ゾーントレーニングのススメ【海外の反応】

射的と射撃は、違うものでしょうか?
違うとしたら、何が違うのでしょうか?

木田先生の射撃教室で、かなり最初の方で受講者に向けて投げかけられた質問です。辞書に書いてあるような意味を聞いているのではなく、「あなたは、どういうイメージを持っているのか」という問いですね。射的といったら縁日とかでやってるような、並べられた景品をコルク銃で撃って倒して落としたらゲットできるというようなものですが、それは私たちがスポーツとしてやってる「射撃」とはどう違うのでしょうか?

言葉をカッチリ定義するってのはとても難しいものでして、時代や地域や文脈によっていろいろと変わってくるものですが、とりあえず「射撃スポーツとは何か/いわゆる射的とは何が違うのか」という意味合いで使うという前提においては、下記のように定義できると思います。

射的 射撃
当たったらよし、外れたら残念。当たって景品をゲットできれば成功、つまり価値があるのは当たった結果だけである。結果的に成功すれば、そこに至るまでに何発外れても別にどうでもいい。 当たりも外れも全て同じように記録される。撃った結果の全てがスコアに関わってくる。何発も撃って1個でも当たればオッケーというわけではなく、撃った弾全てがちゃんと当たるようにすること、それが目標となる。

当たり前のこと書いてるみたいですけれど、「何かを狙って弾を撃って、狙ったところに当てる」という行為をしようとしたときに、その人が2つのイメージのどちらを「今、自分がこれからやろうとしていること」に対して持っているかによって、その結果に対する態度がまるで変わってきます。

具体的な例を挙げますと……。初心者向けのビーム射撃体験会などでは、ろくに狙いもせずにカシャバンカシャバンカシャバンと大量に撃ち続けて、たまたま10点に当たって王冠が光ると「じゅってん出たじゅってん!」って大喜びする、そんな子がときどきいます。体験なんだからどういう楽しみ方をしてもいいので、それが悪いとかマナー違反とかいうわけじゃないんですが、少なくてもそれは「射撃スポーツ」ではありません。むしろ「縁日の射的」に近いものです。

100発撃って5回10点が出るけど他は3点とか5点ばかりというのと、20発撃って全部を9点以内に入れたけれど10点は2回だけというのと、射撃をスポーツとして考えれば「上手い」のは圧倒的に後者なわけですが、「10点を出した回数が多いほうが凄い」という感覚(縁日の射的に近いイメージ)を持ってる人にとっては前者のほうが上になるわけです。価値観が根本から異なるということです。

繰り返しになりますが、どっちが良いとか悪いとかじゃありません。ただ、「たくさん撃ってたまに良い点が出ればOK」というのは、少なくても射撃スポーツとは違うものである、というだけの話です。

ここから先はちょっと厳しい話になってきます。スポーツとしての射撃の世界に入って、けっこう頑張って練習をしている人でも、「縁日での射的のイメージ」がまだ残ってしまっている人というのが少なくありません。射場に来てサイト合わせをするないなや、すぐに本射(点取)に入ってものすごい勢い(それこそ20分か30分くらい)で60発を撃ち終えて、点数を見て、低いようならすぐさま次の60発に入って……を何度も何度も繰り返します。何度も繰り返せば、60発の合計点がそれなりに良い点になることも、時々はあります。それを見て、「今日は◯◯点が出た!」と喜んで、それで終わりにしてしまう――こんな感じです。

一発撃って当たった外れたで一喜一憂するのに比べれば随分と先に進んではいますが、それでも根本的なところで「縁日の射的」から離れることができていないように見えてしまいます。大会になれば、何回も点取をして良い点が出るまで繰り返すなんてことはできず、これから撃ちますと宣言してから撃った60発の合計点だけが記録されます。何回も点取をしてときどき良い点が出るというのでは、「たまたま良い点が出ることもある」という以上のものではありません。大会でもちゃんと記録を残せるようにするためには、たまたまではなく毎回同じように良い点が出るようになる必要があります。

