサイトが必要になります。おそらくあなたにとっての最良の選択は、異なる幅のクイックスワップブレードを備えた古いHammerliエアピストルのもの(巨大です)に似た小型のサイトを見つけることです。
    望む通りのサイトを多くの時間とエネルギーを費やして取り付けたとしても、それを調整する機会というのは数年に一度しか訪れないのではないかと思います。私は幅を調整可能なリアサイトを備えたいくつかのピストルを所持しています。また、自分に合った幅に機械加工した固定サイトを持つピストルもいくつかあります。しかし覚えている範囲では、私はそれらのどれにも触れていません。
    最も交換する可能性が高いものとしては、二つの交換用ブレード、すなわち明るい日のためのものと、屋内のためのものの2つくらいです。
    ブライアン・ジンズ(1911射撃の第一人者)は、自分の銃のリアサイトの幅を気にして微調整してたりしないはずです。ということは、あなたも同様にするべきです。(マサチューセッツ)
  • リアサイトの幅が広すぎると、人間の眼の構造上、精度が高くなる中心部分(黄斑視)ではなく、精度が低い周辺視野に入ってしまいます。これは、フロントサイト幅をさらに広くすることでさらに悪化する可能性があります。
    私の場合、1:2:1を使用すると、リアサイトは中心視野から外れてしまいます。ラピッドファイアでは、私は幅の狭いフロントサイトを使用してリアノッチとのギャップを広げることで素早いサイティングを可能にしていますが、わずかにぼやけた状態のリアサイトが中心視野に入っています。
    ただ、頻繁に調整をする必要があるものではなく、一度設定してしまえば再び触ることもありません。(イギリス)
  • おっしゃるとおり、多くの銃に付属しているリアサイトのブレードは、ほとんどの場合小さすぎて役に立ちません。
    あなたの知りたいことへの回答になっているのではないかと思い、私が自分で試してみた例を紹介します。3/16インチ(4.76mm)のチェーンソー用の歯を流用したのです。金物店で安く手に入りますし、余計なテーパーが付いていることもありません。これにより、極めて質の良い「ロシア風のハーフムーンサイト」が手に入ります。(アイダホパンハンドル)
  • 据銃能力が十分であれば、リアノッチが非常に狭くてもちゃんと撃てます。(フィンランド)
  • たくさんのTipsをありがとうございます。皆様に感謝を。
    いろいろ考えましたが、撃ってみた結果と快適さをもちながら正確なサイトピクチャーになることという基本どおりに、フロントサイト幅を3.0mm、リアノッチ幅を4.0mmに設定することにしました。(多分アメリカ)

想像するに、質問者さんにとっては「知りたいと思ってたことが全くわからなかった」と失望する結果だったってのが正直なところだったんじゃないかと思います。競技用ピストルについてるみたいな微細で多岐にわたる調整が可能な1911用のサイトなんてものが、もしかしたらあるんじゃないか、ISSF射手に聞けばそういうサイトについての情報を得られるのではないか……という望みは、「そんなの気にするよりほかにやることあるだろ」的な回答によって打ち砕かれてしまった、ってのがざっとやりとりを読んだ上での感想ですね。

バイブル的な立ち位置にあるNygord’s Noteに書かれている「1:1:1、または1:2:1」というリアノッチとフロントサイト幅の見かけ上の比率ですが、実のところこれは本当に厳密に1:1:1または1:2:1にしろって意味じゃなく、前者は「フロントサイト幅と同じくらいにライトバーが見えるように」、後者は「フロントサイト幅よりライトバーが半分くらいに見えるように」くらいの、かなり大雑把というか感覚的な話なんじゃないかと思います。

実際に、この質問への回答者が例として出してるサイトピクチャーの画像ですが、この画像を貼ることについてなんの不自然さとか違和感とかを感じない(実際、私も感じません)ということは、普段の射撃において見えているサイトピクチャーもだいたい似たような幅の比率になっているはずです。ですがこの画像、「1:2:1」というにはあまりにフロントサイト幅が広い(ライトバーが狭い)画像になっています。等間隔に縦線を並べてみるとよくわかります。

「1:2:1の比率に見えるのが正しいリアサイト幅です」といいつつ、実際に計測してみるとライトバー(フロントサイトとリアサイトの隙間)の幅って、フロントサイトの幅の半分よりもずいぶんと狭いのです。

Nygord’s Noteの「1:1:1または1:2:1」というのは、実際に見かけ上のリアノッチ&フロントサイト幅の比率をその数字どおりにしなさいというような意味ではなく、「え、こんなに広くてもいいの?ってくらいにリアノッチ幅は広くして、フロントサイトとの隙間は十分に開けなさい。狭くしすぎると精密に狙えるような気がするかもしれませんが、実は弊害の方が多いです」というような意味だと解釈するのが正しい読み方なのではないだろうか、ってことをこのやりとりを見ていて感じました。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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