かつては300人に届こうかという勢いだったこともあるAPSカップ本大会の参加人数ですが、震災のあった2011年からしばらく減少傾向にありました。それが増加傾向に戻ったのが2014年ごろです。特に2016→2017年は大幅増加となっており、久々にハンドガンクラスのみで200人超となりました。

参加人数が大きく増加した理由について、「2016年の夏に開催されたオリンピックの影響があるのでは?」という趣旨のツイートをしたところ、「その発言はAPSカップを主催している協会の皆さんや、各所で会場を確保し練習会を開催している方々の努力を侮辱するものではないか」という趣旨のご指摘を受けました。

議論をお望みではないことが文面から伺えますので、Twitter上でリプライを付けてやり取りを展開するのではなく、発言の趣旨を文字制限のないブログで書くことで釈明させていただきたいと思います。あくまで釈明であって、反論だとか「あなたの考えは間違っている!」と指摘するのだとかそういう考えは全くない、ということを最初に表明しておきます。

「スポーツ射撃という分野の普及や広報」という観点から見た時、オリンピックというスポーツイベントの効果は絶大なものがあるというのは、そりゃもう否定しようもない事実、自明のことだと思います。オリンピックのTV放映で初めてピストル射撃競技というものを知った人というのは大勢いるはずです。そして、それに比較的近いスポーツを手軽に始められる手段としてAPSカップという存在が選ばれたことが、参加人数が大幅アップした理由なのではないかというのは、統計をとったりして確たる証拠があるわけではないものの、極めて現実的で信憑性のある仮説の一つだと思います。これは事実関係を元にして類推される仮説の一つであり、そこには協会や練習会を開催している方々への侮辱の意志など微塵もありません。

ですが、「そのツイートは、大勢の人の努力を侮辱することになる」という指摘を「APS小僧さん(Twitter登録アカウントを見れば正体はまるわかりですが、とりあえず本エントリーではハンドルネームで通します)」に受けてしまいました。なぜそのように感じられてしまったのか、最初は戸惑いしか感じなかったのですが、一晩考えてなんとなく理由が分かってきました。「APSカップは、オリンピックなどで行われている射撃競技とは別のカテゴリーにある別のスポーツであり、全く関係のないものだ」という前提で、APS小僧さんが話されているからではないか、というのが理由です。それを前提にして考えるのなら、「協会をはじめとしてAPSカップに関わる大勢の人の努力の成果を、それとは全く関係のないオリンピックの手柄にしてしまうような物言いは侮辱にほかならない」という印象を受けてしまう理由を理解できるのです。

私の考え方は、少し異なります。私は、APSカップもオリンピックの射撃競技も、それどころかスティールチャレンジやIPSCといったスピード系の競技も全部含めて「スポーツ射撃」という同じカテゴリー内にある同じ系統のスポーツだと思っています。それらは違うものではなく、根本的に同じものです。方向性とか規模が異なるだけです(自分がこういう考えを持っているということはけっこう前から表明しています)。同じものなのだから、「射撃スポーツの宣伝」に大いに役立ったオリンピックイベントは同時にAPSカップの普及にも役立っただろうと思うのはごく自然で当然な考え方です。また同様に、APSカップの普及もオリンピック射撃の人気向上に役に立っているに違いないと思っています。

「協会や練習会を開催している方々の努力」は、オリンピック射撃の技術向上や広報に取り組んでいる人たちの努力と同じく、「射撃スポーツの普及」という同じ方向を目指しているものです。その中でも、オリンピックというイベントには圧倒的な知名度とニュースバリューがあります。TV放映されたエアピストル決勝の様子は射撃というマイナーなスポーツの知名度アップに大きく役立ちました。そのおかげでオリンピック射撃だけでなくAPSカップにも、競技者が大幅に増加するという嬉しい効果があったのではないか……と、こういうふうに書けば、APSカップに関わっている方々を侮辱するような意図は全くないということは理解していただけると思います。

ただ、APSカップとオリンピック射撃は全く別のものなのかそれとも根本的に同じものなのか、APS小僧さんと私の、この考え方の違いは、こちらが正しい、いやこちらが正しいと言い合いをして決着が付くようなものでは無さそうです。それに双方とも、「APSカップの参加者が増えてくれて、嬉しい」という気持ちは同じだと思います。同じ思いを持っているのに、「APSカップとオリンピック射撃は、別のものなのか、同じものなのか」というような、言ってしまえば些細な問題で仲違いをしてしまうのは、できれば避けたいという気持ちも同じだと思います。

思い返せば、APS小僧さんによる「APSカップと、オリンピック射撃は、全く別のものであり、同一のものとみなす考え方には不快感を持つ」という趣旨の発言は以前から何度かお聞きしたことがありました。何度か会話を交わして、これは平行線で共通解を見つけ出すのは難しそうだな、という結論になったのも覚えています。そのことが頭にあれば、冒頭のようにAPS小僧さんへの引用リツイートで「APSカップ本大会の参加人数が増えたのは、オリンピックのおかげだ」というようなことを書いたりしたら、大目に見ても反論、重く見れば挑発めいた発言だと受け止められかねないということは事前に分かったはずで、考えてみれば思いが至らない不用意な発言でした。

自分の頭の中では、それ(オリンピックによる広報効果があったこと)は言うまでもなく当たり前のことという前提があったせいで、引用リツイートされた側がどう感じるかといったことへの配慮が抜け落ちていました。反論するつもりも挑発するつもりも、もちろん侮辱するつもりも全くありませんでしたが、そう受け取られてしまいかねないツイートだったことは確かです。申し訳ありません。お詫びします。

私とAPS小僧さんとの間には、既に書いたとおりAPSカップというスポーツの射撃スポーツ全体の中での立ち位置について、どうしても相容れない考え方の違いがあるように思えます。けれども、APSカップの普及にかける意気込みは同じだと思います。だからその一点でだけでも、協力し応援し、良い成績が出れば共に喜び不本意な成績の時は共に悔しがることができれば、それで十分です。

池上ヒロシ

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