「時々、良い点が出せるようになる」のを目指すのではなく、「確実に自分が出せる点数のラインを上げていく」ことを目標においた練習こそが大事だということです。これはなかなかに厄介ですし、肉体的にも精神的にもハードな練習となります。たくさん撃って良い点が出たところで終わりにして気分良く帰れていたところが、「良い点ではなかった」射撃を無視するわけにはいかない練習となると、どうやればミスショットを減らせるのかを必死になって考えなければならなくなるからです。「自分って、思ってたよりヘタクソだったんだ」という現実を容赦なく突きつけられるようなものです。

「縁日の射的感覚」から抜け出し、真の意味での「射撃スポーツ」のための練習をするということは、具体的にはどういうことなのか、どういうやり方があるのか、そしてそれによってどういう効果があるのか。そういったことについて書かれた文章を見つけました。ウクライナの競技射撃専門の情報サイト「shooting-ua.com」内にある「ピストル射撃手の手首関節固定」というコラムの中で、標題になってる手首固定の話題がいつのまにか話が逸れて全然別の話になった、その箇所で語られていた「ゾーントレーニング」に関する内容です。

手首関節固定について知りたくて頑張って読んでたのですが、話がそれた部分だけでも非常に有益な内容だったので、話があっちゃこっちゃ飛びまくるコラムの中からゾーントレーニングに関して話をしている部分だけを抜き出し、意味がちゃんと通るように並べ直したり補足を書き足したりしたものを掲載します。

ゾーントレーニングの意味とやり方

引用元:shooting-ua.com「ピストル射撃手の手首関節固定」


    10点圏と1点圏は、どちらも「その中に弾を撃ち込む必要があるゾーン」という意味では全く同じです。射手の実力に合わせて、目標とするエリアの大きさが変わるだけです。

    ゾーントレーニングをする上で、まずは自分の実力や目標に合わせて、2つの重要な要素を決める必要があります。「連続して撃つ回数」と、「ゾーンの大きさ」です。例えば、「5発連続・9点以内」という具合です。この場合、5発連続で9点以上(9点か10点のどちらか)に命中すれば、1セット達成したという形でカウントされます。

    10点を4回、8点を1回では失敗となり、セットはカウントされず、また最初からやり直さなければなりません。なんとかして10点を撃とうとするのではなく、9点以上を連続できたかどうか、それだけをカウントします。結果として10点に当たったのが1発だけでも問題はありません。

    ゾーントレーニングの流れ

    具体的に、どのような形でトレーニングをするのかという流れを説明しましょう。

    ピストル射撃を始めて1ヶ月のA氏。彼は「8点圏内」を連続して撃つことについてはほぼマスターし、9点ゾーンへの第一歩を踏み出そうとしています。トレーニングの目標は、「5発連続・9点以内」を6セット行うことです。まずは椅子に座った状態で支えを使って撃ちます。支えは肘の下に置いて、手首から先はフリーになった状態で撃つのが最適です。

    A氏は最初の「5発連続・9点以内」という目標を16回目の試みで合格しました。しかし、次の「5連続・9点以内」を達成するには18発を撃たなければなりませんでした。最初の16回は試行錯誤している状態だったが最後にようやく「こう撃てばいいのか」という感覚が掴めたように思えました。そのことは、それに続くトレーニングで確認することができました。連続して撃っていることにより疲労しているにもかかわらず、18回で「5回連続・9点以内」に成功しました。今後は、「9点圏内に確実に入れる」という目標を継続し、できれば少ない弾数で「5回連続・9点以内」を実現できるようにすることが目標となります。

    このトレーニングは段階を追って難易度を上げていきます。次の段階(第2段階)では、シリーズのショット数を増やすことで得点シリーズの難易度を高めます(5回連続ではなく6回連続、7回連続というふうに)。それにより、疲労した状態で身体的負荷をかけるトレーニングとなります。

    椅子に座って支えを使って行なうトレーニングと、立った状態で行なうトレーニングを交互に行なうこともします。支えを使って「5発連続・9点以内」をクリアしたら、次は立った状態で同じように「5発連続・9点以内」を目指します。

    さらに続く第3段階では、習得した技術を試合環境で定着させます。試合練習では、すべてのショットが9点圏に入るようにする必要があります(つまり、目標は60回連続です)。その後、目標は10点圏以内へと進みます。

    ゾーントレーニングの目的

    このトレーニングにはどういう意味があり、何を目的としているのでしょうか?

    まず考えられることは、プレッシャーへの対応方法を学ぶということです。「5発連続・9点以内」を目標としている場合、4回連続でクリアできた後の5発目は、最初の1発目を撃つ時とは違う心理状態で撃つことになります。

    しかし、それ以上に注目してほしい点は、「考えて撃つ」という習慣を身に着けるということです。例えば、「すべての弾を9点圏内に収める」という課題に取り組んでいるときに、9点圏外に撃ってしまった場合、アスリートは自然とミスの原因を考え、特定し、修正するようになります。これは、ただ漫然とピストルに弾を込めては撃つだけを繰り返すより、遥かに有意義なトレーニングとなります。アスリートには創造的な探究心が必要であり、そのためには多様な練習条件が必要なのです。

    標的を外した瞬間を振り返ることは重要です。まさにこの瞬間こそが、選手に射撃技術のあらゆる要素を改めて考えさせるきっかけとなります。一度の失敗、そしてまた次の失敗。これらすべてが、原因を探求する強い動機となります。正しい技術は誰かに押し付けられるものではありません。少しの指導があれば、選手は自ら発見し、習得するのです。たとえそれが「正しい技術」であっても、何のためにそれを身に着けるのかという目的を見失った状態で努力しても効果はない、と私は考えます。

    技術は苦しみを通して培われ、汗と目標達成の喜びによって強化されなければなりません。目標は、痛みと疲労を乗り越えることで達成されなければなりません。

    ミスからどう学ぶのか

    ミスを認めることで結果が改善されるのであれば、ミスは積極的に認めるべきです。レフ・マトヴェーヴィチは、目標を達成するには多くの要件を満たす必要があるが、目標を達成できなくするにはそのうちの1つを満たさないだけでよいと書いています。

    「エラーの組み合わせ」という概念もあります。これは、2つのエラーが重なり、結果としてまずまずのショット、つまり「まぐれ当たり」になることを意味します。常に10Xを目指すという考え方にも弱点があります。すべてのショットを成功させるのは非現実的です。最高レベルの競技ですら、数多くのミスをしても十分に上位に残れる場合もあります。何人もの選手がすべてのショットを10Xに収めるようになれば、連盟はターゲットの寸法変更を検討するでしょう。

    この点において、ゾーンという概念は実に現実的です。指定されたゾーン内で全てのショットを撃つという考え方自体は、白的撃ちから射撃する初心者にも、練習中に5ショットのシリーズを複数回射撃する熟練者にも当てはまります(※ただし、最高レベルの競技者においては、10点圏ラインに触れない10点だけをカウントするというところまでレベルを上げることになります)。初心者と熟練者の違いは、満たさなければならない要件の数です。

    ゾーンシューティングの哲学は、射手に「なにがなんでも10Xに当てること」を目的とさせるのではなく、トレーニングの基本原則、つまりシンプルなものから複雑なものへという点を重視します。初心者に「10Xに命中するのが最良である」と教えることと、「毎回10Xに当てろ」と要求することは全く別物です。シンプルなものから複雑なものへ、ランダムな単発の命中から、ターゲットゾーンへの確実な命中へと、求められる条件を少しずつ複雑に、難しくしていきます。

    ミスは、それと戦うことをやめたときに、根付いてしまうものです(つまり、ミスを根付かせないためには、常にミスと戦い続ける必要があるという意味です)。要求が徐々に高まるにつれて、ミスをなくすことが難しくなっていきます。それでもミスをなくそうと努力し続けることが、より高いレベルに進むための鍵となります。常に正確な結果を出すスキルは複雑なコーディネーションスキルであり、それを習得するには、それほど複雑ではない基本スキルを習得する必要があります。これは、ミスを特定し、認識し、修正するだけでなく、特定の基本レベルにおけるミスのないテクニックを強化することを意味します。安定した基本スキルを確立して初めて、より複雑なスキルを習得することができます。

    「安定した基本スキル」とは何か? A氏が「5発連続・9点以内」の練習を始めた頃は、一回の練習につき2~3セットをクリアするのがせいぜいでしたが、今では8~12セットをクリアできるようになりました。時折、「5発のうち、10点を4発以上(9点が1発混じってもセーフ)」というセットに変更することもありますが、ごく稀に「10点を5連続」を課題にすることもあります。「10点を5連続」での練習頻度が増えれば、9点をコンスタントに打つスキルが安定し、ゾーンを「9点以内」から「10点」へとレベルアップするのに十分なスキルを身につけることに成功した、と判断できます。


このコラムの主題は、ピストル射手が照準を行っている時の手首関節はどのような仕組みで固定されるのか(グリップの一貫性を制御するメカニズムについて)、というようなことについてアレコレ書いてるもので、ゾーントレーニングに関する話は本題とは別の枝葉末節として出てきたに過ぎないのですが、枝葉末節にしてはかなり詳細にかつ熱く語られているのが驚きです。というか本題の手首関節の固定については筆者自身が「どう説明したらいいのか、自分でも良くわからない」みたいなこと書いてて、ロシア語→日本語翻訳を読むだけだと、正直よく理解できませんでした……。

それはさておき。

このゾーントレーニング、実際にここ一ヶ月ほど頑張ってみました。まずは立射で「5発連続・9点以内」を課題として何セットクリアできるか? 最初は「そんなん余裕だべ」とか甘く見てたんですが意外と難易度が高い! 最初の2セットは10発でクリアできて「あ、今日はもう簡単に5セット行けそうだな」とか思ったら、そのあと70発くらい撃っても一度もクリアできなくてぶち切れそうになったりしました。

「9点ゾーンを4発連続した5発目で8.9を撃つ」なんてのを2~3回とか繰り返したりすると「くっそぉぉぉお」って思わず口を付いて声が出ちゃったりします。他に練習してる人もいたというのに、驚かせちゃったかもしれませんごめんなさい。

いや本当に、普通に狙いを付けて普通にトリガー引けば9点以内なんて簡単に入る(と自分では思ってる)のに、いざ「5連続で」なんて条件が入ると予想以上にその難しさに打ちのめされます。9点ゾーンに入らなかった時は、「今はどういうミスをしたのか」「そういうミスをしないようにするためには何を心がけたらいいのか」と、それこそ頭から煙吹き出しそうな勢いで考えることになります。否応なしに。

これまで、自分ではそれなりに「考えて」練習してるつもりでしたが、まだまだぜんぜん考えが足りず、「漫然と、ただ弾数を撃ってる」だけに近い状態だったんだなと思い知らされました。

こんなん作ってみました

ピストルの練習に来てる人に渡すことで、誰でも簡単にゾーントレーニングに取り組むことができるようになる「ランクカード」なんてものを作ってみました。

CランクからBランク、Aランク、最も上がSランクと4段階にランク分けされていまして、ランクを上げるためには現段階でのランクで定められた「ミッション」を達成してステージを上げていき、最終ステージをクリアすることでランクアップする、という仕組みです。わかりやすくゲーム仕立てっぽくする、というのを目標にいろいろ頑張ったのですが、上手くできてますでしょうか……?

ご覧になった方、ここをこうすればもっと良くなるとか、ここはどういう意味なのか分かりづらいとか、そういうのありましたらこの記事のコメントでもなんでもご意見お聞かせいただけると幸いです。



池上ヒロシ

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池上ヒロシ